私は2年前に「Yukonまで何マイル?――2003年のMicrosoft製品を占う」という「記者の眼」を書いた。当時「Windows Server 2003」というサーバーOSのメジャー・バージョンアップに始まり,開発コード名「Yukon」という次期SQL Serverで終わる予定だった2003年の新製品ラッシュをお伝えするものだった。

 タイトルは「バビロンまで何マイル?」というマザーグースの歌をもじったものだ。古代バビロニア帝国の首都バビロンまで,無理をして歩いていけば行けそうな,でもやっぱり不可能なんじゃないかと思わせる歌詞だ。「結局Yukonまでは出ないのではないか」と暗に揶揄(やゆ)してのネーミングであった。あれから2年,まだYukonは出ていない。今回の記者の眼も,2005年にMicrosoftがリリースする予定の新製品を占おう。

この2年のMicrosoftの来し方

 まずこの2年間に,Microsoftがどのような軌跡を描いてきたのか振り返ってみよう。一言でいうと,2003年はWindows Server 2003をはじめとする企業向け製品の当たり年,2004年は大型製品が登場するまでの谷間の年であった。

 2004年は谷間であるとともに「Windows XP Service Pack 2(SP2)」の年だったともいえる。XP SP2は,Windowsファイアウオールの強化,バッファ・オーバーフロー攻撃を防ぐ機能の搭載,RPC(リモート・プロシージャ・コール)/DCOM(分散コンポーネント・オブジェクト・モデル)の利用制限など――セキュリティを強化した特別なサービス・パックだった。このサービス・パックはソフトやハードの互換性に大きな影響を与え,世間の注目を集めるに至った。

 Windows XP SP2は,元々2003年末にリリースされるはずが,2004年8月へ大幅に延期された。たかだかサービス・パックごときの遅れが,のちの同社の製品計画を大きく狂わせることになる。

 そのあおりを受けたのが,「Windows Server 2003 Service Pack 1」だ。当初予定の2004年末からずれて,2005年春にリリースされることになっている。XP SP2相当のセキュリティ機能を導入するため,カーネルを一から作り直すほどではないにしても,中身の全面的なチェックが必要になった。他にも,サーバー製品のロードマップや次期Windows「Longhorn」(開発コード名)の仕様なども,大きく変更を迫られる事態に発展していった。

 このような状況を日経Windowsプロと翻訳提携しているWindows IT Pro誌のメイン・ライターPaul Thurrot氏は,「Microsoftは2004年にWindows XP SP2を出すのに夢中になっていて,その影響で今や出荷を延期されたプロジェクトが目白押しになっている」と語っている(記事へ)。

2003 SP1がXP SP2並みの反響を呼ぶ

 2005年は早くも1月が終わってしまったが,あと11カ月でどのような製品がでるのだろう。今年のMicrosoftは(1)「Windows Server 2003 SP1」,(2)「x64 Edition」,(3)「SQL Server 2005」(Yukon)と「Visual Studio 2005」(Whidbey)――という3つのポイントを軸に動くと,私は考えている。

 第1のポイントに関しては,XP SP2と同じフィーバーが2003 SP1についても,サーバー業界で起こるだろう。2003 SP1は,XP SP2並みのセキュリティ機能の搭載に加えて,「セキュリティ構成ウィザード」やネットワーク検疫機能など――サーバーならではのセキュリティ機能が追加されている。日経Windowsプロ編集部では,Webサイトで同サービス・パックの専用ページを設けて,解説記事やリンク集などの情報提供をしている。

 2003 SP1をめぐるユーザーやベンダーの最大の関心は,互換性の問題に尽きる。サーバーの仕様変更はシステム全体への影響が大きいので,Windows XPファイアウオール機能は既定では無効になっている。しかし,バッファ・オーバーフローを防ぐ機能は既定で全プログラムについて有効だ。ソフトウエア・ベンダーやハードウエア・ベンダーは,ユーザーの信頼をつなぎとめるためにも,互換性の証認を得る必要があるだろう。

 2003 SP1以外では,「Windows Small Business Server 2003 SP1」もリリースされる予定だ。それからWindows 2000は,SP5が出ずに代わりに「Update Rollup」をリリースするという(記事へ)。

 また2005年後半には,「Windows Server 2003 R2」「SBS R2」「Windows Storage Server R2」「Windows Server 2003 Compute Cluster Edition」が予定されている。本来,R2(Release 2)は,Windows Server次期版「Longhorn Server」との間に位置するマイナー・バージョンアップ版として考えられていた。しかし,「Bear Paw」と「Network Access Protection(NAP)」(いずれも開発コード名)という機能が削られて,限りなくWindows Server 2003 SP1に近付いている。Bear Pawは新しいターミナル・サービス機能,NAPは標準化されたネットワーク検疫機能のこと。搭載するのはLonghorn Serverへ繰り越しになった(記事へ)。