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「西暦2007年問題」の解決策を募集します

2003/04/09

 今回は非常に難しい問題を提起してみたい。残念ながら解決策を筆者は持ち合わせていない。ぜひ多くの読者の方々が意見を持ち寄って,対策を考えていただければと思う。「いや,そんな問題は当社にはない」という反論も大歓迎である。

 話は比較的単純である。「企業の情報システムを支えてきたベテランSEが続々と引退している。このため,情報システムがブラックボックスになりつつある」ということだ。

 CSKの有賀貞一副社長は,情報システムにおけるベテラン引退問題を,「西暦2007年問題」と呼んでいる。「2007年には,1947年生まれが60歳になる。団塊の世代でもっとも人数の多いのは1947年生まれと言われている。このため日本の情報化を担ってきた人材は1947年生まれとその前後に集中している。彼らがほぼ完全に引退する時期が2007年だ」

 もちろん,2007年問題は2007年にだけ起きるわけではない。問題はすでに発生している。昨年から今年にかけて相次いで起きている基幹系システムのトラブルの背景には,基幹系の中身を熟知したベテランの不在があるとみてよい。

 典型例が昨年起きた都市銀行のシステム障害である。筆者は昨年5月に発刊した「システム障害はなぜ起きたか みずほの教訓」という本で次のように書いた。

 「(基幹系システムの)老朽化と肥大化がここへ来て,深刻になった原因は,企業情報システムの規模と複雑さと範囲が,その企業が自分で管理できる限界を超えつつあることだ。しかも,複雑なシステムの全体像を見渡せる人材が減少しつつある。これが一連のシステム障害の底流にある大問題である」

 「(複数の都市銀行が)口座振替プログラムという,基本の中の基本でつまづいたのは,ブラックボックスとまではいわないまでも,口座振替の基本的な仕組みを分かっている技術者が現場に少なくなっていることが遠因である」

 実際,都銀のシステム統合のさいに,口座振替プログラム部分を担当していたメンバーは若手だったり,さほど詳しくないSEであった。障害が起きて初めて,「すでに退職していたり,関連会社に移籍していた分かるSEを動員した」(関係者)。

OBに聞かないと分からない

 これも昨年の話である。ある会合で,ベテランSEの引退問題について説明したところ,会場にいた若いSEから話かけられた。彼は日本を代表する大手製造業の社員で,基幹系システムの再構築プロジェクトにかかわっている。

 彼の話はこうである。「過去のシステムに関するドキュメントは残っていますが,実際に作ったわけではない我々が読んでも完全には理解できません。この間,システム部門OBの懇親会がありました。私はこれだ!と思って若手の部下を引き連れ,ドキュメントを抱えて懇親会に押し掛け,その場で大先輩をつかまえて,解説してもらいました。これで,ようやくプロジェクト・メンバーの理解が進みました」

マスターの保守ができない

 数年前,サプライチェーン・プラニング・ソフトを販売している企業の社長に聞いた話である。同氏によるとサプライチェーン・マネジメントが進まない大きな理由として,「顧客企業が自分の基幹系システムを修整できない」ことを挙げた。

 「サプライチェーン・マネジメントをするときに肝となるのは,製造業でいえば部品表。ところが,多くの企業で部品表は20年以上も前に作られている。このため,だれもさわれない。したがって新しい試みができない」(サプライチェーン・ソフト会社社長)

 ある顧客企業は,担当の大手コンピュータ・メーカーに部品表の修整を依頼した。ところが,メーカーも協力ソフト会社に仕事を丸投げしてきており,メーカーの中にも分かる人がいない。ようやくその部品表を開発したソフト会社を探し当てたが,忙しいという理由で協力を断られた。結局,サプライチェーン・マネジメントのプロジェクトは頓挫したという。

ベテランSEには力があった

 ここで我が国のコンピュータ導入史を振り返ってみよう。企業の多くがコンピュータ導入に踏み切ったのは,1960年代の後半からである。そのとき第一線でコンピュータ導入を担った若手は今,60歳に近づきつつあるか,すでに引退している。

 30年近く経ったとはいえ,彼らが作った基幹系システムはまだまだ動いている。たとえシステム自体は作り直されたとしても,業務の流れや処理の仕組みそのものはあまり変わっていない。このため最初に設計したベテランが基幹系システムの中身について一番詳しいことが多い。また口座振替プログラムや部品表といった重要だが地味な部分は,ずっと同じベテランが保守を担当していることが多く,後継者を育成できていない。

 引退しつつある第一世代は強力であった。「初めてコンピュータを入れたとき,たいていの企業は現場の業務に詳しく,論理的な思考ができる若手を集めた。彼らに無理やりコンピュータの基礎と開発言語,そして事務処理の流れをえがく手法を教え込んだ。つまり業務知識,IT,分析手法,そしてプロジェクト経験のすべてを兼ね備えた人材が創られた」(有賀副社長)

 これに対し,彼らに次ぐ世代は最初から情報システム部門の要員として配属された。一概には言えないものの,どちらかといえば,システムの専門家が多い。しかもゼロからシステムを作るというよりは,先輩が作った基幹系システムを改良したり,追加のシステムを作る仕事が多かった。

 それでも高度成長の時代は次々にシステムを作るプロジェクトが生まれ,経験は積めた。しかしバブル崩壊後,情報システム部門の予算と人員は縮小される一方で,プロジェクトの件数も減った。

 にもかかわらず,企業には長年にわたって拡張と保守を続けてきた巨大な基幹系システムが現存している。パッケージ・ソフトへ完全に移行できた顧客企業はほとんどない。必ずなんらかの旧システムは残っている。そしてその中にだれも分からないブラックボックスができつつある。

 この西暦2007年問題については,日経コンピュータ誌日経ビジネスEXPRESSBizTechでも取り上げた。ビジネスパーソンやITの専門家の方々から意見をいただくためである。

 だが解決策を考えられるのは,やはりIT Proの読者であろう。ぜひともご意見をお寄せください。

(ご意見は,下の「Feed Back!」欄をご利用いただくか,電子メールでiteditor@nikkeibp.co.jpあてにお送りください。メールの場合には題名に「2007年問題係あて」とお書きいただければ幸いです)

(谷島 宣之=ビズテック局編集委員)

■筆者のコンテンツを集めたページ「谷島 宣之の情識」もぜひご覧ください。

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