「自分が関与するシステムでWindows NT Server 4.0が稼働している回答者は67.1%」――2月23日から3月2日にかけてIT Pro上で実施した「Windowsシステムのサーバー/クライアントOSの利用状況」(513人回答)に関するアンケートのこの結果をみなさんはどう見るだろうか。

 ご存じのようにマイクロソフトは同OS向けセキュリティ修正プログラム(セキュリティ・パッチ)の新規開発を含む大部分のサポートを今年末で終了すると発表している。あと9カ月ほどでサポートが切れるOSの利用率としては高いと感じる方が多数だろう。

 開発が終了する修正プログラム(パッチ)にはセキュリティ関連のものも含まれており,影響は大きい。最近のウイルス/ワームには,OSやアプリケーションのセキュリティ・ホールを悪用するタイプが目立つ。悪意のある人間が行う不正アクセスもセキュリティ・ホールを狙うのが常とう手段だ。NT Server 4.0は,セキュリティ・パッチがなくなる2005年以降これらの脅威に対して著しくぜい弱になる。

 NT Server 4.0をWindows 2000 Serverなど新しいOSへ移行すれることが抜本的な対策になるが,アンケート結果はサポート終了に伴うOS移行の難しさを改めて認識させる。

移行の必要性を認識しているが 思ったほど進まない

 もちろん,回答者の方々は,移行の必要性を認識しており,実際に移行も始まっている。日経Windowsプロ編集部は,アンケートでWindows OSの利用状況を定期的に調べている。前回,サーバーOSに関する調査を実施した2002年12月時点でNT Server 4.0は,71.3%の回答者の環境で使われていた。1年3カ月を経た今回の調査では,冒頭に示したように67.1%と3.2ポイント少なくなっている。

 「最も多く使っているサーバーOSは?」の質問に対する回答を見ると,減り具合はもう少し鮮明に現れる。この質問の答えとしてNT Server 4.0を挙げた回答者は,前回の47.6%から32.4%へと約3分の2に減った。これに対して,最も多く使っているサーバーOSとしてWindows 2000 Serverを挙げた回答者は,前回の33.1%から48.4%へと15.3ポイント増えている。2002年12月と今回の調査の回答者は同一ではないので厳密な比較とはいえないものの,実態とはそう離れていないはずだ。

 このように移行は始まっているが,想定より遅れているのも実情のようだ。前回2002年12月の調査では「2003年末時点で最も多く使っていると予想されるサーバーOSは?」という質問に対して,Windows 2000 Serverを挙げた回答者は全体の56.0%で,NT Server 4.0を挙げた回答者は18.8%だった。それが今回の調査では2004年2月下旬~3月頭の時点の状況として,Windows 2000 Serverを挙げた回答者が48.4%で,NT Server 4.0を挙げた回答者が32.4%になった。

 回答者がNT Server 4.0を減らそうという意欲が衰えたわけではない。今回の調査で「利用を減らしたいOS」を尋ねたところ,NT Server 4.0を利用している回答者の92.2%が,同OSを減らしたいと答えた。

予算確保に苦労するユーザー

 回答者の思いとは裏腹に,NT Server 4.0がいまだに多く使われ続けているのはなぜだろうか?アンケートの自由回答欄に多くの人が悩みを寄せていただいた。

 「経営陣の無理解やコスト縮減の中,予算獲得が課題となる」「上司が勉強をしていないため,移行の必要性を理解できない」「この不景気で予算が厳しいので,ハードが物理的に壊れない限り使い続けるユーザーが多いのが現状である」「システム構築・運用の直接担当者は移行の必要性を十分に理解しているが,周囲の理解が得られず予算が確保できない」――。NT Server 4.0から他のOSへ移行するための費用が原因となっていることが分かる。

 アンケートの集計結果でも「NT Server 4.0サポート終了に関する対策をとる上での悩み」という質問に対して一番多かったのが「予算の獲得」(52.2%)である。続く「アプリケーションの互換性」(51.6%)も間接的に予算の獲得を意味していると考えることが可能だ。予算があればアプリケーションを改修したり,新版に入れ替えたりできるためである。この2つが3位以下の「Active Directory構築の技術」(28.1%),「クライアントの対応」(24.3%),「ドメインの統合」(21.4%)を大きく引き離している。

Windows 2000/2003へ移行した回答者の8割がメリットを感じる

 しかし,アンケートは「予算獲得」などの壁を乗り越えてNT Server 4.0からの移行を実現すればセキュリティ・パッチの確保以外に数々のメリットを得られることも明らかにしてくれた。

 アンケートではNT Server 4.0から他のOSへ移行した回答者に「移行してよかった点(複数回答可)」を尋ねている。その結果を,比較的回答が多いWindows 2000 ServerやWindows Server 2003などNT Sever 4.0の後継版を利用している回答者についてまとめたところ,「管理しやすくなった」(53.6%),「システムの安定性が増した」(49.6%),「システムの性能が上がった」(41.6%)が上位を占めた。これに「セキュリティが向上した」(30.4%),「システムの拡張が容易になった」(21.6%),「管理コストが削減できた」(20.4%)が続く。

 逆に移行のメリットが「特にない」と明言した回答者は,19.6%に過ぎなかった。つまり,Windows 2000/2003へ移行した回答者の8割がメリットを感じたことになる。

 「管理しやすくなった」の評価は,Windows 2000 Serverから備わる新機能によるところが大きいと思われる。例えばNT Server 4.0からの大きな変更点に,ドメイン機能の強化がある。Windows 2000 Serverからはディレクトリ・サービス「Active Directory」の実装で,アカウント情報やセキュリティ設定,ネットワーク機器の情報などが一元的に管理できるようになった。またOU(組織単位)と呼ぶ新しい管理単位で,NTでは難しかった全社のシステム管理者と部門管理者の分業が可能になっている。他にもディスク管理機能やバックアップ・ソフトの機能の強化が図られている。

 Windows 2000 ServerやWindows Server 2003の安定性向上は,ユーザーへの取材で度々耳にしていた。今回のアンケートでも前述のように約半数の移行経験者が「システムの安定性が増した」と答えている。「システムの性能が上がった」は,OS移行とハードウエア刷新の相乗効果である可能性は高い。OSだけを更新するとき,古いハードウエアを使い続けることは少ないからだ。ただし,広い意味の移行メリットには違いない。

 NT Server 4.0からその後継OSへ移行すると,サポートに関する新しいルールが適用される点も見逃せない。同社は製品サポート期間を「サポート・ライフサイクル・ポリシー」として明文化している(該当サイト)。サーバーOSではWindows 2000 Server以降の製品がこのポリシーの対象となり,サポート終了までのスケジュールが計算できるようになる。

 NT Server 4.0の主要サポート終了まであと9カ月弱。サーバーOSを移行する期間としては非常に短いし,「予算の獲得」や「アプリケーションの互換性」などの悩みはそう簡単に解決するものではない。だが,その壁を乗り越えればセキュリティの確保とともに多くのメリットが享受できるという移行経験者の回答は,これから移行に取り組む人々の励みになる。

(茂木 龍太=日経Windowsプロ)

■「日経Windowsプロ」2004年4月号の特集1では「今だから利用できるNT Server移行の新ソリューション」と題してアンケート結果と,昨年秋から今年春にかけて登場した新しいソリューションを紹介しています。また,3月31日に移行計画の立て方や移行先の知識などをまとめた別冊「Windowsサーバー移行のすべて」を発売しました。現在,移行計画を策定中のご担当者は,ぜひ参考にしてください。最後になりますが,この場を借りまして,アンケートにご協力いただいた方々に深くお礼を申し上げます。