化粧品,香水,装飾品・・・etc。購入する際,どうしても「安かろう悪かろう」という意識が働いてしまう商品,サービスがある。実は通信サービスにも,この「安かろう悪かろう」というイメージがあり,特に企業ユースではなかなかこの意識を払拭できていないように思う。

 確かに,テクノロジがベースにある通信サービスは,安いのにはそれなりの理由がある。当然,ユーザーが危惧する品質や信頼性は,料金が高いサービスに比べ劣るのは否めない。しかし,求める品質や信頼性が過度でなければ,何ら問題がないサービスもある。むしろ,“悪かろう”に過剰に反応しすぎて,食わず嫌いになっていないか。「安かろう悪かろう」というレッテルを貼っているのは,使ってもいないユーザー自身ではないだろうか。

 その一つが,これからお話しする「格安インターネット接続サービス」である。

 代表的なのはADSL(asymmetric digital subscriber line)接続サービス。高速で格安な料金は企業にとっても魅力的。これまで企業向けの人気メニューとして売れ続けてきたNTTコミュニケーションズの「OCNエコノミー」は,128kビット/秒で月額3万2000円。これに対しADSL接続サービスは,企業向けの最大1.5Mまたは8Mビット/秒の高速回線が月額2万~6万円程度で手に入る。個人向けメニューなら月額3000~7000円程度にまで下がる。

 一方で同サービスは,基本的に高速Webアクセスを想定した個人向けのブロードバンド回線であり,サーバーの設置や業務での利用を考慮したサービスではない。このため,企業が使うことを前提として品質や信頼性,サポート体制を整えた専用線接続サービスとは雲泥の差があると考えるのは当然だろう。二の足を踏むのも,ある意味納得できる。しかし,使いもせずに,品質や信頼性が企業ユースに耐えられないと判断するユーザーには,待ったをかけたい。

 筆者は,一度使ってみることを提案したい。すでに,前述のOCNエコノミーなど専用線接続サービスからADSL接続サービスに切り替えるユーザーは着実に増えている。しかし,まだまだ使えるユーザーは多いはずだ。

 実は,今までの通信サービスには,「使ってみたら」という概念がなかった。それもそのはず。例えば専用線などには,最低でも1年という利用契約期間があるからだ。しかし,ADSLはそんな長い期間の拘束はない。短ければ1カ月,長くても半年程度。つまり,ちょうどいい“お試し期間”と思えばいい。しかも,インターネット接続用のADSL回線は,基幹業務系のバックボーン回線と異なり,追加回線として今までの環境を維持しながら試験的に導入できる。気に入ればそのまま使うもよし,追加するもよし。気に入らなければ解約して元の環境に戻せばいい。

 とは言え,「お金を払ってまで試験導入する価値があるのか」と思う方もまだ多いだろう。そんな方は,日経コミュニケーション10月1日号の特集をご覧頂きたい。試験導入に心が動いた方も同様だ。実際にADSL接続サービスを企業ネットに導入したユーザーの利用形態や担当者の生の声を紹介してある。

 「月額7000円強の個人向けサービスといえどもバカにできない」「プロバイダから信頼性が落ちるかもしれないと聞いたが,今のところ問題はない」など,導入に踏み切ったユーザーの多くは満足している。企業で使うための工夫や,SDSL(symmetric digital subscriber line)接続サービス,FTTH(fiber to the home)接続サービスなどADSL以外の選択肢,さらには10Mビット/秒以上の速度を格安に提供するイーサネット接続にも触れた。格安インターネット接続サービスの可能性を体感できないまでも,実感はできるはずである。

(小出 由三=日経コミュニケーション副編集長)