【読者の意見その2】
要するに,「オープンシステム」「メインフレーム」の定義があいまいなまま新聞記事が出されている,ということではないでしょうか? “オープンシステムに対立するものとしてメインフレームがある”とした方が理解はしやすい(正直言って,今回書かれたものを読むまで,私はそのように理解していました)のでしょうが,これでは事の本質を見失ってしまうという格好の例だと思いました。
(40代,情報システム部門)

 その通りである。しかも定義が曖昧なのは新聞に限ったことではない。そこでオープンシステムの定義を調べることにした。検索エンジンを使って上位にでてきたサイトをいくつかのぞいてみた。「IT用語辞典e-Words」には次のように出ていた。

「様々なメーカーのソフトウェアやハードウェアを組み合わせて構築されたコンピュータシステム。これとは逆に,特定のメーカーの製品のみで構成されるシステムをプロプライエタリシステムという。各社がOSやアプリケーションソフトの外部仕様を公開することで実現されている。価格や性能を比べてもっとも良い製品を組み合わせることができるというメリットがある反面,不具合が生じたときに原因を特定するのが難しく,どのメーカーも自社製品に原因があると認めたがらないなどのデメリットもある」

 北海道大学大学院情報科学研究科複合情報学専攻実ソフトウェア開発工学講座・オープンシステム工学講座が次のような定義を掲載していた。

「アプリケーション・ユーザインタフェース・ネットワーク・データ形式等の規格が外部に公開され,共通化されているシステム」

 これらをユーザーにとって分かりやすくまとめると,要するに「特定ベンダーにしばられないシステム」ということになる。この点に関し,別の読者から11月9日に次のような電子メールをいただいた。システム開発会社を経て現在はユーザー企業の情報システム担当をしている方である。


【読者の意見その3】
オープンシステムの定義は「プラットフォームに依存しないシステム」だと思っていました。Webの記事を読んで,時々とんちんかんな定義でオープンシステムを語られるシステム開発会社の方がいらっしゃる理由がよくわかりました。本当の意味でのオープンシステムはまだ世の中にないように思っています。「オープンシステム」という言葉が世の中からなくならないのは「部品化」と同じく夢見続ける人たちがいるからかもしれません。

 念のため,この読者に「プラットホームとは何を指しますか。ハードウエア? OS? DBMS? それからハードウエアに依存しなくてもWindowsに依存してしまった場合,オープンシステムと言えるのでしょうか」と電子メールを送った。彼女の返信は明快であった。


【読者の返信】
プラットフォームに依存しないという意味は,ハードウエアにもOSにもDBMSにも依存しない,です。これはJavaが目指したところです。厳密にはブラウザに振り回されているので,まだオープンシステムは存在しないように思っています。それからWindowsに依存している時点で既にオープンではありません。Windowsは抱え込みOSですから。

 あまりに明快なので「ただしJavaには依存してしまうわけですね」と嫌味な電子メールを送った。そしていただいた返事は下記の通りである。


【読者の返信】
ハードウエアにもOSにもDBMSにも依存しない,と謳ったプログラム言語はJavaだけでした(今もそうかは知りません)。他のプログラム言語と互換のあるプログラム言語というものを知りません。そういう意味で,プログラム言語は核となる技術となってしまいます。すべてにおいて「非依存」というものはまだ世の中に存在しないと思っています。

 先ごろの日経新聞の記事を例にとると,スルガ銀行がLinuxを搭載したIBM製メインフレームを選択して,Javaで記述されたアプリケーション・パッケージを利用してシステムを作ったとする。これをプロプライエタリ・システムとは言いがたいように思う。一方,IYバンクは,Windowsを搭載したインテル・アーキテクチャのサーバーでシステムを構築する(関連記事)。ただし日本ユニシスが開発した金融用ミドルウエアを使うのでアプリケーションはこのミドルウエアに依存する。すると,このシステムをオープンとは言いにくくなる。

 またややここしいことに,製品アーキテクチャがオープンかどうかという観点がある。時として製品の話とシステムの話が混在して語られるので分かりにくくなる。例えばパソコンはオープン・アーキテクチャの製品といわれる。部品間のインタフェースが公開されており,部品を買い集めてくればだれでもパソコンを作れるからだ。これに対し,メインフレームはたとえLinuxを搭載していたとしても,部品を買い集めて作ることは簡単ではないからオープン・アーキテクチャとはいいにくい。

 Linuxをはじめとするオープンソースの製品は,インタフェース情報どころかソースコードまで開示されている。これに対しWindows はソースは非公開で,インタフェース情報もすべてが公開されているわけではない。このためLinuxはオープンだが,マイクロソフトはそうではない,と言われたりする。

 製品アーキテクチャの世界でいうオープンについては,標準に準拠しているかどうかという観点もある。インターネットの世界では各種の標準化団体が仕様を決めている。これに準拠していることをオープンと言ったりする。ただしかつてのOSI[用語解説] のように標準を決めたものの,その標準が結局普及しないことがある。これに対しWindows のインタフェース情報はマイクロソフトが勝手に決めているが,事実上の標準になっていると見ることもできる。