主要ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)やポータル・サイトなどが,相次いでblog(ブログ)開設サービスに乗り出した。国内では既にニフティ,NTTコミュニケーションズ(NTTコム),NEC,エキサイトなど10社以上がサービスを提供中である。

 blogは,HTMLの知識を必要とせずに日記スタイルのホームページを簡単に作れる個人向けサービスである。blogページを訪問した人が意見を公開コメントとして付け加えたり,そのコメントを逆にたどって他のホームページに誘導する機能を標準で備える。この機能によっての輪が大きく広がるのが特徴で,従来の情報発信専用の個人ホームページと決定的に異なる。blogは国内利用者が数十万人に急増。blogが新しいビジネスになると期待するサービス提供事業者は多い。

法人市場からECサイト連携まで狙いは様々

 現時点で,blogシステム提供各社が最も大きな収入を期待しているのが法人向けシステム販売だ。blog開設サービス「マイプロフィール」を販売するドリコムはblogツールをカスタマイズし,中小企業向けホームページ作成サービスとして提供する。1年間で7000社の契約を目指す。NTTコム,ニフティにblogシステムを提供するシックスアパートも,今年からシステム・インテグレータを経由した企業向けの販売を本格化させる。

 blogサービス提供事業者も新しいビジネスを生み出そうと考えている。例えばニフティは,同社のblogサービス「ココログ」利用者2万3367人(2004年3月末)に加え,さらにそのblogに集まる人々をEC事業に結びつけようとしている。

 blogにアクセスするユーザーは,blog開設者を信頼していたり同じし好である可能性が高い。blog開設者が商品を紹介すれば,アクセスした人が商品を購入する確率は高くなる。そこでblog経由で販売が成立すれば,ECサイトがblogサービスを提供するニフティとblog開設者に代金の数%の仲介手数料を支払うアフィリエイト・プログラムが成り立つ仕組みである。

ソーシャル・ネットワーキングがblogに続くブーム

 blog同様「信頼」をキーに,新しいビジネスを生み出す可能性があるのが「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下SNS)]だ。これは,「友達の友達は友達」という考え方に基づき,友人のネットワークを利用して,恋人から仕事のパートナまで探せるサービス。友人ネットワークに範囲を限定して実名,プロフィール,関心事,連絡先などを公開できる。匿名が売りの「出会い系サイト」とは逆だ。

 検索サービス最大手米Google社の一社員が手がけるSNS「Orkut(オークット)」が公開されたことで,広く注目を集めた。現在は日本でも,「グリー」「mixi」「フレンドマップ」など個人やベンチャー企業が運営するサービスが続々と生まれた。

 開始1カ月間で1万人以上の会員を集めたグリーを運営する田中良和氏は,SNSのビジネスの可能性について「SNS単体ですぐもうかるわけではない」と否定的。ただ,「インターネット・メディアは匿名性ゆえに信頼性を失った面がある。逆にSNSは友人同士が参加し,個人が特定できる『信頼性』に基づいたネットワーク。グリーがいわゆる“コミュニティのOS”となり,売買,イベント開催など様々なアプリケーションを実現できる」と語る。

 具体的には,SNSで友人の誕生日を知り,その友人がSNSに登録した「欲しいものリスト」にある商品をプレゼントする。SNS運営者は,ECサイトから仲介手数料を得る,といったモデルだ。

 blog,SNSいずれも,「ビジネス・モデルが出来上がってからサービス参入しては遅い」と考える企業が多い。それまでに良質なユーザーをどれだけ囲い込めるかが勝負と見る。このため,参入が相次ぐ状況だ。

(杉本 昭彦=デジタルARENA)

■本記事は,日経マーケット・アクセス2004年5月号のコラム「ビジネス・モデル」から転載したものです。