半角英数字だけでなく,漢字やひらがなも使える日本語ドメイン名。まだ利用できないにもかかわらず,登録にユーザーが殺到し,果ては訴訟さえ起こっている。そもそも,日本語ドメイン名は本当に必要なのか。ちょっと冷静に考えてみよう。

 ドメイン名を管理するDNSの仕組みが将来破綻するかもしれないということを考えたことがあるだろうか。DNSとは,コンピュータ同士の通信に使うIPアドレスと,ドメイン名の対応関係を管理する仕組み。DNSがなければ,メールを送受信したり,Webページを閲覧するといった今のインターネット・アプリケーションが成り立たないほど,重要な基盤技術である。

 ところが,DNSが扱うデータ量は時々刻々と増え続けている。これだけ大規模な分散型データベースがどうしてうまく動いているのかも,よくわかっていない。これからもずっと問題なく動き続けるかもしれないが,少なくともドメイン名が登録されるごとにDNSは性能限界に一歩近づくのは確かである。

 こう考えれば,DNSへ登録するドメイン名は,必要最小限にすべきで,製品ごとにドメイン名を登録するのではなく,会社名のみを登録すべきだ。DNSのしくみが考え出された経緯から考えても,この方が納得できる。

 初期のインターネットでは,すべてのコンピュータのIPアドレスと名前の対応表をテキスト・ファイル(hosts)にして各マシンが保持していた。つまり,名前はインターネットにつながったコンピュータを特定するためのものであり,商標や個人名を登録するためのものではなかったのだ。

 しかし個人や企業は,ドメイン名には商標に準じるだけの価値があると信じている。こうした思考に陥ったのは,インターネットには使いやすいディレクトリ・サービスがなかったためかもしれない。だいたい,WebブラウザのURL入力欄に「www.日経BP.jp」というドメイン名を入力してWebページへアクセスすることが,本当の目的ではないはず。「日経BP」という言葉を手がかりにして,簡単・確実にwww.nikkeibp.co.jpのWebページが表示されれば,それで事足りる。

 実はここまでの話,多くは日経NETWORK誌に寄稿していただいたIIJ技術研究所の山本和彦氏の受け売りである。山本氏の主張に筆者も同感なので,ここで紹介させてもらった。

 インターネットに使いやすいディレクトリ・サービスが普及すれば,日本語ドメイン名などは要らなくなるかもしれない。その一つの候補として,同氏はすでに使えるキーワード・サービスを紹介してくれた。Internet Explorer 5.0以上のURL入力欄に「日経BP」と入れると,Webページが表示されるはずだ。これがキーワード・サービスである。一度,お試しあれ。

(三輪 芳久=日経NETWORK副編集長 兼 編集委員)