「もっと踏み込んだ提案書を出してくれないか」「これじゃあ,単なる製品紹介じゃないか」――

 日経ITプロフェッショナル11月号(11月1日発売)の巻頭特集「ユーザー視点で提案力を磨く」の取材で,とある中堅ITベンダーのSEマネジャー,A氏のもとを訪れた。その会社は,高い競争力を誇る外国製のサーバーやデータベース・システムを中心に取り扱うことで,90年代に急成長を遂げた。A氏も提案を行う際に,そうした製品を全面的に押し出し,機能や性能の優位性,導入事例などを訴えることで数々の契約を勝ち取ってきた。

 ところが,2000年を過ぎたころから,A氏の提案に対して厳しい評価が下されるようになったという。冒頭のコメントは,その際にユーザー企業からA氏に寄せられた苦言だ。A氏は,「データベース・システムを提案するにしても,全社的なデータ統合や活用方法,取引先や関連会社とのデータ連携までを提案に盛り込まなければ評価されなくなってきた」と話す。高度化・複雑化するユーザー企業の要求と,単なる製品紹介に過ぎないA氏の提案書の間には,大きなギャップが生じていたのだ。

 ユーザー企業は実際にどんな視点で提案書を評価しているのか。それを確かめるべく取材を重ねたところ,ユーザー企業が敬遠する“ダメな提案”の典型パターンが浮かび上がった。ここではそのうちの3つを紹介しよう。

●ダメな提案例(1) 「自社の製品やサービスを押し付ける」

 ユーザー企業が最も“うんざり”するのが,A氏のように自社の取り扱う製品やサービスを一方的に紹介する提案だ。ユーザー企業の置かれている状況などお構いなしに製品の資料やパンフレットをテーブルの上に並べ,極端に言えば「さあ,どれにしますか?」と話し出すパターンである。

 ユーザー企業が提案に求めるのは,自社の課題が何かをきちんと整理し,それをどのようにして解決するかを示してもらうこと。「課題構造」が一般的で抽象的な製品パンフレットや,それに近い提案書はユーザー企業から敬遠される。

●ダメな提案例(2) 「明らかに使いまわしと分かる」

 これもユーザー企業が嫌う典型パターンである。あるユーザー企業の担当者は,「前の顧客の名前がそのまま残っている提案書を受け取ったことがある」と言う。