写真2●電子認証サイトでの警告ダイヤログの例 |
さて,あなたのWebサイトに,同様の落とし穴は潜んでいないだろうか。
Webサイトは企業の玄関口。その運営には多くの利害関係者が絡み,再構築は一筋縄ではいかない。既に大規模なサイトを持っている企業は,「果たしてどこから手を付けたらいいのか」と途方に暮れているはずだ。
筆者は,いきなり大規模なサイト改善に乗り出す必要はないと考える。アクセシビリティの改善は,一人ひとりの社員が肩ひじ張らずに参加することで進む。客を迎える玄関に石ころが落ちていたら,さりげなく片づけておくもの。ユーザー部門の方は,気がついた点をWebサイト運営者にメールすることから始めてみたい。
大事なのは,Webサイトを訪問した人に,登録なり申請なり,本来の目的を達成してもらうことである。電話などで利用者をサポートすれば問題を回避できる場合も多く,いたずらに技術的な解決を求める必要はない。私たちが今から着手できることは多い。
筆者の失敗を告白します
偉そうなことばかり書くわけにもいかない。実は筆者も最近,Webアクセシビリティの件で痛い目に遭った。
10月20日,弊社主催のコンファレンス「WPC EXPO 2004」で,日経コンピュータは「Webアクセシビリティ導入の実際」と題したセミナーを開催する予定である。このために告知用のWebページを制作したのは良いが,何とタイトルや申し込みボタンの画像に,「ALT」タグが入っていなかったのである。公開からしばらくして,ある専門家の方から,「音声ブラウザで読み上げられない」と指摘されて冷や汗をかいた。テーマがテーマだけに,何とも間抜けな話だ。
このページはあるデザイン会社に外注して制作したが,発注側の弊社も制作者も「見た目」をチェックしたのみ。Webアクセシビリティのチェックが業務フローからすっかり抜け落ちていた。いかにチェックをする意識が身に付いていないか,痛感した出来事だった。該当のWebページは,指摘を受けた直後に応急処置を施し,再公開した。一記者の立場から,社内の各部門や外注先を巻き込んだWebサイト改善への道を模索し始めたところだ。
なお,駆け出しでつまづいたものの,20日のセミナーの内容自体には絶対の自信を持っている。JIS規格の策定で重要な役割を果たしたユーディットの濱田英雄氏や,日本IBMで研究,コンサルティングに従事してきた飯塚慎司氏など,この分野を知る人なら誰もが認めるアクセシビリティの伝道師たちが登壇するからだ。
先進ユーザーである富士通と宮城県庁の担当者を招いたパネル・ディスカッションでは,Webアクセシビリティを導入するにあたって担当者が遭遇する障害について議論する。例えば「Webサイト改善の予算をどこから引き出すか」「他部門やグループ企業にどうやって取り組みを浸透させるか」「Webサイト担当者の交代で元の木阿弥にならないためには」といった課題だ。
Webアクセシビリティに関心はあるものの,大きな組織の中で自分がどう動けばいいのか悩んでいる方は多いだろう。来場者の方には,講師にどんどん質問をぶつけてもらい,上司を説得する材料を持ち帰ってほしいと思っている。
(本間 純=日経コンピュータ)