日経ITプロフェッショナルが主宰する「iSRF(ITスキル研究フォーラム)」が2004年5月~7月に実施した「第3回ITスキル調査」の最終結果がまとまった(中間結果は6月23日の記者の眼で報告)。

 本調査では全国のITエンジニアを対象に,経済産業省が策定した「ITスキル標準(ITSS)」に基づくスキル診断をWebサイトで実施。職種・給与・年齢・学歴といった属性情報やスキルレベルを集計・分析した。エンジニア1人ひとりの“立ち位置”の把握やスキルアップの指針作り,あるいはIT企業の人材育成戦略に役立ててもらうことが狙いである。

 詳細は本誌10月号の特集を見ていただくとして,まずは調査結果から浮かび上がった日本のITエンジニアの“人材像”から紹介しよう。本調査の有効回答は2万68件と,ITエンジニアを対象とする調査としては過去に例がない規模である。国内エンジニアの総数が約56万人(経済産業省「2002年の特定サービス産業実態調査」)であることを考えると,IT業界全体の実態をかなり忠実に表していると見てよいだろう。

意外に大きい職種間の年収格差

 本調査では,ITSSで定義された11職種のうち自分に当てはまると思うものを回答してもらった(図1)。回答が最も多かった職種は,主に業務システムの設計・開発を行う「アプリケーションスペシャリスト」(25.4%)。2番目の「プロジェクトマネジメント(以下,プロマネ)」(24.3%)と合わせると,この2職種だけでITエンジニア全体の約半数を占めた。

図1
図1●回答者の職種構成
アプリケーションスペシャリストとプロジェクトマネジメントが,ともに25%前後と多数を占めた

 続いて多かったのは「ITスペシャリスト」(11.2%),「ソフトウエアデベロップメント」(10.2%)の2職種。すなわち,システム/製品開発プロジェクトのマネジメントや実務を手掛ける4職種の人材が,全体の約7割もいることになる。これに対して,いわゆる“上流工程”の職種である「コンサルタント」,「セールス」,「マーケティング」は,いずれも5%を切った。

 年収はどうだろうか。全回答者の平均年収は534.7万円。約半数が500万円未満で,800万円以上を得ているITエンジニアは約1割にすぎなかった(図2)。職種別に見て特に高かったのは,コンサルタント(703万円)とマーケティング(696万円)である。800万円以上もらっている人の割合はいずれも30%強だった。後述するように,この2職種は平均年齢が高い方だが,同じ年齢層同士で比較しても他職種に比べて年収が高かった。これら2職種に次いで高かったのはプロマネ(619万円)である。結果的に,プロジェクトの受注や成否に大きくかかわる職種が上位を占めた形だ。

図2
図2●回答者の年収構成
約半数が500万円未満。800万円以上の人は1割にとどまった

 一方,プロジェクトの“実働部隊”の年収は全体平均を下回った。回答者が最も多かったアプリケーションスペシャリストの平均年収は473万円。ITスペシャリストは525万円,ソフトウェアデベロップメントは449万円だった。また,システムやネットワークの運用管理やヘルプデスクを担う「オペレーション」は,過半数が400万円未満という結果。平均でも439万円と11職種中最も低く,コンサルタントやマーケティングなどと大差が付いた。少なくとも年収の面で,オペレーションという職種は“不遇”であると言わざるを得ない。

 なお図には示していないが,回答者の年齢構成は「26~30歳」の若手エンジニアが最も多く,全体の約4分の1に当たる26.8%を占めた。次いで「31~35歳」(23.1%),「36~40歳」(19.1%)が多かった。技術革新のスピードが速い業界だけに,若手の年齢層が厚いのは当然かもしれない。ただし,職種によって平均年齢はかなり違う。マーケティング,エデュケーション,コンサルタント,セールス,プロマネは,いずれも30代後半だった。

基礎教育の立ち遅れが鮮明に

 今回の調査では,就業前に情報工学教育を受けた経験の有無,および情報工学を学んだ教育機関についても尋ねた。ITのプロとして仕事をする以上,学生時代に情報工学を体系的に学んで身に付けておくことは非常に重要だと考えたからだ。