見えないメール,速いメール,消えるメール,スンドメール――。これらは全部ソースネクストという会社の製品名だ。同社はパソコン・ユーティリティ・ソフトの開発・販売を手がける会社。驚速や特打シリーズと聞けば,知っている人もいるだろう。

 特定の会社を取り上げるのが本意ではないのだが,「実際はどんなものなの?」と調べてみたら,これがなかなか面白かったのでご紹介しよう。皆さんも,メールに関する知識をチェックする“頭の体操”のつもりで,ご一緒に製品名の由来を考えていただければと思う。

送ったメールを消すことはできるか?

 まず,「見えないメール」。これは,勘のいい人なら想像できるかも知れない。答えは暗号化メール・ソフトである。

 では「速いメール」とは? これが想像できれば,かなりの人。でも,実際が分かると何のことはない。添付ファイルなどを自動で圧縮してくれるだけである。圧縮されればデータが小さくなるので,その分,電子メールの送信や受信時間が短くなるというわけだ。

 ここまでは,まあ初・中級レベル。でも,「消えるメール」と「スンドメール」の中身が想像できる人は,電子メールの仕組みを熟知したうえで,どうすればそんなことが実現できるかを考えられる,プロ級である。

 「消えるメール」とは,「送信後一定時間経ったり,受信者が何回か受信メールを表示させたりすると,自動的に消える」メールだとソースネクストのWebサイトで説明されている。電子メールの仕組みからすると,メールは送信元パソコンから出たあとは送信者の制御はきかず,受信者が消去するまで受信メールは消えないはず。つまり,普通に考えただけでは,原理上あり得ないのである。

 で,どうなっているかというと,カラクリはHTMLメール[用語解説] 。メール本文は同社のWebサイトに送られ,受信者がメールとして受け取るのは,リンク先の情報だけになる。受信者のメーラーはリンク先の情報を読み取ってWebサイトにアクセスしてメール本文を表示する。そして,一定時間経ったり,何回かアクセスがあったら,Webサイトのメール本文データが削除される仕組みだ。これで送信者の意図通りに,送信メールを消せるのである。

送信したメールをなかったことにできるか?

 では最後の「スンドメール」に話を移そう。送信したメールを寸止めするところから命名されたスンドメールは,ユーザーが誤って送信してしまったメールを,相手に届く前に止めるソフトである。

 消えるメールと同様に電子メールの仕組みから考えると,実現不可能のように思える。こちらのカラクリは,送信側に仮想メール・サーバー・ソフトを組み込むことで実現する。つまり,メーラーの送信ボタンを押すと,ローカルで動いている仮想メール・サーバーがいったん受け取り,一定時間,保管してから,送信メールを転送する。仮想メール・サーバーにたまっている間なら,いつでも送信メールを削除できるというわけだ。

 カラクリが分かってしまうと,大したことはないと思うかも知れないが,皆さんはこれらの製品名から,カラクリが想像できたでしょうか? ソースネクストには,これからも面白い名前の製品を期待したいものです。

(三輪 芳久=日経NETWORK副編集長)