図1●「ENUMは普及すると思うか」に対するIT Pro読者へのアンケート結果

 2003年10月22日付けの記者の眼で,「電話番号からメール・アドレスなどを調べるENUMは“来る”と思いますか?」という記事を公開させていただいた。その記事の中でアンケートを行った結果,500人近いIT Pro登録読者の方に答えていただいた。今回は,この結果を報告させていただこうと思う。

 アンケート内容は「あなたはENUMが普及すると思いますか?」という質問に対して,「普及すると思う」「普及するとは思わない」「分からない」という3つの選択肢を選んでもらうもの。477人の回答で一番多かったのは,「普及するとは思わない」を選択した人だ。7割以上の340人にもなった(図1参照)。

 一方,「普及すると思う」と答えた人は,全体の約16%,人数にして78人しかいなかった。私が書いた記事自体に,ENUM普及に懐疑的な論旨が読みとれたためという理由を割り引いて考える必要はあるが,「普及すると思う」人は少ないと言って良いだろう。

強い電話番号公開への危ぐ

 選択式アンケートの回答とともに書き込んでもらった自由意見を見ると,普及しない理由も見えてきた。

 「問題は誰にとって“便利だから”ということでしょうか。ネット利用の圧倒的多数を占める一般ユーザーにとっては必要がない技術であって,プライバシ保護の観点からも容認できないと思います」という意見に代表されるように,ENUMには一般ユーザーにとってのメリットより,電話番号という個人情報が勝手に公開されてしまう危ぐの方が大きいのが,普及しないと予測する最大の理由といえる。

 この点をもう少し掘り下げてみよう。ユーザーにとってのメリットがあるかどうかという点については,意見を書いてくれた方の中でも割れている。

 ENUMが普及しないと答えた人でも,「発想としては非常に面白く,興味深い」「あるべき方向性だと思う」「イエローページ的な普及はあり得る」など,メリットがあると考えている人は意外と多い。また,「iモードのような携帯電話機のユーザー間なら,電話番号でメールを送れるようになって便利になるのではないか」といった具体的な意見もあった。

 逆に,普及すると答えた人の中でも,「セキュリティが心配」「スパム・メールが増えるのではないか」といった不安要素を挙げる意見は多く,「企業の電話番号のように,すでに一般に公開されている情報だけを扱う限定的な普及」を予想した人が何人もいた。

 また,「e164.arpaではなく,○○○.jpのようなドメイン名にして,複数のサービス提供者が競合すれば付加価値を持ったより良いサービスになるのではないか」のように今後の可能性を示唆する意見もあった。電話番号をキーにするのではなく,電子メール・アドレスから電話番号が調べられる「逆引きがほしい」という意見には同意する人も多いだろう。

サービス提供者による啓蒙が必要

 いずれにせよ,ENUMを実際に普及させていこうと考えているサービス提供者側が,もっと積極的に情報を公開して,ユーザーがセキュリティ面に不安を抱かないようにする必要がある。

 なお,「」で引いた部分は,いずれも「公開してよい」と回答いただいた方の意見である。勝手ながら,内容が変わらない程度に文章に手を加えさえていただいた。公開可のご意見は「普及すると思う」「普及するとは思わない」「分からない」に分けて,別ページに掲載した。参考にしていただきたい。最後になってしまったが,アンケートに回答していただいた多数のIT Pro読者の方に感謝したい。

(三輪 芳久=日経NETWORK副編集長)