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家電製品,ユーザー・インタフェースに問題あり

2002/06/21

 HDDビデオ・レコーダーがホットな市場を形成しつつある。見逃したシーンをちょっとさかのぼって見直したり,手が放せない用事ができたときに,その時点でストップさせておけるタイム・シフト再生などが自在にできるメリットが受け,サッカー・ワールド・カップの観戦を心ゆくまで楽しみたいと大手量販店では6月に入って売れ行き倍増の人気だそうだ。
 
 私も6月に新発売のHDDビデオ・レコーダーを手に入れ,早速その威力を大いに楽しませてもらっている。夜8時スタートの試合を録画開始。仕事から帰れるのはどうしても10時前になってしまうが,帰宅したら,その録画は継続したまま,すぐに試合スタートの場面からじっくり見るなんてことができる。

 ハーフ・タイムの余分な時間は300倍速ですっ飛ばし,すぐに後半戦に。ゴールの瞬間やファウルの場面はちょいと戻し,仔細に見直すことができる。まさに,HDDビデオ・レコーダーならではの楽しみ方である。

 しかし,問題は使い勝手の悪さだ。機能がてんこ盛りだから,できる操作が多くなるのは当然だ。しかし,Gコード予約するだけでもマニュアルを参照しなければ使えない作りには閉口させられる。Gコード予約をする前に,事前に設定しておかなければならないことがあるのだが,画面にはただ単にエラーが表示されるだけ,これではいつまでもマニュアルが手放せない。
 
 リモコンにはスライド・シャッターが付いており,開けたまま「戻る」ボタンでキャンセルさせる場面があるかと思うと,閉めて「メニュー」ボタンでキャンセル動作をさせることがあるなど,同じ「キャンセル」動作に異なるボタンが割り当てられている。ごく普通のVTRでも予約ができないという人が多いと聞くが,こうしてどんどん機能が複雑になる新機種でますます操作が難しくなるのでは,せっかくヒットしそうな商品を埋もれさせてしまうことになりかねない。
 
パソコンで培ったユーザビリティをもっと生かせ

 いろいろな操作をユーザーに分かりやすくフィードバックするには操作ガイドや,直感的に理解可能なアイコンなどをテレビ画面に表示する方法が考えられるが,こうした方法をうまく生かしていないのにはあきれてしまう。
 
 パソコンの世界ではソフトを使うのにマニュアルを見なくても大丈夫なように設計するのが当たり前になっているのに,なぜ家電製品にそうした考え方が浸透していかないのだろうか? 使いにくいのは私が持っている機種だけの特有な問題かと,他のHDDビデオ・レコーダーも調べてみたが,いずれも大同小異。一般の人がこれで使えるのだろうかと心配になるようなものばかりだった。
 
 一昔前とは違い,デッキそのものにもかなり大型の表示パネルを付けられるようになったし,テレビ画面にGUIの操作画面を出す技術も十分にこなれてきているはずなのに,機能が増える分に合わせてボタンの数がどんどん増えていくのは,設計思想そのものになにか大きな抜けがあるように思える。

 ゲーム・ソフトなどは数少ないリモコン・ボタンを有効に使い,ソフト自体に自己説明させる作りになっていることが多い。こうした考え方を家電製品の設計に生かしていかなければ,ヒット商品に結びついていかないだろう。
 
米国では使い勝手の良さが売り物のHDDビデオ・レコーダー

 日本ではこうしてマニアのための商品から抜け出せないHDDビデオ・レコーダーだが,米国では使い勝手の良さを売り物にしている。米国ではこの種の機器はパーソナル・ビデオ・レコーダー(PVR)と呼ばれ,録画予約指定などは画面上の番組表をクリックするだけでできるようになってきている。

 CMをカットして再生する機能や,録画した番組をネットで配信できる機能などを組み込み,ユーザーの注目を集めている。逆にこの機能が普及してしまうと放送が成り立たなくなると,放送局などが出荷停止を求めて提訴するなど,派手な話題作りにも一役になっている。
 
 実際の使い勝手がどうなのか,実機に触ったことがないため,なんとも言えないが,画面構成が分かりやすいとユーザーの声は上々だ。代表的な製品にSONICblue社の「ReplayTV」などがあるが,残念ながら日本ではサービス自体が行われていないため,まだ使えない。何とか実機で評価してみたい機器の一つがこれだ。
 
 この種の家電製品に分かりやすさと簡便さを与えるのは,やはり技術者のユーザーへの思いやりだ。パソコンやWebアプリケーション,あるいはゲーム・ソフトで鍛えられたセンスを今こそ生かす時ではないだろうか?

(林 伸夫=編集委員室 主席編集委員)

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