今年2月に発売開始されたWindows Small Business Server 2003(SBS 2003)をしばらく使ってみたが,今度のSBSはよさそうだ。

 過去のバージョンは,単にサーバーOSとサーバー・アプリケーションを1つのパッケージにまとめただけで,それらを別々に購入したときと比べて違いはほとんど価格だけだった。そのため,システム管理に必要なスキルは大規模LANのときと変わらず,ターゲットとなっているユーザーには手に負えない製品だった。つまり,対象ユーザーが存在しない製品だったわけだ。そんなSBSだったが,今度のSBS 2003はやっと実用的になった。考えてみると,ここにもバージョン3の法則が当てはまっている。

 バージョン3の法則とは「ソフトウエアは3つ目のバージョンで実用的なレベルになる」という,だいぶ前にどこかで読んだ法則である。例えば,WindowsはWindows 3.0/3.1で実用的になっている。Windows NTもサーバーOSとしてブレイクしたのはWindows NT 4.0,つまりWindows NT 3.1,3.5/3.51,4.0と数えた3つ目のバージョンだ。

 クライアントOSとしては,NT 3.x,NT 4.0,2000と数えたWindows 2000が「バージョン3」といえるかもしれない。Linuxもカーネル2.0,2.2,2.4と数えた3つ目のバージョンでビジネスの現場でも使えるようになった。Javaも本格的に使われだしたのはJava2,すなわちJDK 1.2で,JDK 1.0,1.1,1.2と数えた3つ目のバージョンである。.NETは現在の.NET Framework 1.0/1.1がバージョン1で,バージョン2はWhidbey,と数えていくと,3つ目のバージョンはLonghornに実装されるWinFXになるのだろうか。.NETも普及の兆しが見えているが,Longhornが出荷されたころには今以上に使われるようになるかもしれない。

 まぁ,中には少々強引とも思える部分が無きにしも非ずだが,バージョン3の法則は結構当てはまっている。

独自の管理ツールやウィザード,オンライン・ヘルプが魅力

 こんなバージョン3の法則に則ったのかどうかは定かではないが,SBS 4.0/4.5,2000,2003と数えた3つ目に当たるSBS 2003はよくできている。OS部分はWindows Server 2003そのものだが,Windows Server 2003にはない管理ツールやウィザードがあり,設定時に参照するオンライン・ヘルプも充実している。PCやネットワークに関してある程度のスキルがあれば,設定方法が分からなくても何とか管理,運用できそうだ。

 私自身,こんな仕事(日経Windowsプロの編集者)をしているので,オフィスにはWindows Server 2003をActive Directoryのドメイン・コントローラにしたプライベートなLANを構築し,小さいシステムながらシステム管理などを実践している。実際に試してみないとなかなか分からないことが多いからだ。

 普段から自分の手を動かしていろいろなことを試しているが,何かと設定方法が分からず,それを調べるのにかなりの時間を要することが度々ある。Windowsは各種設定用にGUIが用意されているので操作性は良い反面,その設定画面を開けないと設定できない。設定画面にたどり着けないと設定すべき内容が分かっていても設定できないので,その画面がどこにあるのかを探すのに長い時間をかけなければならなくなる。

 Linuxなら仕組みさえ分かっていれば,テキスト形式の設定ファイルを編集するだけなので,かえって簡単だと感じることさえある。その点,SBS 2003は,共通の管理画面からウィザードを起動して設定できるので,どのツールのどの画面で設定するのかを探す,などという無駄な時間が省ける。

 SBS 2003のウィザードを使うと,「こういう風に設定するのか」「こういう仕組みだったのか」と,実際に正しく設定された内容を見て教えられることがある。分かるまでは散々悩んで時間がかかるが,一度できてしまうと「なぁんだ」ということは結構多い。つまりSBS 2003のウィザードを使えば最初から答えを見られ,これを利用すると,ネットワーク管理の学習用にもなる。私自身,SBS 2003で覚えた設定を,Windows Server 2003に適用した項目がいくつもある。

システム管理の学習を兼ねて家庭にネットワークを構築してみては?

 さらに目的意識があると,学習の速度も速い。例えばシステム管理の学習を兼ねて家庭にネットワークを構築してみるのはいかがだろう。私自身,そろそろ家庭にサーバーを構築してみるかという気になった。

 私事で恐縮だが,私自身20年以上前からPCを使っており,また,趣味の1つがPCだということもあり,我が家ではすべての部屋にPCを置いて,LANでつないである。実際にはPCの数が増えすぎたので,すべての部屋を侵略してしまったというのが正しいかもしれない。

 だがそのLANは,今はほとんどインターネットにアクセスするADSL回線を共有するためだけにしか使っていない。我が家では,インターネットの独自ドメインを取得しており,5人の家族全員にそれぞれメール・アドレスを与えている。独自ドメインを持っていると,回線事業者やインターネット・サービス・プロバイダを変えてもメール・アドレスは変わらないので便利である。ただ,自宅にサーバーを作っていないので,今はレンタル・サーバーを使っている。いろいろな面で,我が家のLAN環境は宝の持ち腐れ状態にある。

 LANの導入は,2000年に我が家を新築したのがきっかけだ。当時住宅ローン減税の適用を受けようと,老朽化した我が家を急いで建て替えたのである(その後住宅ローン減税が延長されたので,あせりすぎたかと反省している)。そのとき,どうせならと,大枚をはたいてすべての部屋に情報コンセントを設置し,CAT 5eのケーブルを壁の中に埋め込んだ。

 ちなみに当時,インターネットにはISDNによるダイアルアップで接続していたので,ISDNのモジュラ・ジャックもすべての部屋に設置してある。内線通話をしたり,2回線同時に通話したりと,当時は便利に使っていたISDNだが,ADSLにした今となっては使っていない(使えない)ので無駄になってしまった。これこそ新築をあせりすぎたかと後悔している。

家庭用サーバーOSとしてもSBS 2003は使える

 話が横道にそれてしまったが,新築したその当時も,何の目的もなしにLANを敷設したわけではない。将来は,ホーム・サーバーを作り,そこに音楽やビデオなどのメディア・ファイルを格納して一元管理しようと考えていた。各部屋ではPCを使ってそれらを再生する腹積もりだった。が,主に2つの理由からまだホーム・サーバーを作っていなかった。

 その理由の1つは,音声や映像をファイルに簡単に変換する手段がなかったことだ。TVチューナー・キャプチャ・ボードを使えばPCで直接ファイルに録画できるが,操作性や画質を考えると躊躇してしまっていた。もう1つの理由は,適当なサーバーOSがなかったことである。Windows 2000 ServerやWindows Server 2003は個人で買うには高すぎるし,Windows 2000/XP Professionalではドメインを構成できない。最近よくなってきているLinuxも当時は不安定だったり,マルチメディアに弱い面があった。ホーム・サーバー専用機も売られているが,できればホーム・サーバーもPCで作りたい。PCならば,プログラムを独自に作るなどで自由にどうにでもできる。

 最近,ようやくこれらの障壁が解消されつつある。ハードディスクを内蔵したDVDレコーダーがあり,テレビ映像などは簡単にエンコードし,ファイルにできる。LAN端子を備えた機種もあり,録画したファイルをLAN経由でPCにコピーできるようだ。DVDレコーダーの多くがLinuxで動いているので,ユーザーの中には,DVDレコーダーにtelnet接続して操作したりWebサーバーにしてしまうようなツワモノもいるようである。それはそれで面白そうだが,そこまでしなくても十分である。ビデオ・カメラで撮影した独自の映像も,今ならIEEE 1394を介してPCに取り込み,MPEGやWMVなどの形式にエンコードするのも簡単である。

 サーバーOSに関しては,冒頭で紹介したSBS 2003がよさそうだ。ベースがWindows Server 2003なので,Windows Media Servicesの機能を使って,ストリーミングも可能かもしれない。Exchange Serverもついているので,今はレンタルしているメール・サーバーを自前で運用できそうだ。しかもSBS 2003はリモート・アクセス機能が充実しているので,ブラウザで接続するだけで,Windows XPなどのリモートデスクトップ機能を使って自宅の任意のPCにインターネットからリモート・アクセスできる。

ホーム・サーバー用の低価格なWindows Serverが欲しい

 このような目的があると,手間をかけることがあまり苦にならない。SBS 2003のウィザードで設定していれば,大抵の設定内容については手順や内容を覚えてしまうだろう。知らす知らずのうちにWindowsネットワークのシステム管理に長けてくる。

 ただ,SBS 2003は,文字通りビジネス向けのサーバーである。家庭で使うには少々オーバー・スペックの部分もある。価格も安い(パッケージ版の推定小売価格が13万8000円)とはいえ,個人で買うにはまだ高い。

 そこでより価格の安い「Windows Server 200X Home Edition」なるものが出ないかと期待している。価格を安くする分,Active Directoryを削除するのは構わない。ただ,そうすると,システム管理の学習用という目的が果たせなくなってしまうが。でも家庭で使うのであっても,ドメイン構成を採れたほうがいい。

 いっそのこと,Windows XP Media Center Editionをサーバー用にしてドメイン・コントローラ機能を付けたものはどうだろう。ユーザーは限られているので,CAL(クライアント・アクセス・ライセンス)が必要などというケチくさいことは言わずに,ユーザーが何人でもデバイスが何台でもOKにしてほしい。セキュリティを考えて,SBS 2003では上位版のPremium Editionにのみ付属しているInternet Security and Acceleration Serverもほしい。こんなサーバーOS,やっぱり夢なのだろうか。

(山口 哲弘=日経Windowsプロ)