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記者の眼

「モスでOK,マックで×」――商用ホットスポットの憂うつ

本間純 2004/03/09 ITpro

 2000年ごろから鳴り物入りで始まった,無線LANによる商用ホットスポット・サービス(無線LANアクセス・サービス)。最近では着実に設置個所は増えているようだが,いまだに運営事業者が儲かっているという話は聞かない。筆者には,各事業者が,ユーザーの利便性よりも“囲い込み”の名の下にそれぞれのエゴを優先してきた必然の結果に思える。月額1600円も払っている会員は,「モスバーガーでは使えても,マクドナルドでは使えない(注1)」という状況に満足しているのだろうか・・・。

 筆者は,日経コンピュータの3月8日号特集「次はプレゼンス」の中で,携帯電話などを使って人やモノの状況を認識し,スムーズに仕事ができる世界を描いた。将来はより高速な通信が可能なホットスポットの利用が望ましいのは明らかだが,今回の特集で取り上げるのはあきらめた。ホットスポットをビジネスの道具として紹介するには,上記のような理由であまりに未熟と感じるからだ。

 2002年12月には,ホットスポット事業者の一つ,モバイルインターネットサービス(MIS)の「Genuine」がサービス停止に追い込まれた。特集の取材中でも,「ホットスポットなんて商売として成り立たない」といった悲観的な意見を聞くことがあった。当初の期待が膨らんだだけに,一部の関係者は失望を味わっている。

注1:モスフードサービスは「HOTSPOT」を運営するNTTコミュニケーションズと,日本マクドナルドは「Yahoo! BBモバイル」を運営するソフトバンクBBと提携している。HOTSPOTは月額1600円で使い放題。Yahoo! BBモバイルは試験サービス期間のため無償提供中で,有料化時期は明示していない。両者がローミング・サービスで提携することは期待できないだろう。多くの場合,店頭で利用権を購入できず,事前の申し込みが必要なことも利用にあたっての敷居を高くしている。

全国2000カ所に広がった自営ホットスポット

 ここまで,既存の商用ホットスポットに対して否定的な見方を並べてみたが,筆者は決してホットスポットそれ自体の将来性を疑っているわけではない。無線LAN機能の搭載がノート・パソコンの標準スペックになった今では,外出先でも同じ便利さを味わいたいと考える人が多いはず。「Centrino」の販促に力を入れるインテルの後押しもあり,ホットスポットの存在はようやく消費者に認知されはじめた。

 期待しているのは,草の根的な広がりを見せる,“自営ホットスポット”の方だ。自営ホットスポットは既に全国で2000カ所に迫っており,数の上で商用ホットスポットの総数と肩を並べる存在に成長した(注2)。自営ホットスポットは,商店やホテル,あるいは個人が,インターネット回線に接続した無線LANのアクセス・ポイント装置を開放するもの。その多くは無料である。

注2:Yahoo! BBモバイルは約660カ所,HOTSPOTは約600カ所に展開している。商用ホットスポットの総数は2000程度と見られる。

 このうち最大のものは,「FREESPOT」ブランドで展開されるホットスポットで,全国に約1660カ所ある。無線LAN機器の大手メーカー,バッファローが主催する「FREESPOT協議会」が普及活動を進めている。これに次ぐのは,京都市のNGO法人,日本サスティナブル・コミュニティ・センター の「みあこネット」で,京都市内を中心に,愛媛県松山市,岡山県倉敷市など約300カ所に展開している。

 約2年前の話になるが,筆者も当時所属していた雑誌の企画で,近所のレストランにホットスポットを設置してみたことがある。市販のアクセス・ポイント,ファイヤウオール装置などの合計コストは約6万円。途中でちょっとした手違いがあったものの,Yahoo! BBのADSLモデムの設置から始めて2時間で作業は完了した。あっけないほど手軽なものだ。

 NTTグループやソフトバンクといった事業者に頼るばかりが能じゃない。いっそのこと,自分でホットスポットを作ってみよう。インターネット草創期のように,一人ひとりが手持ちの設備を持ち寄ってみることだ。5年も経てば,そこら中にホットスポットがあふれていることだろう。何だか,わくわくする話じゃないか。

互恵精神と下心が普及の原動力になる

 自営ホットスポットの設置者に必要なのは,「互恵精神」と,ほんの少しの「下心」だ。

 互恵精神とは,持ち物を相手に分け与えることで,自分も利益を得るという考え方。ホットスポットの設置数が一定の規模に達し,いつか自分もその恩恵に浴すると分かれば,モバイル・ユーザーは喜んで自宅の無線LANの電波を通行人に開放し始めるだろう。例えは悪いが,「Winny」といったファイル交換ソフトのユーザー心理に似ている。実際,みあこネットのエリア・マップを見ると,役所や企業に混ざって,住宅街の個人宅でホットスポットを提供しているボランティアが意外に多いことが分かる。

 さらに,自営ホットスポット設置者の下心に訴える,つまり金儲けにつながることが認知されれば,普及に弾みが付くだろう。

 商店やホテルにとっては,ある程度の集客が見込めることが重要である。大阪市のあるオフィス・ビルに入居している喫茶店では,FREESPOTの利用客が多い日で50人に達するという。これを多いと見るか少ないと見るかは人によるが,アクセス・ポイントやADSL回線のコストを回収するには十分の集客効果と言えそうだ。

 ホットスポットを提供する個人ユーザーに“お小遣い”を提供する企業も現れた。ベルギーのリンスポットは,ちゃっかりと個人ユーザーの力を借りて,商用ホットスポット・サービスの構築に乗り出した。同社のサイトからホットスポット構築用のソフトをダウンロードして,ホットスポットを設置するユーザーに対し,同社が得た接続収入の85%を支払う(関連記事)。日本からも参加可能だ。

設備提供者の安心を担保する仕組みが普及を促進

 普及にあたってもう一つ重要なポイントはセキュリティである。無線LANの電波を通して,自宅や会社のパソコンのデータを公衆にさらす危険があれば,誰も自営ホットスポットを提供しようとは思わない。「FREESPOT」や「みあこネット」の存在意義はここにある。彼らはいずれも,あらかじめホットスポット用に設定を済ませたアクセス・ポイント装置を提供することで,セキュリティ問題をクリアしている。

 FREESPOTの場合,自営ホットスポットの提供者はバッファローの「導入キット」(4万1790円)を購入して設置する。導入キットに含まれるアクセス・ポイントは,他のパソコンのデータが見えないように,クライアント同士の通信を遮断するように設定されている。出張設置サービスや,ポスターも付属する。

 一方「みあこネット」は,アクセス・ポイントの代わりに,ブロードバンド・ルーターとアンテナをホットスポット設置者に無償提供している。このシステムのミソは,ブロードバンド・ルーターに搭載した専用のファームウエアだ。VPNを使ってルーターとみあこネットのセンター間を結ぶことで,ホットスポット利用者のデータとホットスポット設置者のデータを完全に分離。両者にセキュリティ面の不安を与えないようにしている。2003年7月からは市内の大手メーカーと連携し,これらの社員が出先からLAN内へVPNでアクセスできるようにした。

 みあこネットは現在,ブロードバンド・ルーターの購入資金を国の実験予算に頼っている。しかし,みあこネットの運営に携わる京都大学の岡部寿男教授は,無線LAN機器のメーカーに仕様を公開し,同様のファームウエアをアクセス・ポイントに搭載して出荷するように働き掛けている。将来は,「余ったパソコンにLinuxと無線LANカードを入れてもらって,"apt-get"コマンドでみあこネットのルーター・ソフトをダウンロードできるようにしたい」という。

ホットスポットは「脱ビジネス・ツール」を目指せ

 これまで,ホットスポットをビジネス・ツールとして紹介することが多かった。企業向け媒体の記者としてはそれでも良いのだが,個人的には「ノート・パソコンをバリバリ使いこなすビジネスマン」だけに使わせるのはもったいないと思っている。

 今後はIP電話が企業内に普及するに伴って,無線LAN搭載の携帯電話もじわじわと普及することになるだろう。そのNTTドコモは無線LAN機能を搭載したFOMA端末を2004年度中に発売する見通しである。

 休日に訪れた商店街で,ふと携帯電話の画面に目を落とすと,近くの映画館の上映情報が表示されている・・・。こんな情報配信に使うのはどうだろう。続きは皆さんが考えてみてほしい。

(本間 純=日経コンピュータ)

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