最近,気になって気になって仕方がないことがある。液晶テレビの「鮮明度」が気に入らないのである。液晶テレビを持っている方はお感じになっておられると思うが,テレビ映像を映すと,全体に眠い。小さい文字などが入ってくると,ぼやけた映像になりスカッとしない。

 趣味として,DVカメラで撮った映像をパソコンで編集して楽しんでいるが,文字やグラフィックスをかぶせてエフェクトをかけ,その仕上がりを確認したいときなど,やはりブラウン管のモニター・テレビが必要だ。電力消費,設置スペースなどを考えるとブラウン管とはそろそろお別れしたいのだが,どうしても捨てられない。

 機種によっていくぶん鮮明度に違いがあるが,大同小異。薄く透けるバナーを張った上に細かい文字を載せたりすると,レンダリング結果を精査することができない。現在のテレビ映像の解像度より液晶モニターの解像度が高いのにこうなるのは,画素を拡大して表示しているからとメーカーの担当者は説明してくれるが,どうも納得できない。

 液晶表示をテレビ映像の解像度のちょうど整数倍になるように設計すればクッキリと表示されるようになるのだろうか? ならば,なぜそのように作ってくれないのだろう。原因は何かもっと違うところに,本質的な問題が転がっている気がする。

 NHKなどテレビ放送局では編集作業に液晶モニターは使わない。画像確認にはまだブラウン管のモニターが活躍する。液晶テレビ・モニターは画質,応答速度などの面で放送業務に使える仕様を満たす製品がないからだ。印刷や出版関連の業務では,色の管理に液晶ディスプレイが使われるようになってきた。しかし残念ながらビデオの世界では,まだブラウン管を置き換えるまでに成熟していない。

 パソコンとテレビは今後さらに融合して行くと同時に,間違いなく液晶ディスプレイが標準的に使われるようになる。しかし,こんなに液晶に映し出すテレビ映像が不鮮明なままでは本当の融合は望めない。

 いずれ全てのテレビ放送はデジタルになるから,アナログ<==>ディジタル変換で生じる誤差から逃れられるのかもしれない。だが,既にデジタルの世界にどっぷり入りこんでしまっているパソコン・ユーザーにとっては,いますぐにでも解決してほしい問題である。

(林 伸夫=パソコン局主席編集委員)