マイクロソフトが明らかにしたデスクトップOSのライフ・サイクルが,企業にパソコン導入計画の見直しを迫っている。

 マイクロソフトはOSのライフ・サイクルを,「メインストリーム・フェーズ」「延長フェーズ」「非サポート対象フェーズ」という三つに分け,製品やサポートの提供制限を経てOSを収束させることを明らかにしている(クライアントOSの提供中止が続々やってくる)。

 メインストリーム・フェーズは,米国での製品発売から3年。この期間を過ぎて延長フェーズに入ったOSは,プリインストール機の価格が高くなったり,パソコン・メーカーが対応機種を絞り込むなどによって,ユーザーは入手しづらくなる。例えば2000年末に延長フェーズに入ったWindows 95の場合,Windows 98などをインストールしたモデルの2万円増しで提供されている。

 マイクロソフトにしてみれば,これまで曖昧だった製品やサポートの提供期間を明確にすることで,ユーザー企業に将来のパソコン導入計画をに役立ててもらうというのが大義名分である。しかし,そのメインストリーム・フェーズの3年は多くのユーザーにとっていかにも短い。

来年6月末にWindows 98の販売制限も始まる

 あるユーザー企業では2001年3月に,300台のパソコンがリース切れによる更新を迎えた。当初は,従来の社内統一OSであるWindows 95を搭載して新規のパソコンに入れ替える予定だった。しかし価格が2万円も高くなるとあって,このユーザーはWindows 95を断念し,Windows 2000 Professionalへの移行を決めた。

 来年6月末には,Windows 98(Second Edition含む)やNT Workstation 4.0が延長フェーズに入る。Windows 95と同様なことが起こると予想される。さらには,Windows 2000 Professionalも2003年3月末から延長フェーズに移ることが明らかになっている。

 こうした動きに対する不満は大きい。日経Windows 2000が実施したアンケートで,Windows 98やWindows NT 4.0の延長フェーズや非サポート対象フェーズへの移行時期を示して意見を求めたところ,やはり不満が多く寄せられた。「Windows 98とNT Workstation 4.0の延長フェーズ移行は来年6月末では早過ぎる。延長してほしい」という回答が実に過半数を占めた。

避けられないユーザー自身の自己防衛

 しかし,マイクロソフトはライフ・サイクルのガイドラインを世界統一の基準として採用しており,その大幅な修正は難しいだろう。不満を述べるばかりでなく,ユーザー自身も計画的なパソコン移行で自己防衛しなければならない。多くの企業でクライアント・パソコンのリース期間が分散している現状を考えると,自然なリース切れや減価償却を待っていては,更新用に導入するマシンのOSを,ある時期から変えざるを得なくなる。うまくコントロールしなければ,社内のWindows OSの種類が増え,管理コストが増大してしまうだろう。

 マイクロソフトの製品計画を考慮したクライアント・パソコンの導入・移行計画には,典型的な二つの方針が考えられる。

 社内のOSを統一するのなら,これまでバラバラだったリース切れのタイミングを前倒し,OS発売後(十分な検証期間を経たうえで)できるだけ早く,ごそっとパソコンを入れ替えることを検討したい。次の切り替えタイミングからは,新しいライフ・サイクルを迎えたOSに一斉に切り替えられるようになる。ただしこれをやるには,少なくないコストの発生は覚悟しなければならない。

 ガートナージャパンは,社内のデスクトップOSを統一することをある程度あきらめ,混在を許容しつつパソコンを導入していくという選択肢を推奨している。統一するためのコストと,混在することによる管理コストの増加をはかりにかけて決める。もちろん野放しに混在させるのではない。ガートナーは,サービス・パックのバージョンまで含め,最大で4種類程度に社内サポート対象のOSの絞り込むべきとしている。

 いずれの方針を採るにしても,少なくとも3年先を見据えた移行計画が必要になる。

 マイクロソフトはサーバー製品についても,クライアントOSと同様のライフ・サイクルのガイドラインを策定すべく検討を進めている。サーバー製品はクライアントOSに比べると寿命が長い。セキュリティ関連などの修正モジュールもクライアント以上に重要である。マイクロソフトにはこの点を考慮し,ユーザーが満足できるライフ・サイクルを設定してもらいたい。

(森重 和春=日経Windows 2000)

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