日経Windowsプロと提携する米国のWindows IT Pro MagazineのWebサイトは,米MicrosoftがWindows 2000 Service Pack 5(SP5)の提供を取りやめ,累積されたセキュリティ修正である「アップデート・ロールパック」をリリースすると報じた(関連記事)。Microsoftが発表したものではなく,同社内部の情報という。

【追記】 米MicrosoftはWindows 2000 ServerのWebサイトで,Windows 2000のService Pack 5の代わりに「Update Rollup」と呼ぶ修正パッチの集合を2005年中頃にリリースすることを明らかにしている(当該ページへ)。

 このニュースには大きな衝撃を受けた。Microsoftにはアップデート・ロールパックではなく,ぜひWindows 2000 SP5をリリースしてもらいたい。Windows 2000はまだ多くの企業で使われているOSである。そして,サービス・パックがあるのとないのとでは,システム管理の手間がかなり変わってくるからだ。

リカバリの手間に差が出る

 まずサービス・パックがあるのとないのとでは,リカバリの手間が違ってくる。現在,きちんとパッチを当てているWindows 2000をリカバリするためには,(1)CD-ROMからOSを再インストールする,(2)Windows 2000 Service Pack 4を適用する,(3)Windows 2000 SP4のリリース後に提供された修正パッチを適用する――という手間がかかる。

 Windows 2000 SP4が日本で公開されたのは,ネットワーク感染型ウイルスのBlasterが登場する前の2003年7月である。(3)の作業を完全に実施するには,2004年11月時点で34個の修正パッチを適用する必要がある(関連情報)。

 もしWindows 2000 SP5が出れば,リカバリのときは(1)と(2)で既知のネットワーク感染型ウイルスに対応できるはずだ。しかしアップデート・ロールパックである場合,(1)と(2)の作業後にアップデート・ロールパックを適用する必要があり,SP5がある場合に比べて一手間多い。

 またサービス・パックなら,「サービス・パック適用済みCD」を作成して,(1)と(2)の作業を同時にやってしまうことが可能だ。しかしアップデート・ロールパックの場合,この技は不可能である可能性が出てくる(従来のセキュリティ・ロールアップ・パッケージは不可能)。

Windowsコンポーネントを追加する際の危険性が違う

 もっと重要なのは,Windowsコンポーネントを追加する際の危険性である。これも最新のサービス・パックがあるのとないのとでは変化する。[コントロールパネル]の[Windowsコンポーネントの追加と削除]から「Internet Information Services」や「WINS」といったWindowsコンポーネントをインストールする際,ある条件下では「セキュリティ・ホールのあるプログラム」がインストールされてしまうのだ。

 ただし,SP5のような新しいサービス・パックがあれば,この危険性は軽減される。Windows 2000以降では,Windowsコンポーネントが追加される際,システム・ファイルのバージョンが「サービス・パックが適用された状態」で維持されるからだ。

 もう少し詳しく説明しよう。[Windowsコンポーネントの追加と削除]からWindowsコンポーネントを追加でインストールしようとすると,OSのCD-ROMが要求されるだろう。ただしWindows 2000は,Windowsコンポーネントの全ファイルをCD-ROMからコピーするわけではない。追加するファイルの中に,サービス・パックによる更新対象になっているものがある場合,Windows 2000はそのファイルをCD-ROMからではなく「\WINNT\ServicePackFiles\」というフォルダからコピーする。

 Windows NTまで,Windowsコンポーネントは「OSのCD-ROMがリリースされた時点の状態」でインストールされていた。これがWindows 2000以降は「サービス・パックがリリースされた時点の状態」で追加インストールされるようになっているのだ。

 しかし,通常の修正パッチや修正パッチの集合体であるロールアップ・パッケージは,この「バージョン維持」の対象ではない。Windows 2000 SP5がリリースされた場合,Windowsコンポーネントを追加するとSP5の状態でインストールされることが期待されるが,SP4にロールアップ・パッケージを適用したシステムの場合は,SP4の状態で追加インストールされてしまうだろう。

 例えば現在,最新のパッチまでを適用した状態のWindows 2000に,Windowsコンポーネントの1つである「WINS」を追加すると,WINSはセキュリティ・ホールが残った状態でインストールされてしまう。SP4のリリース後に,WINSのセキュリティ上のぜい弱性が発見されて,セキュリティ修正パッチがリリースされているためだ。SP4以降のパッチをすべて適用しているシステムでも,パッチを再適用しなければならない。こういう事態をなくすためにも,Windows 2000 SP5が必要である。

 以上は,日経Windowsプロ本誌や日経Windowsプロが主催するセミナーにて,日本ヒューレット・パッカードの瀧澤俊臣ミッション・クリティカルサポートセンター本部コンサルタントが,再三警鐘を鳴らしている内容である。弊誌の力不足もあり,多くのシステム管理者にまだ知られていない。改めて注意を促したい。

(中田 敦=日経Windowsプロ)