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記者の眼

“最後の聖域”にソニーがメスを入れる

杉山泰一 2005/02/24 ITpro

 「会議室を1時間使うと2000円かかる。だから,打ち合わせは要点をしぼって部内で短時間で済ませよう」――。人事・経理・総務の3大間接業務を効率化する企業の取材を進めたところ,この手の話を何度か聞いた。社内の様々な設備や従業員サービスに利用料金を細かく設定するという動きだ。社員に無駄な使用を控えさせることで,経費を減らす狙いがある。

コスト・センターにメスを入れる

 一般に,間接部門は「コスト・センター」と位置付けられる。販売や営業,生産などの事業部門とは違って,企業に直接的な利益をもたらさないからだ。コスト・センターでは,経費精算処理や給与計算処理などの事務経費が発生する。しかし,こうした間接業務のコスト構造は把握しづらい。製品を生産・販売するのとは勝手が違う。

 90年代前半のバブル経済の崩壊以降も,間接部門のコスト削減に手つかずで来た企業は少なくない。人員削減をはじめ徹底的に合理化してきた事業部門とは対照的だ。

 無駄なコストを削って経営基盤を強化するという点で,間接部門は“最後の聖域”だった。しかし最近は,事業部門のリストラにめどをつけた企業を中心に,聖域にメスを入れる姿が目立ってきた。

ソニー・グループが人事業務を構造改革

 ソニーが現在,エレクトロニクス事業を手がけるグループ20社以上といっしょになって,人事業務を構造改革中だ。グループ各社でばらばらだった人事情報システムを1本化しつつある。2005年度中におよそ5万人分の給与計算や勤怠管理などを,1つのシステム「キャストネット」で処理できるようにする。

 システムを共用することで,グループ全体で発生するシステムの開発・運用コストを大幅に低減できる。システムを使った業務処理をどこか1社に集約すれば,間接業務担当者の人数を減らすことも可能だ。

 ソニーが大胆な構造改革を進める背景には,グループ中期経営方針「トランスフォーメーション60」がある。2006年度の連結決算で利益率を10%にすべく,現在様々な構造改革と成長戦略に着手している。

 キャストネット構築の狙いはコスト削減だけではない。グループ内で人材情報も共有し,社員の有効活用を促す。ソニーの中田研一郎・人事センター・リソースマネジメント部兼東アジア人事戦略部統括部長は,「社員一人ひとりの個性が輝く『ソニースピリット』を大切に継承できるシステムにしたい」とこぶしを握る。

米国発のシェアード・サービスが本格化

 ソニー・グループでキャストネットを使う企業はすべて,ソニー・ヒューマンキャピタルに給与処理を代行させている。このように,企業グループ内で複数の企業の間接業務処理を1社に集約する手法を「シェアード・サービス」と呼ぶ。本社の1部門に事業所や営業所の間接業務を集約する形態も,シェアード・サービスの一つだ。

 シェアード・サービスを実施すれば,業務を効率化したり,グループ内で必要な間接業務担当者の数を減らしたりできる。その結果,間接業務のプロを育てたり,余った人材で新規事業を補強するなど,人材の有効活用にも役立つ。グループ内で新会社の設立や合併をスムースにできる効果もある。

 シェアード・サービスは米国発祥の手法だ。日本の上場企業の多くがシェアード・サービスに注目し始めたのは1999年~2000年。当時に比べればシェアード・サービスという言葉の新鮮味は薄れたが,取り組む企業は年々増えている。

 野村総合研究所(NRI)が2004年3月に実施した調査では,東京証券取引所第1部上場企業の48%がシェアード・サービスに着手。「現在ちょうど50%を超えたところだろう」(NRIサービス事業コンサルティング一部の増田有孝部長)

日本企業ならではの解決策が必要

 冒頭の会議室の例のように,シェアード・サービスに取り組む企業では様々な社内向けサービスに値段を付けることがある。間接業務を集約した部門・会社が,間接業務をサービスとして各部門・各社に提供する際,利用料金を定めるからだ。

 ただし,実際にはシェアード・サービスを定着させて,継続的に大きな成果を得るのは容易ではない。例えば,間接業務を集約する子会社に出向・転籍した従業員のモチベーションが下がりやすい。

 間接業務のどの項目とどの業務プロセスをシェアード・サービスとして集約化するかを決めるのも,簡単ではない。本社やグループ各社に人事や経理の企画機能を残して,日常業務だけを集約するのが一般的だが,その線引きは企業によって異なる。

 また,間接業務を集約できても,間接業務担当者は簡単に減らせないのが普通だ。このため,コスト削減効果を出すのに時間がかかる。

 シェアード・サービスという手法は,間接業務が一つひとつ細かくマニュアル化され,担当者の転職や解雇が日常茶飯事である米国企業が編み出したもの。日本企業になじみにくい面があるのも確かだ。シェアード・サービスで成果を上げるためには,日本企業ならではの解決策を考えることがポイント,と言えるだろう。

 2月24日発売の日経情報ストラテジー2005年4月号の特集「待ったなし! 間接部門改革」では,シェアード・サービスやアウトソーシングなどの手法を用いて間接業務改革を成功させるノウハウを紹介。コンサルタントや識者のコメントに加えて,ソニーやローソン,コニカミノルタ,帝人,日立製作所,コマツ,住友信託銀行,松下電器産業,花王,オムロンなど多数の事例から,各改革手法の工夫点や注意点を学ぶ。

(杉山 泰一=日経情報ストラテジー)

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