Skypeは自分の話した声がネットを往復し,エコーを起こすのを抑制する機能が組込まれている。パソコンに内蔵されているスピーカとマイクでSkypeを使うと,スピーカから流れ出た相手の声が再びマイクに流れ込んでしまう。これを抑制しようとエコー・キャンセラが働くことになるが,これが原因でプツというノイズを反復して起こすことがある。

 こんなときにヘッドセットを使うと,スピーカーとマイクが音響的に絶縁されるため音声がスムーズに流れるようになる。

実際に使ってみたら,本当に快適

 何よりもSkypeが優れているのは,利用環境が広く開かれていることだ。インターネットにつながる環境さえあれば,ほとんどの場合利用可能だ。ADSL以上の常時接続環境ならもちろん申し分ない。Skype Technologiesは,33.6kbps以上のダイアルアップ回線なら利用可能だとしている。

 動作環境が幅広いのも素晴らしい。現在のところ,Skypeが使えるのは,Windows 2000, XP, Pocket PC, Mac OS X と Linuxと幅広い。

 ファイアウオールやNAT環境の背後にあったとしても,ほとんどの場合,使える。これまで,パソコン上でボイス・チャットや加入者電話回線につなげられるサービスがいくつかあったが,ファイアウオールで利用可能プロトコルが制限されているような場合,あるいはプライベートIPアドレスで外界から切り離されているようなときには使えなかった。しかし,P2P技術を使ったSkypeはクライアント同士が互いに使える通信ポートを探しだし,自動的にセッションを張ってくれる。

 通話内容はエンド・トゥ・エンドで暗号化され,盗聴にも強い。

あっけないほど簡単

 Skypeのサイトには,無料でダウンロードできるクライアント・ソフトが置いてある。自分の手持ちの機器に合わせてこれをダウンロードし,自分で適当にユーザー名,パスワードなどを設定すると,すぐにPC同士のIP電話が楽しめるようになる。PCユーザー間なら当然使用料金は全くの無料だ。

 さらに,最低10ユーロ(約1320円)ほどデポジットしておけば,世界各国の加入電話に格安の国際電話ができるようになる。デポジットはクレジット・カードで簡単に購入できる。

 各国への電話料金はSkypeサイトでご確認いただきたいが,たとえば米国なら地上回線・携帯ともに1分間約2.24円,日本へは地上回線1分間約3.57円,携帯向けが約20.7円。これはかなりお得である。

 Skypeでは,現在のところ,Skypeから加入者回線に向かってかける「SkypeOut」しかサービスしていないが,いずれ,加入者回線からSkypeユーザーを呼び出す「SkypeIn」も用意すると明言している。

 前回の記事,「IP電話の利便性損なう総務省判断」で指摘したように,日本では,加入者回線からインターネット上のIP電話サービスにつなぐ仕組みは当分実現できそうにないが,海外のどこかに置いたゲートウエイからこれができるようになるだろう。

 こうした新しい利用方法,特に電気通信関係の新規サービスは海外から巻き起こり,しばらくして日本に入ってくる。Skypeのようなサービスは,監督省庁などがあずかり知らないところから,一気に日本に入って来るかもしれない。こうした流れを止めようとするのは,もう,ナンセンスでしかない。新しいビジネスがすくすくと育ち,より利便性の高い社会が来ることを願いたい。

(林 伸夫=編集委員室 主任編集委員)