全国一律1分5円! 3分10円! 3分7.5円!

 市内の電話料金と受け取りかねない,一昔前には考えられないような水準で電話の値下げ競争が続いている。電話といってもNTTなどの従来型の電話サービスではない。2001年秋からホットに値下げ発表が相次いでいるのは,“インターネット電話”である。

 インターネット電話とは,インターネットに接続した端末から,他の端末あるいは通常の電話機と通話するサービスだ。ヤフーによる3分7.5円のインターネット電話「BB Phone」の発表は一般紙でも大きく取り上げられた。その後,NHKなどのテレビ番組でもインターネット電話のミニ特集が組まれるなど,インターネット電話は注目を集めている。同じサービス内であれば,月額基本料のみで通話料は無料というのも魅力だ。

 といっても,インターネット電話は,今までの電話の伝送路が単にインターネットに置き換わったものではない。インターネット電話の利用にあたっては,いくつか気をつけなくてはいけない点がある。

●“IP電話”と呼ぶ人もいるが...

 まず,ここで扱う“インターネット電話”をはっきりさせておこう。よく似た用語に“IP電話”がある。同じ会社のサービスを人によってインターネット電話と呼んだり,IP電話と呼ぶことがあって,まぎらわしいので注意が必要だ。

 総務省は「IPネットワーク技術に関する研究会」を設けて,インターネット/IP電話についての政策提案を取りまとめている。その報告書案(2001年12月26日版)では,

  • IP電話:ネットワークの一部または全部においてIPネットワーク技術を利用して提供する音声電話サービスとする。
  • インターネット電話:IP電話のうち,WWWなどのアプリケーションに利用されているものと同じIPネットワーク(以下では単に「インターネット」とする)を利用するものを,特にインターネット電話とする。
と定義している。

 IP電話は上位の概念で,その一種としてインターネットを使うインターネット電話があるわけだ。インターネット電話ではないIP電話としては,0038のフュージョン・コミュニケーションズや009191のぷららフォン,0060のメディア(本日1月30日よりサービス開始),JENS ipPhone(旧AT&T@phone)などがある。

 これらは,NTTやKDDI,日本テレコム,東京電話(提供:東京通信ネットワーク)などと同じように使える。インターネット電話と同じVoIP(Voice over IP)と呼ぶ技術を用いているが,インターネットのことはまったく意識しないで使える。この記事では,フュージョン・コミュニケーションズなどのインターネット電話ではないIP電話を“狭義のIP電話”と呼ぶことにする。またアナログの加入電話とISDNをまとめて単に“一般電話”と呼ぶ。

◆インターネット電話を知る3つのチェック・ポイント

 インターネット電話がなんであるかを理解するには,一般電話,狭義のIP電話と何が違うのかを押さえるといいだろう。

ポイント1●インターネット接続回線がいる

 まず,インターネット電話ではインターネット接続回線が必要になる。それもADSLやCATVインターネットなどのブロードバンド回線が望ましい。アナログの加入電話回線やINSネット64では帯域が広く取れず,音声品質が悪くなりがちだ。なおかつ,グローバルIPアドレスが必要となる。一部のCATVインターネットでは,グローバルIPアドレスではなく,プライベートIPアドレスが割り当てられることもあるので注意が必要だ。

 一方,狭義のIP電話では,インターネット接続のことはまったく考えなくてよい。一般電話でダイヤルをするときに,たとえば0038といった付加番号をつけて発信すればいいのだ。

ポイント2●月額基本料金がかかる

 二つ目のチェック・ポイントは,月額基本料金がかかるという点。NTT地域会社の基本料金はかかるものの,狭義のIP電話や一般電話では,使わなければ基本的に無料である。

 インターネット電話では,数百円程度の月額基本料金がかかるところがほとんどである。このため,いくらインターネット電話の通話料が安いからといっても,ある程度の通話時間,利用する人でなければ月額料金の分のもとを取れない。通話時間が短ければ,かえって高くついてしまうのだ。

 また,インターネット電話のためにハードウエアが必要なことも多いので,そのための初期費用も覚悟しておかなくてはならない。

ポイント3●まだ一般電話からかけられない

 最後のチェック・ポイントは,一般電話からインターネット電話には,今のところかけられないという点。インターネット電話から一般電話にかけることはできるのだが,逆はまだできないのだ。一般電話では,当然,電話番号によって相互に通話することができるし,携帯電話や国際電話に発信したり,着信できる。

 インターネット電話が片方向なのは,一般電話から呼び出すためのインターネット電話の番号体系がまだ決まっていないからだ。このため他のインターネット電話サービスにかけることもできない。

 こうした問題を解決すべく,上述の総務省の研究会が議論を詰めて,報告書を作成。これを受けて総務省がインターネット電話に対応した電話番号体系を打ち出す予定だ。今年3月には報告書は完成する予定で,今年夏にも,一般電話からインターネット電話にかけることができるようになりそうだ。

 また,これを見越して,すでにインターネット電話サービスを開始しているNTT-MEでは,電話番号が将来代わることがあり得るという但し書きをサービス約款の中に入れているという。

◆インターネット電話を選ぶときのチェック・ポイント

 インターネット電話が,どのようなものか分かったところで,インターネット電話サービスを選ぶにあたってのチェック・ポイントを見てみよう。ついつい料金に目が行ってしまいがちだが,インターネット電話は一般電話や狭義のIP電話と違って,その内実はさまざまである。

ポイント1●ISPは選べるか?

 まず,特定のISPでしか使えないサービスなのか,ISPを選ばずに使えるサービスなのかというチェック・ポイントがある。BB Phoneの3分7.5円を使いたいと思っても,Yahoo! BB専用のサービスなので,ヤフーのADSLサービスを利用していないと使えない。同じADSL事業者でもイー・アクセスは,どのISPからでも使えるインターネット電話サービスを提供する。

 また,ニフティやBIGLOBEといった大手ISPでは,会員料無料のコンテンツ会員になれば,そのインターネット電話サービスを利用でき,接続回線として,そのISPを使う必要はない。NTT-MEや有線ブロードネットワークスなどのインターネット電話サービスは,ISPとしてその会社のサービスを使わなくてはならない。

 インターネット電話サービスが魅力的であれば,それ目当てにISPを選ぶ人もいるだろうし,自分が使っているISPで利用できるインターネット電話サービスを選ぶ人もいるだろう。ここは個人の考え方次第である。覚えておいてほしいのは,インターネット電話サービスによって,ISPを選ぶ場合と,選ばない場合があるという点である。

ポイント2●通常の電話機を使いたいか?

 二番目のチェック・ポイントは,今,お使いの電話機など通常の電話機を使いたいかである。これを検討するためにまず,インターネット電話端末のタイプを説明しておこう。インターネット電話端末には,通常の電話機を用いる「ルーター・タイプ」および「USBアダプタ・タイプ」と,用いない「ソフト・タイプ」,「電話機タイプ」の4タイプがある。

 ルーター・タイプは,ブロードバンド・ルーターに通常の電話機を接続して,インターネット電話端末として用いるタイプだ。BB Phoneやワールドアクセル,NTT-ME,沖電気工業,大井電気などが製品を提供している。

 USBアダプタ・タイプは,インターネット回線に接続したパソコンに専用アダプタを介して通常の電話機を接続して,インターネット電話端末として用いる方法である。インターリンクの「ZOOTフォン」,日本ITサービスの「telbee VoIP」などがある。

 ソフト・タイプは,インターネット回線に接続したパソコンにマイクとスピーカー(イヤホン)を付けて,インターネット電話端末として用いるタイプだ。ニフティやBIGLOBE,イー・アクセス,OCN,ソフトフロントなど多くの事業者が提供している。

 電話機タイプは,LANポートを備え,インターネット回線に直結できる電話機である。ブレインリンクスが電話機を提供するほか,千代田産業もサービス提供を予定している。またソフトフロントはIPv6対応のインターネット電話機を開発している。

 これで分かるように,USBアダプタ・タイプとルーター・タイプは一般電話の電話機を用いることができる。使い慣れた電話機をつなぎかえて,使い続けることができるわけだ。電話線を分岐させて,複数の電話機を用いることも可能だ。

ポイント3●パソコンをつけっぱなしにするか?

 パソコンを用いるソフト・タイプ,USBアダプタ・タイプでは,電話を待ち受けるとしたらパソコンをつけっぱなしにしておく必要がある。

ポイント4●ADSLモデムはUSBタイプか?

 ADSLを契約したときに,つなぐパソコンは1台しかないし,安いのでUSBアダプタ・タイプのADSLモデムを選んだ人もいるだろう。この場合,パソコン以外はADSLに接続できないので,ソフト・タイプあるいはUSBアダプタ・タイプのインターネット電話を用いることになる。ルーター・タイプ,電話機タイプは使えないので注意が必要だ。

ポイント5●一般電話にもつなげられるか?

 着信のために一般電話も必要だが,2台の電話機を並べるのは気が進まない,ということもあるだろう。ルーター・タイプや電話機タイプのインターネット電話では,一般電話の回線もつないで,一般電話との発着信ができる製品もある。通常の電話機から発信する場合,電話番号の前に0や#をつけて発信することによって,インターネット電話と一般電話を使い分ける。

 ルーター・タイプのBB Phoneやワールドアクセル,NTT-ME,沖電気工業の装置では,インターネット回線のほかに一般電話回線もつなげる。電話機タイプでは,ブレインリンクスの「NetTalk」が対応している。

ポイント6●テレビ電話を使いたいか?

 単なる音声通話だけでなく,動画を送ってテレビ電話として使ったり,ホワイト・ボードを共有したりといった拡張性があるのがインターネット電話の魅力の一つだ。

 パソコンをインターネット回線に接続するソフト・タイプとUSBアダプタ・タイプの中には,パソコンにビデオ・カメラをつないで,テレビ電話として使うこともできるサービスもある。

 イー・アクセスが提供するソフト・タイプのインターネット電話サービスは,ベースはWindows XPのWindows Messenger(Windows 98ではMSN Messenger)を用いる。このためチャットやテレビ電話,ホワイト・ボードの共有といった機能も併用できる。

 USBアダプタ・タイプの「ZOOTフォン」(インターリンク)はパソコンでNetMeetingの機能を用いており,NetMeetingのテレビ電話機能を用いて,テレビ電話ができる。

 電話機タイプでも,ブレインリンクスはCCDカメラ,液晶モニターを備えテレビ電話ができるインターネット電話機を計画している。

◆幕張メッセでインターネット電話を実体験!

 このように一口にインターネット電話といっても,一般電話や狭義のIP電話と違って,様々なサービスがあることがお分かりいただけただろう。インターネット電話に興味を持たれた方は,ぜひ幕張メッセにお越しいただきたい。来週,2月6日から幕張メッセで始まるNET&COM2002で,インターネット電話体験コーナーがオープンするのだ。

 ソフト/USBアダプタ/電話機/ルーター・タイプの各1社ずつとIPv6に対応した事業者にお集まりいただいた。参加するのは次の5社である。

 タイプの異なるインターネット電話を一カ所で体験できるチャンスはこれまでになかったはずだ。この機会にぜひ,当コーナーにお立ち寄りいただいて,ご自分の目と耳でインターネット電話を体験していただきたい。

 当コーナーではプレゼント付きアンケートも用意しており,みなさんのインターネット電話に対するご意見,ご感想をお伺いしたいと思っている。

(和田 英一=IT Pro副編集長)