これまで「不安定」と言われてきたWindowsプラットフォーム(特にサーバー)の安定性は,マイクロソフトが満を持して投入したWindows 2000 Server(Advanced ServerやDatacenter Serverを含む)の登場によって改善されたのだろうか・・・。答えは「Yes」とも「No」とも言えるが,ここではあえて「No」としておこう。

 マイクロソフトの努力は認めるが,改善されたのはWindowsプラットフォームの一部に過ぎないからだ。OSの陰に隠れがちだった様々な要因にも目を向ける必要がある。

 ここで言う「Windowsプラットフォーム」とは,Windows OSだけを指すものではない。ハードウエアやデバイス・ドライバ,アプリケーション・ソフト,そしてWindowsシステムの開発者/管理者をも含めた,広義のプラットフォームと考えてほしい。これらの品質がすべてバランスよく安定していないと,Windowsシステム全体で見た安定性は下がってしまう。ここが重要である。

 実はWindows 2000 Serverだけを見ると,その安定性は大幅に向上したという声が多い。主要サーバー・メーカーのWindowsサポート部門に取材したところ,ユーザー企業からの問合せに占める致命的な障害の割合が,Windows NTと比べて大幅に減ったという。もちろん,これだけの理由でWindows 2000が「非常に安定したOSだ」と言うつもりは全くないが,大きく前進したことは確かだろう。

 実際,サーバー・メーカーが有償で手厚くサポートしたケースでは,Windows 2000システムで99.99%前後の可用性を実現している。これは,既に稼働した数十システムの実績を平均した値である。まだ一握りの例かもしれないが,OSの品質が以前のように低いままだったら,これだけ高い可用性を実現するのは困難だっただろう。また,十分なサポートがあれば安定性を確保できる点も興味深い。

OS以外がシステムの安定性を損なう

 大変喜ばしい話だが,だからといってWindowsプラットフォームの安定性が非常に高くなったかといえば,必ずしもそうではない。OSの安定性が高くなるつれて,デバイス・ドライバやアプリケーション・ソフトに潜む不具合,システム開発者/管理者の不手際などが目立つようになってきた。これらの問題が安定性向上の足を引っ張っている。

 例えばWindows NT/2000上で動作するソフトには,「カーネル・モード」と呼ばれる動作モードがある。カーネル・モードで動作するソフトには,デバイス・ドライバやデータベース・ソフト,バックアップ・ツール,システム管理ソフト,アンチウイルス・ソフトなどの一部があるが,これらにはメモリーなどのシステム・リソースに自由にアクセスできる特権が与えられている。しかし,そのソフトに不具合があるとOSや他のソフトをクラッシュさせかねない。ソフト単体では十分にテストして出荷されているはずだが,カーネル・モードのソフトを複数組み合わせたときに,予期せぬトラブルが起こることがあるのだ。

 また,システム設計や運用の面で見ると,ERPパッケージ(統合業務パッケージ)を動かすのにWindowsサーバーをクラスタ化していないとか,サーバー・マシンを直射日光のあたるオフィスに置いているとか,UNIX技術者なら非常識と思うようなことが,Windowsシステムの現場ではまだ多い。

 こうした問題は以前から指摘されてきたことだが,残念なことに,OSの安定性が向上したようには改善されていない。結果としてWindowsプラットフォームの安定性向上には,まだまだ改善の余地がある,ということになる。

 Windows 2000 Serverの安定性に満足してはいけないが,ユーザーはまず,プラットフォーム全体がバランスよく改善されるように配慮すべきだろう。そこで注意すべきことは,非常にシンプルである。要は,用途に応じて適切な安全対策を選択し,十分にテストする,ベンダーとパートナーシップを結ぶ,運用設計をしっかりやる,といった基本的なことを基本通りにやることなのだ。

 ユーザーだけで解決できる問題ではないが,ユーザーが手を抜けば損をするのは自分自身。「予算がない,時間がない,人がいない」という制約のなかでも,工夫をこらせば良い結果を生むはずである。

(渡辺 享靖=日経Windowsプロ)

■詳しくは,日経Windowsプロ,2001年10月号の特集「ノー・ダウンへの挑戦」で紹介しています。