11月17日に掲載した記者の眼「さらば巨大ブラウザ――Netscapeの失敗が生んだFirefoxの挑戦」は,おかげさまで多くの反響をいただいた。記事に併設した,Firefoxの評価についてのアンケートにも,1週間で2261人のIT Pro会員の方からご回答をお寄せいただいた。非常に真摯な長文のコメントをお寄せ下さった方も多く,読者の方々の関心の高さをひしひしと感じた。この場を借りて御礼申し上げたい。

 はじめにお断りしておきたいが,以下の回答は,IT Pro読者の中でもFirefoxの記事を読んだ,Firefoxに関心のある読者の声をまとめたものだ。そのため,必ずしもIT Pro全読者の傾向を示すものではないことをご承知おきいただきたい。また,多数のコメントをいただいたため,すべてをご紹介できなかったことをおわびしたい。

期待される理由は「セキュリティ」と「独占の弊害」

図1●あなたは既にFirefoxを使ってみましたか?または,使ってみたいとお考えですか?(複数選択)
 IT Pro読者はFirefoxを手にとってみただろうか。61.3%が自宅で,56.3%が勤務先で使用してみたと回答している(図1[拡大表示])。自宅,会社のどちらかで使用してみた回答者は77.8%に上った。「まだ使っていないが,使ってみたい」という回答も19.7%あった。

 Firefoxが期待される理由で目立ったのは,やはりセキュリティだ。

 IEのセキュリティに不安があったので,あまり使いたくなかった。Firefox1.0がリリースされてすぐ乗り換えた。

 IEは恐くて使えない。

 IEで神経質になるのはもう疲れた。

 IEは脆弱性云々よりも,クラッシュした際システムを巻き込み,ダウンする可能性が高いことが難点。

 また新たな歴史が始まったと思っている。IEの替わりなどではなく,ブラウザの真髄になってくれると期待している。OSとの危険な抱き合わせはもういらない。『ネット上で頻繁に利用するサイトが利用できるかどうか』を選択するようでは,またWindowsとIEの簡便性に依存するだけで,セキュリティ・リスクは変わっていかないだろう。不自由を忍んで質を高めること,および多様な選択とがWWWの危険性の緩和につながると考える。

 IEの独占状態の弊害を指摘する意見も多かった。

 IE独占の状態は望ましくない。現にIEは機能として進化が止まっているように思われる。有力な対抗馬として,MozillaFirefoxに期待している。(実際,自宅ではメインブラウザとしてずっと使用し続けています)

 ユーザーがブラウザの選択権を手に入れることができるインフラになってほしい。

 Windowsに対するLinux,MS Officeに対するOpenOffice.orgのように,MS社製でない選択肢があるというのは,いろいろな面で重要だと思います。その意味でFirefoxにも大いに注目しています。

図2●「使う予定はない」方はその理由をお選びください(複数選択)
 少数だが「まだ使っておらず,使う予定もない」という回答もあった(図2[拡大表示])。ほとんどが挙げる理由が「現状のブラウザで特に不満はない」というものだ。「ダウンロード,インストールが面倒だから」,「会社で標準のブラウザが決まっている,またはダウンロードが禁止されている」という理由もあった。

Firefoxは実際に速いのか

図3●Firefoxを使った評価はいかがですか?(単一選択)
図4●Firefoxを評価する際のポイントは何ですか?(複数選択)
 使用してみた結果はどうだったか図3[拡大表示]。「満足」と答えた読者が36.9%,「まあ満足」が45.4%。「どちらともいえない」が11.7%。「やや不満」は4.5%,「不満」は1.4%である。実際に使ってみた読者の評価は,きわめて高い評価といえよう。

 ちなみに評価のポイントは図4[拡大表示]のとおりである。「軽量で高速かどうか」を89.0%の読者が重視している。「セキュリティが向上するかどうか」を重視するという回答は63.0%。「使いやすさ」を重視する読者も57.4%いる。「ネット上で頻繁に利用するサイトが利用できるかどうか」という互換性も52.2%が重視した。「社内の業務システムが利用できるかどうか」も,29.6%が重要としている。

 回答者のコメントも,動作の軽快さを高く評価するものが多い。

 以前からネスケを使い続けて来たが,4.7以降は見るも無惨な状態だった。Firefoxは軽くて軽快だった昔のネスケを思い出させてくれるし,プラグインなどもインストールが簡単なのが嬉しい。

 軽快で使い易い。また,タブをいっぱい開いても安定している。最高のWebブラウザです。

 「ブラウザといえばNetscape」の時代(4,000円くらい出して買った記憶もある)からネスケを使い続けていたが,バージョン6の“重さ”がいやでOperaに乗り換えた。しかし,Mozilla,Firebird,Firefoxと乗り換えた。Firefox自体も以前に比べて起動時間が早くなった印象もあり,メーラーなどからURL展開しても,新しいブラウザを起動しないようにできるなど,正式版は使いやすい。毎日かなりの回数,起動と終了を繰り返すアプリなので,動作はもちろんのこと起動の早さも選択のポイントである。

 Crusoeの比較的遅いノートPCで,IE では動作が非常に重くイライラするほどだった。 Firefoxはそれ自体が軽くきびきび動く上に,タブやAdblockプラグイン(広告をブロックするプラグイン)の活用でさらに軽く動かすことができるので非常にありがたい。

 単機能ブラウザという方向性は正解だった。また,以前Operaも試したが,Firefoxの方が格段に使いやすい印象を受ける。

 起動/ページ表示/ダウンロードのいずれもIEよりも高速で気に入った。

 IE,Netscape Navigator,Operaなどいろんなブラウザを利用してきたが,重くなってきていた。その点,Firefoxは必要な機能だけで軽いため,非常に使い勝手が良い。

 動きが軽くて気持ちよい。唯一の不満といえば,yahooメールの添付ファイル名が文字化けすることくらいですが,すぐに解決されるだろうと楽観視しています。

 非常に軽快で満足しています。

 もうIEはWindows Updateにしか使いません。極めて便利で軽快です。

 Firefoxのプログラム自体のサイズが小さく,ダウンロードしやすいことを評価する声もあった。

 Firefox本体でもIEの更新プログラムよりも軽く、インストールや更新がしやすいことから、従来Netscapeをダウンロードするのに膨大な時間を費やすことを選べざるをえなかった低速回線利用者にも利用しやすいものだと思う。個人的にはFirefoxに勝るブラウザは今のところ存在しない。

 ただし,動作速度は環境に依存する部分や,主観によるところもある。「起動には時間がかかる」「低性能のマシンでは遅くなる」「メモリーを食う」という指摘もあった。

 Firefoxを使ってみたが,私の環境(デュロン800Mhz メモリー280MB ISDN64K)では非常に重い,というのが正直な感想です。まずサイズは小さいのに立ち上がりが非常に重いのが不満,NNにも同じことを感じていましたが,それ以上に重いのではとの実感があります。またサイト呼び出しの時にも妙な重さを感じます。私の環境において速度実感は,Opera7>>Opera6>IE6>Firefox>NNぐらいの感覚です。速いと言う記事を多数見ていただけに,かなり残念な結果です。Firefoxもまたハードの力に依存するソフトなのでしょうか?

 イントラネット上の大量のコンボボックスのあるページなどを開こうとすると,ものすごく時間がかかる。(Operaを1とするとIEが3~10倍,Firefoxは30~300倍)。安定性ではIEが一番高いがハングするとOSにもダメージがある。Operaは良くハングする。Firefoxはハングしないが,ものすごく重くなる。

 動作は高速だが,タブで複数開きするぎると,メモリー消費が多い。

 OSと密接に結びついているIEに比べ未だ起動が遅い気がする。(Ver1.0)

 IEとくらべて起動が遅いように思える。

 IEのコンポーネントはWindows上でのファイル表示(エクスプローラ)などでも使用されており,OS起動時にあらかじめ読み込まれているため,IEのほうが起動が速いのは致し方ないところだろう。ただ,いったん起動したあとの動作は,アンケートの数値などを見る限り,大多数のユーザーの環境ではIEに勝るとも劣らないと考えてよさそうだ。

不満はIEとの互換性に集中

 もちろん,すべてが満足というわけにはいかない。不満や要望も寄せられている。最も多いのは,IEとの互換性の問題だ。この点が解決できれば乗り換えられるのに,という声が多数あった。