日経コミュニケーションでは,12月2日号に「856社が選んだプロバイダ満足度ランキング」を掲載した(調査の名称は「企業のインターネット・プロバイダ利用実態調査」)。9月末から10月末にかけて,全国の2800社にアンケートを送付し,856社から回答を得た。その結果,満足度とシェアでランキングに大きな違いが出た。

法人顧客はIIJがお好き

 満足度のランキングでは,ブロードバンド,専用線接続,ダイヤルアップの3部門で,インターネットイニシアティブ(IIJ)がトップとなった。IIJはここ数年,高い満足度を得ている。唯一Webサーバーのホスティング・ハウジング部門のみ,NTTPCコミュニケーションズがトップだったが,ここでもIIJはわずか0.3ポイント差で2位だった。

 この他のプロバイダでは,パワードコムとJENSの健闘が目立った。専用線接続部門で,それぞれ2位と3位に入っている。前者は,料金,安定性,スループットへの評価が高く,後者はバックボーンや運用体制に対する評価が高かった。

 一方シェアで見ると,全く様相は違ってくる。企業数ベースでのシェアは,ブロードバンドと専用線はNTTコミュニケーションズ(NTTコム),KDDI,日本テレコムの“キャリア系御三家”が1,2,3位を独占。ダイヤルアップも,ニフティ,NTTコム,NEC,KDDI,日本テレコムの順で,キャリア系とメーカー系が上位を独占する結果となった。

 社員も多く営業力もある事業者のシェアが高いが,顧客の心をつかんでいるのは比較的小規模で小回りのきく事業者・・・という図式は,ここ数年変わっていない。特 にIIJの場合は,「“あの”IIJと契約している」という事実だけで、顧客が満足して しまっているのではないか,と勘ぐりたくなるほどの評価の高さである。

ADSLを利用する企業が激増

 一方,今回大きく変わったのは,企業のブロードバンド・サービスに対する考え方だ。何らかの形でブロードバンド回線を利用している企業は,全体の48%にもなる。[「主要な回線として利用している」と回答した企業も,専用線などを含む常時接続サービスのユーザー全体の34.6%に上った。昨年は10%に満たなかったから,この1年で激増したわけだ。

 特に増えているのがADSLのユーザー。主にADSLを利用していると回答した企業は,7.2%から22.1%になっている。一般ユーザーまで含めたブロードバンド・ユーザーは,CATVインターネットを加えても,総務省が11月29日に発表した速報値で662万9575(10月末時点)。インターネット・ユーザーは約5000万人と言われているので,“ブロードバンド比率”は多めに見ても13%程度。速度の割に料金の安いブロードバンド・サービスに,企業がわれ先にと飛びついた様子がうかがえる。

 ADSLユーザーの中では,下り1.5Mビット/秒のサービスを利用している企業が43.1%を占める。続いて8Mが29.2%,12Mはまだ始まったばかりのせいか0.4%だった。この調査は9月末から10月末にかけて実施したので,現在はもう少し速度の速いサービスを利用する企業が増えているかもしれない。

  面白いのは,導入時に何を重視するかを尋ねた設問だ。これまでどのサービス部門 でも,ほぼ「利用料金」がトップだった。それが,今回初めて専用線ユーザーでは「サービスの安定性を重視する」がトップになった。これに対して,ブロードバンド・ユーザーでは,案の定「利用料金を重視する」がトップだった。

 断っておくが,専用線ユーザーでも,料金を重視するという回答が大きく減ったわけではない。しかし料金を重視するユーザーはブロードバンドに“転向”し,安定性を重視するユーザーは専用線を使う,という傾向がはっきりと現れた。

ホントにネットを使いこなしているか

 私個人は,この結果は少々予想外だった。「大半の企業はこの程度の回線で足りているんだなあ」といのが正直な感想だ。私は日経コミュニケーションにこの7月に異動してきたが,一番驚いたのがADSLやダイヤルアップ接続を利用する企業の多さだった。私のそれまでの感覚は「ダイヤルアップやADSLは個人向け,企業は専用線か,せめてFTTH」というもの。異動前は日経ネットビジネスに在籍していたので,大きな話ばかり聞かされて耳がインフレを起こしてしまったのかもしれないが。

 もちろん,小規模な事業所などにも専用線を引いていたのでは,コストが合わないのだろう。それは分かる。しかしそういう拠点間こそ大容量回線で結んで,一緒のオフィスにいるかのような環境を作る,というのがネット化の本来の目的だったんじゃなかったのかなあ,とつい思ってしまうのだ。やはりコストの壁は高いのか,それともネットワークを便利な電子版ファクス程度にしか考えていないのか。えっ,そういうお前の部署はどうだって?それは,聞かないで下さい・・・
 
(本間 康裕=日経コミュニケーション副編集長兼編集委員)