7月ごろから,公称スループット90Mビット/秒前後を標榜するブロードバンド・ルーター(BBルーター)が相次いで登場してきている。コレガのBAR SW-4P,プラネックスコミュニケーションズのBRL-04B,マイクロ総合研究所のNetGenesis SuperOPT90などである。

 メーカーが独自に測定した公称値をそのまま鵜呑みにはできないが,90Mビット/秒といえば現行のADSL回線(最大8Mビット/秒)の10倍以上にもなる。ADSLで使うなら,さすがにもうルーターがボトルネックになりそうもないが,実際のところはどうか調べてみた。

最小フレームの転送でも8Mbps超

 メーカーがうたっている公称スループットは,FTPによるダウンロード・テストから算出していることが多い。このFTP転送テストでは送受信される平均フレーム・サイズが大きいので,高めのスループット値が出やすい。

 ルーターの真の性能は,パケット転送速度(パケット/秒)を見れば一発で分かる。プロ向けのルーターやスイッチング・ハブ(LANスイッチ)では,おなじみの性能指標だ。マイクロ総研のSuperOPT90だけは,このパケット転送速度も公開されている。それによると,パケット転送速度は1万7680パケット/秒。これを基にスループットを算出すると,最小フレーム・サイズである64バイトでも約9Mビット/秒(64×8×17680)に達する。従って,8Mビット/秒のADSL回線で使うなら,十分と言えるだろう。

ADSLモデム直結よりも高速

 さらに,パソコンとADSLモデムを直結してインターネットへアクセスするより,BBルーターを経由させた方がスループットが高まるという,うれしい誤算もあった。

 パソコンとADSLモデムを直結する場合,PPPoEの処理,つまりPPPフレームを作成してそれをイーサネット・フレームで包む作業をパソコンが処理する必要がある。しかし,BBルーターを介せば,PPPフレームを作成する作業はルーターが行い,パソコンは単にイーサネット・フレームを組み立てるだけで済む。

 従来のBBルーターは搭載するCPUが非力だったので,PPPフレームの組み立てに手間取り,パソコン直結の方が速かった。しかし,90メガ級のBBルーターは動作周波数が200MHz前後と高速なCPUを使っており,パソコンでPPP処理をさせるより,オーバーヘッドが減って高速になるという。

 ここまで来ると,BBルーターの高速化競争は一段落しても良さそうだが,「当分,高速化の流れは止まらない」とメーカー側は口をそろえる。まだまだ,BBルーター用のCPUが高速化するからである。次のターゲットは64バイトの最小フレームでも100Mビット/秒を出すこと,いわゆる“ワイヤースピード”の達成である。

(三輪 芳久=日経NETWORK副編集長)