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 1月31日に筆者が執筆した「IP電話導入を悔やんでいるのは誰?」では,IP電話の満足度調査を実施した。「IP電話を導入済みの企業・団体(およびその顧客に製品・サービスを提供する企業)」と対象を絞ったにもかかわらず,計205件の回答をいただいた。答えてくれたのはエンドユーザーやシステム部門だけでなく,通信事業者やインテグレータなど。自由記入欄への記入も含め,非常に興味深い調査結果がでた。

 エンドユーザーからの回答数は約半数にも上った。IP電話導入に関する本音をエンドユーザーから聞けるまたとない機会となったので,筆者としては非常に嬉しかった。というのは,エンドユーザーの声を聞けるチャンスは,日経コミュニケーション本誌の取材でもあまりないからだ。確かに本誌ではユーザー企業への取材は日々行っている。だが取材に対応してくれるのは情報システムやネットワークを担当する方が大半なのである。

 今回は回答者全体の結果報告に加え,IP電話導入を推進する側のシステム部門と,それを使う側のエンドユーザー――という,立場が異なる属性ごとの結果も分けて報告する。両者の回答は傾向が微妙に異なる。それぞれの立場としての“本音”が浮かび上がっていた。

エンドユーザーに絞ると「不満」の度合いが高くなる

図1●IP電話に対する満足度
単一回答。(a)回答者全体(205人),(b)エンドユーザー(91人),(c)情報システム部門(40人),に分けて示した
 アンケートの主な設問は「IP電話へのあなたの満足度をお聞かせください」「IP電話に不満があるとすればどこですか」の二つ。いずれも回答は選択式である。ただ,IP電話への不満についての質問では,「その他」を選ぶ場合,具体的に記入できるようにした。

 IP電話の満足度については,「満足」と「やや満足」との回答が合わせて40.0%(図1(a))。「不満」と「やや不満」の回答が,計29.8%だった。IP電話導入ユーザーが概ね満足している結果が出た。不満+やや不満の“不満組”も3割と少なくないが,満足+まあ満足の“満足組”の比率の方が約10%上回っている。

 しかし,エンドユーザーとシステム部門の回答を属性別に抜き出すと,明らかに異なる傾向が見えてくる。

 まずエンドユーザーだけを抽出してみると,「満足」が8.8%で「まあ満足」が27.5%。満足組は計36.3%となる(図1(b))。一方,「不満」は13.2%,「やや不満」が19.8%で計33.0%,満足組の比率が下がり,不満組が増え,その差が縮まる。エンドユーザーだけを抜き出すと,なんらかの不満を持っている割合が,上がっているのである。

 では,システム部門だけを抽出してみよう。「満足」が17.5%で,「まあ満足」が22.5%(図1(c))。満足組の合計は40.0%。全回答者の結果と同じ比率だが,細かく見ると「満足」と言い切っている割合が高いことが分かる。「不満」は12.5%で,「やや不満」は15.0%。不満組は27.5%だ。全体の回答より不満組の割合は低い。エンドユーザーに絞った数字と比べると,明らかにIP電話への満足度が高い様子が見て取れる。

 どうやら,使う側のエンドユーザーと,IP電話導入を推進したシステム部門では,IP電話導入後の満足度に差があるようだ。もちろん,同じ企業のエンドユーザーとシステム部門にアンケートをとったわけではないので,その点は割り引いて考える必要がある。

IP電話の不満点は音質と安定性

 次は,IP電話の不満点に関する設問の回答結果。回答者全体では,「音が悪い」という答えが最も多かった(図2[拡大表示])。2番目に多い「通話中に切れてしまう」と,4番目の「使えなくなることが多い」という回答は,詰まるところIP電話の安定性に問題があるということ。IP電話が企業に導入され始めたころから,その音質と安定性は懸念として挙げるユーザーが多かった。これらの回答からは,音質と安定性にはまだ課題が残っている事実が改めて浮き彫りになった。

 この設問には,「満足」「まあ満足」と答えている人も回答している。「不満」とまでは言わないが,音質と安定性には課題があると感じるユーザーも多いということだろう。

 ではこの設問でも,エンドユーザーとシステム部門ごとの回答をそれぞれ見てみよう。やはり,その傾向がガラリと変わるのだ。