コンピュータ・メーカーやシステム・インテグレータといったITベンダーのあいだで,技術者など社員の昇給や昇格・昇進を決める際の判断基準として「仕事の成果」を重視する動きが広がっている。特に今年4月には,注目すべき出来事がいくつもあった。

 NTTデータは,社員の“年功”に応じて支払う給与が給与全体に占める比率を,50%から40%に引き下げた。これによって生じた賃金原資の増加分を,社員の成果に応じて割り振ることが狙いである。

 TISは,従来5段階で行ってきた社員の業績評価を,4段階評価に変更。これまでは多数の技術者が「3」と評価されていたが,これを「3」の評価と「2」の評価に振り分け,給与面でも格差を付けることにした。

 同業他社に先駆けて,いち早く約10年前に成果主義を導入した富士通も,4月に制度改革に踏み切った。評価の対象として,仕事の成果だけでなく,プロセスを重視することにしたのである。同社の岡田恭彦取締役はその理由について,「社員に,より高い目標に挑戦してもらうため」と説明する。従来は目標の達成率を重視するあまり,難しい目標に挑戦しようというチャレンジ精神が社員から失われつつあったという。

 各社が成果主義に前向きな背景には,優秀な人材を獲得しなければ,ITベンダー間の熾烈な競争を勝ち抜けないという事情がある。社員の仕事を的確に評価し,処遇する仕組みを整えなければ,優秀な人材を確保することはできない,と各社は危機感を募らせている。

 だが,一般企業がこうした大手ITベンダーと同様な評価の仕組みを導入することは容易ではない。“成果主義を導入済み”という企業でも,社員が人事評価制度に大きな不満を抱いているケースは多い。

 こうした問題意識から,「日経コンピュータ」は現在,情報システムの企画,開発,運用などに携わる“ITプロフェッショナル”の給与や処遇の現状を把握するためのアンケート調査を実施中である(http://itpro.nikkeibp.co.jp/NC/research/2001/3/)。

 中間集計によると,回答者の半数以上は,「勤務先企業の人事評価制度で,年功よりも成果が重視されている」。だが,その多くは,自社の人事評価制度に「非常に不満」もしくは「やや不満」と回答している。成果主義は,その運用を誤ると技術者のモラール低下や萎縮など,重大な危機を招きかねないだけに深刻だ。

 アンケート調査の結果は,日経コンピュータ8月27日号で詳しく紹介するほか,IT Proサイトでも概要を報告する予定である。アンケートへのご回答はこちらのページから。ぜひ,皆様のご協力をお願いします。

(森 永輔=日経コンピュータ)