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記者の眼

SE/プログラマは「13歳」に夢を与えない?

道本健二 2004/01/30 ITpro

 「13歳のハローワーク」(幻冬舎)を読んだ。筆者は,作家の村上龍氏である。だが,この本は小説ではない。子供から大人にさしかかる13歳ぐらいの中学生を対象にした仕事(職業/職種)のガイドブックだ。なんとなく手にして,初めは面白く読んでいた。しかし,途中から“うーむ”と考え込むはめになった。

 13歳のハローワークは2003年末に発売され,あちこちで話題になったので,ご存じの方も多いだろう。この本の趣旨は明白だ。「好奇心を摘まないようにして,さまざまなものを選択肢として子どもに示すだけでいい」と著者が言うように,約500種類の職業をひたすらまじめに解説する。

 仕事・職業は,虫が好き/絵やデザインが好き/スポーツが好き/メカ・工作が好き/地図を見るのが好き/旅行が好きといったたくさんの好奇心の区分ごとにまとめられている。自分の好奇心の延長線上にどんな仕事があるのかが分かる仕組みになっている。「好きな分野の仕事で生活できればそれにこしたことはない」という意図だ。

 ランドスケープアーキテクト,アクチュアリー,インペグ屋といった(私が)よく知らない職業もたくさんあってなかなか楽しい。そしてところどころに,筆者ならではのエッセイ(例えば,坂本龍一氏とのつき合いから音楽家の幸せを語るなど)が挟まれており,ありきたりな職業ガイドと一線を画している。

 ただ,全体に言えることだが,中学生が読むには少し難しいのでは,と感じた。これをスラスラ読み通せる13歳ならば,将来の仕事を案ずる必要はあるまい。どんな職業でもうまくこなせるのではないか。少なくとも編集者/記者にはなれるだろう。本人が望むかどうかは別にして。

 そんな戯れ言はさておき,本欄の読者ならSE/プログラマなどIT関連の職業がどんな風に紹介されているのか気になるだろう。私もプログラミング情報誌の編集者という立場を思い出し,面白そうな仕事を物色するのをやめて,SE/プログラマの項目を探し始めた。

SE/プログラマはどこ?

 ところが,好奇心のジャンルの中にSE/プログラマは含まれていないのだ。そもそもパソコンが好き/コンピュータが好きといった項目もない。ちょっと違うかなと思いつつ,テレビゲームが好きという項目があったので,そこを見てみると「テレビゲームが好きだからといってゲーム作家やゲームプログラマになれるわけではない」というもっともながら厳しいことが書いてあり,文章が好き/絵やデザインが好きの項目を読みなさいとある。そちらには,ゲームプランナーやゲームグラフィックデザイナーなどの解説はあった。

 目次をよく探してみると,巻末近くの「P.S. 明日のための予習 13歳が20歳になるころには」という章の中に,IT[Information Technology]という項目があり,そこでSE/プログラマが紹介されていることが分かった。“なんだ,追伸扱いかよ”と少しがっかりしながら,該当ページを読むとさらにがっかりした。

 その部分は,ITの現状と可能性というタイトルで,伊藤穣一氏(インフォシークやエコシスなどの起業家として有名)にインタビューするという形式になっているのだが,SE/プログラマはその話に登場する用語解説(つまり注釈)として出てくるだけなのだ。

 SE/プログラマの解説自体は,特にどうということのない内容だった。プログラマは「SEにステップアップすることが可能」といった細かい記述に疑問を感じないではないが,世間一般の解釈はそんなものだろう。それより,SE/プログラマが好奇心の延長線上で紹介されていなかったことの方がショックだった。思わず“中学生が興味を持つ仕事ではないということか”とつぶやいてしまった。

 ITの章の終わりには,13歳は,ITブームとやらに乗っかってどっかの企業に雇用してもらおうといった甘い夢は見るな,というメッセージが書いてある。もっともな話だが,いささかバイアスがかかりすぎている気がする。純粋に“Bill Gatesのようになりたい”と思う13歳がいても不思議ではなかろう。もっと単純に,コンピュータに興味を持つ13歳はたくさんいるはずだ。私と同様に,コンピュータが好きという項目を探した読者は,少なくないだろう。

ソフト技術者の幸せな生き方とは

 ぐっと現実的な中学生なら“将来はフリー・プログラマとして食っていきたい”と思うかもしれない。弊誌(日経ソフトウエア)の若い読者からも,ときどき“フリー・プログラマで生計を立てるにはどうすればいいのか”といった質問が来たりする。

 そうした質問が来るのには理由がある。弊誌には,「フリー・プログラマの華麗な生活」という1ページのコラムがあり,実際にフリー・プログラマとして活躍している中條達雄氏に,その暮らしぶり,仕事ぶり,日々の雑感などをつらつらと書いてもらっている。

 実はこのコラム,弊誌の中では隠れた人気連載なのだ。たった1ページの記事にもかかわらず,弊誌の看板であるプログラミング技術の連載記事より,読者のスコアが高い回もあったりして,連載担当の編集者が頭を抱えている。しかし,内容が面白いからそれも仕方がない。

 プログラマとして仕事や対人関係で苦労する話は,多くの読者の共感を得る。税金の申告や健康保険などで困ったといった自由業ならではの話もある。また,趣味である料理(うまいご飯の炊き方とか)へのこだわりも面白い。仕事がない時に,公園でぼーっとしていたら,ホームレスのおじさんにイチゴをもらったという涙と爆笑の回もあった。そうかと思うと,夜の街で仲良くなったキャバクラ嬢,おかま,おなべとの心温まる交流といった弊社の他誌ではめったに読めない話もある。

 中條氏は,最初からフリーだったわけではない。ちゃんとした会社にプログラマ/SEとして就職し,徹夜の連続で10円ハゲが出来るほどの激務などを経験して,5,6年前に独立した。フリー・プログラマ仲間とギルドのようなコミュニティを構成して,主にWeb系開発(サーバーサイド)の仕事を請け負っている。とはいえ,決して裕福ではない。それどころか,ときどき仕事がなくて困っている話も聞く。が,独立して後悔している様子はみじんもなく,浮き沈みのある生活を楽しんでいるように見える。

 私は,ソフトウエア技術者として幸せな生き方とはどんなものだろう,と常々考えており,そうした特集記事を書いたことがある。そのため,私から見て幸せそうなソフト技術者に会うたびに,どんな生き方をしてきたのかと聞く。しかし,一定の解が導き出されることはない。中條氏の場合も,彼の人柄や技術力に加えて,信頼できる人達との出会いや,仕事の巡り合わせといった運があったようだ。

 先日,新年会を兼ねて,中條氏と久しぶりに飲む機会があった。池袋の駅前で待っていた彼は,黒の上下のトレーナー,あちこち角のようにとがった赤い髪,両耳には派手な銀のピアス,といったいでたちで我々をひるませた。年齢は40歳をとうに過ぎているのだが,外見は池袋をたむろする若者達と同じだ。

 仕事の打ち合わせをしてきた帰りだと言う。「その格好で?」と聞くと,「この歳になると,誰も“その格好はおかしい”っていさめてくれないんですよ。みんな近づかないし」と笑う。

 13歳があこがれる対象としてふさわしいかどうかは分からないが,幸せなソフト技術者の一つの生き方だと個人的には思う。ITブームに乗っかって就職したとしても,その後楽しく生きる方法はいくらでもあるのだよ,中学生諸君!

(道本 健二=日経ソフトウエア副編集長)

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