記者の本分はあくまでも記事を書くことにあるが,記者を長年していると,それ以外の仕事を社内外から頼まれることがある。「声がかかるうちが花」ということで,筆者はなるべく引き受けるようにしている。とりわけ,まったく初体験の仕事の場合,時間をなんとかやり繰りして取り組むことを心がけている。

 7月末に,そうした「初」の仕事をした。ある大学で行われた前期の期末試験の回答について意見を述べるというものであった。きっかけは知り合いの方から次のような電子メールをもらったことである。

 「先日,出講しているC大学の経済学部で期末試験をしました。課題は,企業の情報システム部門長になったと仮定して,システム部門の位置付け,目標,各種施策を記述しなさい,というものです。生徒たちはそれなりに解答しているという印象です。生徒の解答についてコメントいただけませんか」

 これは面白そうである。7月末は,新雑誌二号目の編集作業がちょうど一段落する時期であった。そこで「引き受けます」とすぐ返信した。知り合いとメールをやり取りした結果,次のようなやり方をとることにした。

 まず知り合いの方が作った期末問題を教えてもらい,筆者なりの解答を作成し,それを知り合いに渡す。一方,知り合いの方が生徒の解答概要を筆者に説明し,筆者なりの感想を述べる。こうすることで個別の解答用紙や生徒の情報は一切見ないで済むようにした。

 試験問題は非常に単純なものだが,なかなかよくできているので紹介する。問題は五つある。IT Pro読者の方々も,大学生に戻ったつもりでご自分なりの解答を考えてみていただきたい。


【問題】
あなたは会社の情報システム部門長に任命されました。

(1)あなたは情報システム部門を会社の中でどのように位置付けますか?

(2)あなたの情報システム部門の会社の中における目標を示しなさい。

(3)その目標を達成するために,情報システム部門をどのような組織にしますか?

(4)目標達成のために,情報システム部門として行う施策を三つ示しなさい。

(5)目標達成のために,ハードウエア,ソフトウエア,ネットワークのそれぞれについて,注力する重点項目を三つずつ示しなさい。


 次に筆者が作った解答を掲載する。


【筆者の解答】

●位置付け:「情報」に責任を持つ部門

 情報システム部門とは,経営者や現場が欲しい情報を必要な時に正確かつ安全に出してあげる部門である。必ずしもコンピュータの専門家である必要はないが,情報を出すために必要なシステムの企画・設計・開発・運用を担当するので,おのずと専門家にならざるをえない。ただしシステムを開発することが目的ではなく,情報を出すことが目的である。

 情報システム部門の理想像は,「情報」を基に各部門の業務改革を支援できること。ただしいきなりそこまで行くことは容易ではない。

●目標:「情報」の責任部門として社内外から認知してもらう。

 情報システム部門にとって一番つらいところは,その仕事内容が社内外から今ひとつ理解されていないことである。この問題に関して「新任の情報システム部長はつらい」という原稿を去年書いた。

●必要な組織:その企業内の最重要スタッフ部門(例えば企画あるいは人事)と並列にしてもらう。

 できればシステム部門の担当役員は次期社長と言われる人になってもらう。さらに最重要スタッフ部門のエース級を一人でよいから,システム部門のほうに出してもらう。専任が難しければ兼務でもよい。