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記者の眼

DSL新技術の芽を摘むな

中道理 2002/05/08 ITpro

 ADSLは,現在最も成功しているアクセス回線サービスであることは間違いない。サービス開始からわずか1年ちょっとで約230万ユーザーになった。この成功の理由を考えると,電話回線というほとんどの家庭に入っている線を使うことができて,設置が簡単で,料金が安く,通信速度が速いことがあげられるだろう。

 だが一方で,ADSLは電話のように,すべてのユーザーが享受できるサービスではない。電話局から遠かったり,電話回線の品質が悪いと通信速度が落ちる。ひどい場合はサービスを受けられない。

距離を延ばす新方式をアッカとYahoo!が提供

 この問題をADSL事業者はなんとかしたいと思っている。

 Yahoo! BBや長野県協同電算はADSLサービスを提供できないユーザーの救済策として,米Paradyne Networks社独自のReachDSLを使ったサービスを用意している。このモデムを使えば,ADSLの限界距離(線路長5.5km)を大きく超え,9km以上の線路長のユーザーにも対応できる。ただし,速度は上り/下りとも700kビット/秒とADSL(上り1Mビット/秒,下り8Mビット/秒)よりは遅い。

 一方,アッカ・ネットワークスも長距離ユーザー向けのモデムを検討中。米GlobespanVirata社が開発中の「C.X」である。これを使えば,線路長が7km程度に延びる(速度も500kビット/秒程度増速する)。フィールド実験を経て2002年内にサービスを開始する予定である。

 ところが,これらの技術を使ったサービスの提供に“待った”がかかる可能性が出てきた。ADSLにこれらの新技術が強く干渉する可能性があるため,利用に関して制限をつけるべきだという声がADSL事業者やモデム・メーカから上がり始めたのだ。

制限されれば実質上サービスできない

 ことの発端は,電気通信分野の国内標準化団体である電信電話技術委員会(TTC)がスペクトル管理標準を制定したことにある。

 スペクトル管理とは,異なるDSL同士を同じ電話線の束の中で共存させるためのルール。お互いにどのように干渉をするかを調べ,問題があるDSL方式同士は,近づけないようにするというのが基本的な考え方である。ルールの制定は,2000年11月に始まり,2001年11月に「メタリック加入者線伝送システムのスペクトル管理(JJ-100.01)」として標準化された。

 JJ-100.01では,優先して守るべき第1グループと第1グループを守りながら利用する第2グループに分けることが決められた。第1グループはアナログ電話,ISDN,ADSL AnnexA/Cの四つ。第2グループはSDSL,SHDSL,SSDSLである。

 ReachDSLやC.Xは新しい方式なので,JJ-100.01には含まれていない。そこで現在,この二つの方式に対しどのようなルールを規定するかが議論されている。ADSLとの干渉の問題はこの議論の中で持ち上がってきた。JJ-100.01が定める計算方法に従うと,両方式ともADSL Annex C方式と干渉するという結果が出たのである。

 この結果から「新技術は使用に当たって制限を設けるべき」と「干渉の影響はほとんどない。制限をつける必要はない」という意見に分かれた。現在も,論争は続いており,意見が収れんする気配はない。

 もし,「制限をつける派」の意見が採用されれば,JJ-100.01の決まりに沿って,計算で出された距離より遠い場所での利用が禁止される。特にReachDSLは干渉が強いという計算結果がでているので,ReachDSLの特徴である遠距離ではサービスできなくなる可能性もある。

ユーザーのために何がベストか

 両陣営の意見は割愛するが(興味のある方は日経バイト5月号「ReachDSLは悪者か?ADSLとの干渉問題で議論白熱」をお読みいただきたい),記者は両方の主張ともに一理あると思う。ただ,その一方で自らが決めた標準を守ろうと考えるあまり,大局的な議論がなされていないと感じた。「ユーザーのために何が最もよい結論なのか」というところに立ち返った議論がないように思うのだ。

 ReachDSLとC.Xは,ADSLの欠点である距離の問題を解決できる技術である。この芽を摘むことは決してユーザーのためにはならない。なるべくこれらの技術を使える方向で議論すべきだと思う。

 まずは,根本となる干渉の問題。JJ-100.01で定められた計算上干渉が起こるかどうかで議論が進んでいる。しかし,この計算が本当に妥当なのかは,実際のところよく分からない。計算だけでなく,実験し,干渉が起こるかどうかを明らかにしてから干渉を議論する必要がある。計算上干渉すると出ても,フィールドで問題がなければ積極的に使うべきだ。

 一方で,干渉が強く,ADSLに影響を与えるという結果が出たとしよう。この場合も,生かす方向で考えてみてほしい。例えば,「ADSLを優先する。しかし,ADSLでサービスできない遠距離では,ReachDSLやC.Xを認める」という結論もあってもいいのではないだろうか。ADSLがサービスできない離れた場所ではADSL回線はReachDSLやC.Xの回線の近くには束ねられていない可能性が高い。このため ,干渉が起こる可能性はほとんどないといってもいいだろう。

いつまでISDN,ADSLを守るのか

 さらに議論を進めれば,グループ1の方式をいつまで守り続けるのかを考えていく必要があるだろう。あまりにもADSLやISDNを守りすぎると,新しい技術の登場を阻むことになりかねないと感じるからだ。

 今後,C.XやReachDSL以外にも,遠い距離まで伝送できる,または,速度が速い,といった特徴を持つ新しいDSL技術が出てくる可能性は高い。しかし,新技術がグループ1の方式に少しでも干渉を与えるという理由で使えないことになってしまうのでは,技術の進歩の芽は摘まれてしまう。各種DSL方式の利用方法を定めることでユーザーに迷惑をかけないようにする目的のスペクトル管理が,結果としてユーザーが幸せになる可能性を奪うなら,本末転倒ではないだろうか。

(中道 理=日経バイト編集)

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