2000年2月に買い込んだ無線LANカード「WaveLAN(現ORiNOCO)」(米ルーセント・テクノロジーズ,現在は米アギア・システムズ)を快適に使っている。

 最近,無線LANのセキュリティが甘いと取りざたされているが,私が個人的に送受信するメールを時間とコストをかけて暗号解読する人なんていないだろうから,と自宅では2台の無線LANクライアントを日常的に使っている。たまに妻のマシンが闖入(らんにゅう)してくるから,無線LANクライアントが3台になることもある。

 と鷹揚に構えてはいるが,自宅のネットワーク資源をただ乗りされてはかなわないから,MACアドレスによるアクセス制限,WEPによる暗号化,ESS-IDの非公開(無線ネットワークの存在を公開しないモード)と,備わっているセキュリティ機能はすべてオンにして運用している。

 その快適さは,もうすでに読者の方もご存知だろうし,このコーナーで何人かの筆者が言及しているので,あらためて言う必要もないだろう。

 で,最近気になることはそのスピードだ。IEEE 802.11bは最大11Mbpsで接続できるとは言うものの,複数台がたまたまファイルの送受信を同時に行うような事態になると途端にスピードが低下する。ステーション1台に複数台ぶら下がる構成では,同じ帯域を共有するために,台数が増えれば「割り勘」になって速度低下を招くのは当たり前だ。

 特に1台の無線LANクライアントに置いたファイルを,もう1台から引っ張り出すようなときにはてきめんにスピードが落ちる。

 2台のマシンは一つの無線チャネルを使って,ファイルを送出し,受け取るという動作を同時に行うから約半分のスピードになってしまう。こんなときには,面倒だが,2台のクライアントをピア・ツー・ピアでつなぐアドホック・モードで接続しなおし,ファイル転送すると,ぐんと速くなる。ステーションを経由しない形での接続だ。このときに,使用チャネルを変えてやればもっと良い。こうしておけば,他のマシンへの影響も抑えられる。

 こうしたことを自動でやってくれるドライバが欲しい,というのはぜいたくだろうか? 接続先のアドレスがローカルの無線LANクライアントなら即座にアドホック・モードに切り替わる。インターネット上のアドレスがリクエストされれば,またステーション経由に戻る・・・。

 あ,でもそうか,これじゃローカルのクライアントへのファイル転送と,インターネットの同時利用ができなくなるな。

 それなら,無線チャネルを複数利用できるステーションをどこかのメーカーで作ってくれないだろうか? クライアントごとに異なるチャネルを使えるようになり,各クライアントは11Mbpsの帯域をフルに占有できる。

 現在,2.4GHz帯の無線LANを20Mbpsに高速化する試み(IEEE802.11g)が進んでいる。しかし,IEEE802.11gで現在のインフラがそのまま使えるかどうかは不透明だという。もう,体にしみ込んでしまった私のようなユーザーを切り捨てることなく高速化への道を整備してほしい。

 前述した,複数の無線チャネルを同時利用できるステーションなら,既存のリソースはそのまま使える。802.11gが実現する前に,きっとそんなステーションが出てきてくれると期待している。

(林 伸夫=パソコン局主席編集委員)