ネットワーク・コンピュータ一覧には表示されるのに見つからないとエラーが出る,稼働中のはずなのに一覧に表示されない,きちんとユーザー名とパスワードを入れたのにアクセスできない――。会社でWindowsネットワークを使っているとよくあること。しばらく時間を空けて同じ操作をしてみると,解決していたりする。

 こうしたトラブルが起こったときに少し腕に覚えがある人からは,「ワークグループの設定がサーバーと違うから,サーバーのフォルダにアクセスできないんだよ」とか,「ドメインに所属したパソコンからしか,ドメイン配下のファイル・サーバーにはつながらないよ」というような,もっともらしい解答が返ってきたりする。でも,これらの解答はどれも間違い。

 IT Pro読者にはネットワークのプロフェッショナルも多いので,「そんな間違った知識ではダメじゃないか」と言われるかもしれないが,現場ではよく言われている。実際,筆者の周りで聞いてみても,これらの間違いをきちんと正せる記者は少ない。

 日経NETWORKで毎週更新しているネットワーク・クイズでも,Windowsネット関連の問題を出すと正答率はほかよりも低めになったりする(バックナンバーは日経NETWORKのトップ・ページからご覧いただけます)。10月から開講した日経NETWORKスクール Windowsネット習得&操作コマンド実習講座でもかなり長い時間を割いて講義しているが,受講者に実感してもらうのに手こずっている。

3機能のどこが原因かを調べる

 なぜそんな誤解が生まれるのかを考えてみると,Windowsネットワークの設定項目がごちゃ混ぜになっていてどこで何が変わるのかがわかりにくいことと,そもそものWindowsネットワーク機能をきちんと押さえていないことが挙げられる。

 実際,Windowsネットワークの根幹といえる機能は,

  • ネットワーク・コンピュータ一覧を表示するブラウジング機能
  • コンピュータ名(NetBIOS名)からIPアドレスを調べる名前解決機能
  • ユーザーを認証しアクセス権を決めるユーザー管理/アクセス制御機能

の三つといえる。

 実は,これらの機能は完全に独立して動いている。このため,ネットワーク・コンピュータ一覧に通信相手のコンピュータが表示されなくても,相手のNetBIOS名(あるいはIPアドレス)がわかっていればアクセスできてしまう。ブラウジングに失敗しても,名前解決がうまくできればつながるわけだ。

 つまり,Windowsネットワークの調子がおかしくなったら,まずはどの機能に不具合が起こっているかを特定することだ。そうすると,今まで不可解な現象として片づけてしまっていた事象も理論的に説明できることが多い。

 ちなみに,冒頭の例にあてはめると,「ネットワーク・コンピュータ一覧には表示されるのに見つからないとエラーが出る」というのは,名前解決に失敗している典型例。よくあるのは,コンピュータ一覧の情報が古すぎて,一覧に表示されているコンピュータがすでにシャットダウンしていたりするときに起こる。

 また「稼働中のはずなのに一覧に表示されない」は,ブラウジングの失敗例だ。一覧情報を管理しているマスターブラウザがダウンしたときなどに起こる。一覧情報の収集にはブロードキャストを使うのが一般的なのでルーターの向こう側にあるコンピュータの名前は表示されなかったりする。

 一方,「きちんとユーザー名とパスワードを入れたのにアクセスできない」は,ユーザー管理/アクセス制御機能の問題だ。ユーザーがどこ(サーバー上のユーザー管理情報なのか,ドメイン・コントローラが管理しているユーザー情報なのか)で認証されるのかを把握していないときに起こりやすい。

 最近では,Windowsネットワークのシステム管理者はActiveDirectoryなどのユーザー管理システム,一般ユーザーはパッチ適用やファイアウォール機能などに目が奪われがち。だが,そうした機能の基盤には必ず三つの機能が働いているのである。

(三輪 芳久=日経NETWORK)