昨日公開した「電話加入権」を廃止すべきか?(上)では,電話加入権の廃止を巡る議論の経緯と,電話加入権と施設設置負担金が生まれた歴史的背景などをまとめた。今日は,これらを踏まえて,筆者の意見を紹介したい。また,読者の皆様にもぜひ「加入権廃止」への意見をいただきたいと思う。

廃止メリットは本当にあるのか

 電話加入権は,10年前であれば5万円前後で業者が引き取っていた。施設設置負担金7万2000円のおよそ3割引だ。ところが1年ほど前は2万円前後。今は1万円前後で取引されている。ユーザーへの販売価格は1万5000円前後だ。

 事実上1万5000円で購入できるのであれば,廃止する必要はないのではないか。筆者はそう思い始めた。というのも,仮に施設設置負担金が廃止されると,その分「月額数百円」を上乗せするという案も有力だからだ。

 仮に月額500円が上乗せになれば,3年で合計1万8000円。月額300円だとしたら4年で1万4400円。つまりある程度の期間利用するユーザーであれば,1万5000円で手に入れた方が得である。

 まずは7万2000円の導入負担を欧米並みの3000~1万円前後まで一気に値下げすべきではないか。根拠は以下の通りである。実は加入権の廃止は携帯電話で実施済み。NTTドコモは加入権に相当する「工事負担金」を7万2000円→4万5800→2万1000円と段階的に値下げ。最終的に6年後に廃止した。

即刻値下げすべきでは

 固定電話でもこの携帯電話のケースを手本にする可能性が濃厚になりつつある。しかし6年もかけていたら,メタル回線を使う固定電話は朽ちて光ファイバを使うFTTHのIP電話全盛時代がやってくる。FTTHでは設置負担金や加入権は必要ない。

 そもそも,1万5000円など安価に電話加入権が入手できることを知らないユーザーも少なくない。定価の7万2000円で“大損”するユーザーのことを思えば即刻値下げすべきではないだろうか。

企業にも大きな影響

 企業にとって電話加入権の値下がりは“2006年問題”となりつつある。企業は保有する電話加入権を「無形固定資産」として計上している。大きな企業であれば総額は数億から10数億円にもなる。

 ところが,2006年3月期の決算では資産を時価評価する「減損会計」が導入される。電話加入権の「市場価格」が1万円台まで値下がりしている現状では,7万2000円との差を損失として計上することが余儀なくされるのだ。

 電話加入権が計上の対象になるかどうかはまだ決まっていない。ただ減損会計をトリガーとして,施設設置負担金の廃止と特例措置がセットで動き出す公算が高まっている。

 電話加入権は身近のものでありながら意外と知らないことが多い。また今後の先行きも不透明だ。そこで,IT Proに会員登録されている読者の皆様に「加入権廃止」への意見をいただきたいた。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)