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記者の眼

ペース・メーカーの利用者には事実を伝えるべきだ

市嶋洋平 2002/08/28 ITpro

 最近読者から,「電磁波の人体への影響について調べてほしい」という要望のメールが日経バイト編集部に寄せられるようになった。

 筆者も個人的に携帯電話の電磁波影響には興味を持っていた。自宅の隣のマンション屋上に,いきなり携帯電話の基地局ができたからだ。寝室の窓を開けるとアンテナがすぐ近くに見える。総務省や携帯電話事業者の「安全基準にのっとって設置しているので大丈夫」という説明を聞いても不安は拭いきれない。

 そこで携帯電話などが発する電磁波の影響について,どこまで何が分かっているかを調べてみることにした。機器と人体の両方に関して,電磁波がどのような影響を及ぼし得るか,多くの研究者から話を聞いた。詳細は日経バイト2002年9月号特集「電磁波影響の研究」に譲るとして,取材を進めていくなかで考えさせられたことがあったので,ここで私見を述べたいと思う。ペース・メーカーに対する携帯電話,PHSの電波の影響である。

124機種のうち8機種のペース・メーカーが誤動作

 電車内で携帯電話の利用自粛を求めるアナウンスは定着した感がある。この自粛要請が徹底されているのは,周りの乗客への迷惑だけでなく,満員電車内で携帯電話を利用するとペース・メーカー利用者に悪影響を与えるという問題があるからだ。このあたりは,よく知られていることだろう。

 筆者は電車内で携帯電話を利用したことで,ペース・メーカー利用者がトラブルに巻き込まれたという話を聞いたことがなかった。そこで厚生労働省やJR東日本,ペース・メーカーの開発元に尋ねてみた。回答は「問題が起こった事例はない」というものだった。

 ただし,ペース・メーカーを装着している利用者の立場に立つと携帯電話が大きな不安要素であることは紛れもない事実である。誤動作するという試験結果が出ているからだ。

 総務省や厚生労働省,メーカー,携帯電話事業者などは2000年から2002年にかけて共同で「電波の医用機器等への影響に関する調査結果」という調査作業に取り組んでいる。7年前に不要電波問題対策協議会(現電波環境協議会)が1回目の調査を行って以来2度目の大規模な調査である。対象となったペース・メーカーは124機種である。

 もっとも普及している800MHz帯を使うPDC方式の携帯電話端末で試験した場合,誤動作したペース・メーカーは124機種のうち8機種だった。実験時のペース・メーカーと携帯電話の距離は5cmである。この距離を10cmまで広げるとその数は2機種に減り,さらに15cmまで離すと1機種だけになった。そして15cm以上の距離で誤動作した機種はなかった。調査結果によって得られた「15cm」という境界となる距離に安全係数の√2をかけた「22cm」が,携帯電話とペース・メーカーの間の“安全な距離”の指針とされている。

試験対象の機種名が明かされていない

 このように携帯電話をペース・メーカーの近くで利用すると,特定のペース・メーカーでは誤動作が生ずることは確認されている。だが,どの機種で誤動作が生じたかという情報だけでなく,調査対象の機種名もメーカー名も明らかにされていない。「公開することによって調査に参加しなくなるメーカーが出てくる可能性がある。また,利用者に余計な不安を与えたり,逆に安心して近づけすぎて問題が起こらないとも限らない。22cmの指針を守ってほしい」(厚生労働省医薬局安全対策課)という。

 確かに,これらの情報を公開することによるデメリットはあるのだろう。だが,これからのことを考えると,利用者が望むなら,自分が使っている機種の実験データを入手できるようにするべきではないだろうか。

 筆者がそう考えるのは,ペース・メーカーに影響を与える電磁波の発生源がどんどん増え続けることが予想されるからだ。例えば,万引きを防止するため店の入り口に設置したゲートが出す電磁波が,ペース・メーカーを誤動作させてしまうという報告が出始めている。また,強力な磁石で牌をそろえる全自動麻雀卓も誤動作を引き起こすことがあるという。

 万引き防止ゲートに関しては,ペース・メーカーの業界団体が中心となって誤動作の検査作業を今年の5月から開始している。現状は,こうした活動によって発生源ごとに「安全な距離」を作って公開するという格好になりそう。しかし,情報の非公開が続く限り,利用者の心配はなくならない。「安全な距離」は試験に参加した機種の利用者しか保証しないが,利用者は自分のペース・メーカーが実験に参加したものかどうかを調べることが出来ないのだ。

 誤動作の生じた機種の名前を明らかにするのが難しいのなら,せめて,試験したすべての機種名を明らかにし,利用者の不安を取り除くように配慮すべきと思う。

電源オフ車両の必要性

 車内で電磁波の影響を受けるのはペース・メーカーだけではない。補聴器もそうである。補聴器の開発/販売最大手のリオンによると「近くにある携帯電話の電波がブーンという雑音を発生させ,外部の音を聞き取れなくしてしまう場合がある」という。このトラブルは日常的に生じているようだ。

 この問題は,携帯電話の利用場所を制限すればある程度緩和できる。例えば,ほとんどの鉄道会社は「混雑時には携帯電話の電源をお切りください」と車内でアナウンスしている。東京急行電鉄のように,偶数号車では携帯電話の電源をオフに,奇数号車ではマナー・モードにしてくださいと決めて運用しているところもある(同社のページ)。もちろん,最終的には乗客のマナーに頼らざるを得ない。

 マナーやルールを徹底させるという点ではJR東日本などが運行している女性専用車両がいい例となるのではないだろうか。例えばJR埼京線は,最後部1両を深夜帯に限って女性のみが乗車できる専用車両としている。車内アナウンスは徹底しており,大きな駅では専用車両の乗車位置にガードマンが立っている。これにならって,1両限定で携帯電話の電源を絶対にオフにする車両を設定するのはどうだろう。望む人は少なくないように思うのだが・・・。

 ちなみに,筆者は取材するまで携帯電話の車内利用について,「電源をオフにしなくても,使わないようにすれば問題ないのでは?」と思っていた。だが,それは誤りだった。確かに待機時に基地局とやり取りする電磁波の強度は小さいが,着信時に跳ね上がるのだ。待機時に比べ1桁,ときには2桁も高くなる。これは,実際に測定してみて分かった。やはり,携帯電話の電源をオフにする「電源オフ車両」が必要ではないだろうか。

(市嶋 洋平=日経バイト)

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