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記者の眼

「落としどころ」が見えないADSL干渉問題の行方

松原敦 2003/01/20 ITpro

 2002年夏に始まったDSLのスペクトル管理問題をめぐる騒動が,いまだに収束しない。先週の金曜日(2003年1月17日)に開催された情報通信審議会のDSL作業班第2回会合では,Yahoo! BBを提供するソフトバンクBBの孫正義社長が,同社の12Mビット/秒サービス提供に「強制的に(第2グループの)制限が付けば私は暴発する」(“第2グループの制限”については後述)と発言するなど,不穏な状況が続いた(関連記事)。

 騒動が始まってからすでに半年が経過している。まずはこれまでの経緯をまとめておこう。

TTCでの審議手続きをソフトバンクが糾弾

 電話線のケーブルは多数の電話回線を束ねた形になっている。その中での電磁波による干渉の影響を抑え,サービスが共存できるようにするための取り決めがスペクトル管理である。日本ではTTC(情報通信技術委員会,当時の名称は電信電話技術委員会)が2001年11月に「JJ-100.01」という標準を策定した(関連記事)。

 一方,BBテクノロジー(現在のソフトバンクBB)が12メガ・サービス「Yahoo! BB 12M」を発表したのが2002年6月(関連記事)。TTCの検証を受けずに実回線で実験していたことが判明してから話がこじれ出した。7月にはJJ-100.01改訂案の草案としてイー・アクセスがYahoo! BB 12Mを第2グループに分類し,両者の対立が決定的になった(関連記事)。8月にはBBテクノロジーがイー・アクセスの小畑至弘CTOを提訴(関連記事),Yahoo! BB 12Mを検証を経ぬまま本サービスに移行させるなど,さらに話はこじれていった。

 実際のところTTCにはJJ-100.01を強制する権限はなく,その審議の方法も密室性が高かった。JJ-100.01の内容がどうというより,その手続きが不完全だったと言える。BBテクノロジーはその点を強く糾弾し,TTCでの審議は中断。Yahoo! BBはその間に12メガ・サービスでユーザー数を大きく伸ばすことになった(関連記事)。

 一方で,東西NTTはDSLに関する接続約款を2002年12月に変更。JJ-100.01を接続の条件にした(関連記事)。その結果,JJ-100.01で分類が決まっていない方式(Yahoo! BB 12Mを含む)は2カ月経ってもそのままの場合,第2グループという分類になる。

 第2グループの回線についてはDSL事業者が東西NTTに支払う回線接続料が月額899円上がる(通常のADSL回線の場合,接続料は30円前後)のに加え,ケーブル内で同一カッド(2本の電話線を対にしたもの)の回線を他の線に移行するための工事費1万3200円の負担も必要になる。低価格のADSLサービスにとっては致命的な負担になる(関連記事)。

 これらの騒動に対し,総務省は静観を続けてきたが,2002年12月にようやく腰を上げ,スペクトル管理の原則に関してはTTCでなく,冒頭のDSL作業班で策定する方針を打ち出した。12月16日に第1回の会合が開かれたが,メンバーの人選を巡って「TTCと変わらない」と孫社長が繰り返し主張(関連記事)。12月内に予定されていた第2回会合は,冒頭で述べた1月17日に延期されたのだった。

実データの重視では多少の歩みより

 第2回会合では,ソフトバンクBBの要望が通った形でメンバーは4人入れ替え。米ベンダーなどから新たに参加者が入った。

 議論の焦点の一つは,JJ-100.01で使われていた干渉の影響を計算するためのモデルの妥当性である。ソフトバンクBBは,実際の回線におけるデータを最重視するよう強く主張。実際にYahoo! BBのユーザーで上りが200kビット/秒以下,下りが2Mビット/秒以上と,極端に上りが遅いユーザーすべてを調査した(東日本分)。

 上りが遅いユーザーのデータを出したのは,「Yahoo! BB 12Mの『オーバーラップ』方式が他のADSLの上り回線に影響する可能性がある」ことが問題になっていたからである。ソフトバンクBBは,調査の結果,上りが異常に遅いユーザーは567と東日本81万のわずか0.07%だと指摘。さらに567回線の中で同一カッドにYahoo! BB 12Mが入っていたケースは1回線だけ。「これ以上の議論は不要」と言い切った。

 これに対し,NTT東日本も,「シミュレーションに意味はある」とJJ-100.01の妥当性を主張しながらも「モデルの妥当性は最終的に実データとの整合性で検証すべき」と実データを調べることへの反対は唱えなかった。

 モデルの妥当性を調べるための実データでの検証は,今後の議論の進展には不可欠なものだろう。他のADSL事業者も調べるべきだと思う。ただ,ソフトバンクBBのデータはそもそも接続できずにユーザーになれなかった回線は含まれていない。0.07%という数字だけを鵜呑みにはできない。

ソフトバンクBBはあまりに強硬でないか

 第2回会合では,「実データの重視」という点で多少の歩みよりが見られたものの,これで事態が進展するかというと,そう楽観はできない。特に冒頭の発言でも見られるようにソフトバンクBB側の発言は,やや高圧的であったり,相手をやり込めようとする点が目立った。

 さらに日本向けの仕様であるAnnex Cに関しては,ソフトバンクBBはWTO合意まで持ち出し,「日本独自のAnnex Cが国際標準であるAnnex Aより優遇されてはならない」との主張を繰り広げた。それだけでなくAnnex C廃止をITU-Tに提案。それについては,提案提出に「合意した」,「合意していない」という点で総務省やNTT東日本と根本的に対立した。

 TTCの不備な点など,ソフトバンクBBの一連の主張にはうなづける点もあり,このように公開の場で議論されるようになったことは一つの進展であろう。しかし,あまりに自説だけに固執するのでは,合意までの道筋は見えない。議論の長期化は,今後のさらなる高速サービスの導入も遅らせる。結局,「ツケ」が回るのはユーザーなのである。

(松原 敦=日経コミュニケーション副編集長)

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