100Mイーサネットで使うより対線で,1Gビット/秒の伝送速度が得られる「1000BASE-T」対応のLANボード(NIC)が,このところぐっと安くなってきた。

 今春にはプラネックスコミュニケーションズやネットギアが実売2万円弱の製品を発売した。夏以降には台湾メーカーなどの新規参入も見込まれ,今年中には1万円台前半まで価格が下がるのはほぼ間違いない。

 ここまで下がると,将来を見越してデスクトップ・パソコンなどにも導入したくなる。新しくLANボードを導入するときには1000BASE-T対応NICを採用しておき,現場では100BASE-TXとして使う。そして1000BASE-T対応のハブやLANスイッチ(スイッチング・ハブ)が安くなった時点で,NICはそのままで1000BASE-Tに移行してしまう。ちょうど,100Mイーサネットが普及した時期と同じような状況になっている。

 ところが現時点で一般的なデスクトップ・パソコンでは,1000BASE-T対応NICの高速データ伝送を100%引き出すのは難しい。

 標準的なパソコンに組み込まれているPCIバスは,32ビット幅で33MHz動作。単純に計算すると最大伝送速度は1056Mビット/秒になる。一方の1000BASE-TはLANスイッチと組み合わせて全2重通信モードで使うのが一般的になると考えられ,このときの最大伝送速度は2G(2000M)ビット/秒。つまり1000BASE-Tをフルに使うには,今のパソコンが備えるPCIバスではダメなのだ。

 実は,この状況も100Mイーサネット普及期に似ている。90年代前半,10Mイーサネットが幅を利かせていたころのパソコンは16ビット幅のISAバスが主流で,100Mイーサネットを使うにはやや能力不足だった。それが90年代半ばから普及したPCIバスに呼応するように,100BASE-TXも一挙に広まった。

 では,パソコンの現状はどうか。主流は非力なPCIバスだが,64ビット幅で66MHz動作のPCI-Xバスなどを搭載したPCサーバーも登場しつつある。こうした高速バスが10万円前後のパソコンにも組み込まれるようになれば,1000BASE-Tの採用に加速がつくだろう。

 ギガビット・イーサは間もなく本格普及期を迎えそうだ。

(三輪 芳久=日経NETWORK副編集長兼編集委員)