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日経コミュニケーション

デジタル・デバイド解消の鍵,「ブロードバンドはつかみ取るもの」

2004/05/06

 xDSL,FTTH,CATVインターネットを足したブロードバンド接続サービスの加入数は2004年2月末で約1449万。もうすぐ1500万に達しようという勢いである。しかし一方で,ブロードバンドを利用したくてもできないユーザーも数多くいる。このような格差は“デジタル・デバイド”と呼ばれる(デジタル・デバイドには「パソコンを使えないため入手できない情報がある」など,ほかにも意味がある)。

 こうしたデバイド環境下にある地域は,ブロードバンドが開通する日をただ待っているわけではない。懸命の誘致運動を繰り広げる市町村などもある。こうした取り組みを調べてみて感じたのは,「ブロードバンド接続サービスは“待つもの”ではなく“つかみ取るもの”」ということだ。

 日経コミュニケーションは,2004年2月9日号から3月8号にかけて「忍び寄るデジタル・デバイド」と題した連載記事を掲載した。(1)ブロードバンド,(2)IP電話と固定電話,(3)携帯電話――の3つのサービスについて,地域間あるいは媒体間で生じているデバイドの現状を紹介している。

 取材して回るなかで,ブロードバンドのデバイドがユーザーに与える影響は大きいのではないかと思うようになった。IP電話,映画のように大容量のコンテンツなど,さまざまな情報の利用で差が付くことになるだろうと考えたからだ。

300加入の目標背負い,奮闘する村役場

 現在,ブロードバンドが使えないユーザーはどれくらいいるのだろうか。2003年11月末時点のデータだが,加入電話回線に対する「フレッツ・ADSL」のカバー率で見ると,5%にあたる約252万世帯が提供エリア外だという。「Bフレッツ」のカバー率を見ると,28.9%に相当する約1460万世帯が加入できない。この数字を耳にして「まだ相当あるな」との印象を持った。

 確かにデバイドは少しずつ解消に向かっている。「沖縄の石垣島と宮古島でブロードバンドを提供できるようになる」「東京の八丈島でヤフーBBの提供が決まった」といったニュースに気づかれた方もいるだろう。だがデバイドは離島に限らず山間にもあるし,都心に比較的近い場所にも今なお残る。

 東京・新宿から急行電車で55分,バスに乗り換え35分。たった1時間半で行けてしまう神奈川県清川村には,まだブロードバンドが来ていない。話を伺ってみると,村民のブロードバンドへの興味は高いようだ。昨年11月に村がアンケートをとったところ,「インターネットに接続している」とした世帯の9割以上がブロードバンドを「利用したい」と答えたという。

 こうした村民からの要望もあり,4月2日に村役場が音頭をとって「清川村にブロードバンドを誘致する会(仮称)」を結成した。商工会に婦人会,PTAなどの団体を動員して,目指すはNTT東日本「Bフレッツ」の提供である。フレッツ・ADSLでなくBフレッツなのは,村内の主な2つの地区の片方にしか電話局がなく,かつ2つの地区が9kmも離れているためだ。

 誘致への最大の壁はニーズをまとめること。NTT東日本にかけ合うなどした結果,300件程度の加入申し込みをまとめればサービスを受けられると分かった。だが村内の全世帯数は約1100。27%の世帯に「Bフレッツに加入します」と言ってもらうのは容易でない。「300件程度」という要求はちょっと厳しいのではないかと思う。

 誘致する会を担当する総務部企画財政課の折田克也副主幹は,「当然,事業者にも採算性がある」と話したが,そのあとに続けた言葉こそ本音だろう。「通信基盤は水道や電気のようにライフラインに近づいているのではないか。我々は1100世帯で地域的にも大都市とは違うが,サービスに向けて最大限に考慮してほしい」。

 村は加入促進を図るため,補助制度も設けた。6月30日までに申し込めば,2年間Bフレッツ月額利用料の一定額を村が出す。4月28日現在,申し込み件数は207。折田副主幹の心配事は「チラシを各家庭に配布したが,どれくらい目に留めてくれているか」。無事目標を達成できればと願っている。

声を上げ,時には金も出す“熱意と執念”

 清川村に限らず,多くの自治体がブロードバンド誘致に向けた取り組みを進めている。こうした取り組みに共通していることは,誰かが声を上げてブロードバンド接続サービスを提供する通信事業者にニーズを知らせること。そして場合によってはお金を出してでも誘致することである。

 NTT東西地域会社から,「200〜300件程度(場所や条件によって違うようだが)の申し込みがあると分かればフレッツ・ADSLの提供を検討する」と言われた自治体はほかにもある。これを逆にとらえて,「通信事業者は,ニーズがあると認識できなければブロードバンド接続サービスを提供しない」と考えても大間違いではないだろう。

 町村がブロードバンド開通費用の一部を出すケースも,まれではない。例えば日経コミュニケーションの連載で紹介した新潟県加治川村はADSL装置を置く建物の費用,愛媛県一本松町はADSL装置の費用,愛媛県内海村は装置と建物の両方の費用として,それぞれ数百万円から1000万円以上の費用を出している。このほか,県が町村や通信事業者に補助金を出すケースもある。

「全市町村で開通」は道半ば

 ブロードバンドを使えない市町村がなくなるまでには,まだ時間がかかるだろう。かつ,それを達成できればデジタル・デバイドを解消できたともいえない。また一つ例を挙げたい。

 秋田県は2003年度まで,県内のブロードバンド未開通の町村でADSL接続サービスを提供できるよう,通信事業者に補助金を出す制度を設けていた。現在,県内市町村のすべてで,少なくとも一部地域ではブロードバンドを使えるようになっている。だが同県はそれで終わりにせず,2004年度から新しい補助制度「高速インターネットアクセス網整備促進事業」を設けた。県内の市町村がブロードバンド未開通“地区”でサービスを開始するために出す費用の一部を補助する仕組みだ。

 この例からも分かるように,同じ市町村の中にも“地区”によるデバイドが存在する。デジタル・デバイドを解消するには,最終的にそこまで達成しなくてはならない。先が長い話だが,重要な社会問題ととらえて今後も注目していこうと考えている。

 最後に,多くの都道府県や地方自治体の関係者の方に,質問させていただいたりご意見を頂戴したりした。この場を借りてお礼申し上げます。

(山崎 洋一=日経コミュニケーション)

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