インターネットを利用した企業間取引に,新たな変革の波が訪れている。EC(電子商取引)ビジネス/システムを,ガラリと変えててしまうような大きな変化である。キーワードは“Webサービス”。

 今後,爆発的に普及すると見込まれるこのWebサービスが,新しいインターネットの利用形態を生み出す。御社のECビジネス/システムは,このWebサービスに対する備えができているだろうか。

 Webサービスは,Webサイトと同じように,Web技術を使って構築したシステムである。Webサイトとの違いは,その利用者が異なるところ。Webサイトは人がアクセスし,閲覧し,情報を入手するためのもの。これに対し,Webサービスは機械,つまりコンピュータ・システムがアクセスし,利用するWebベースのアプリケーションである。

 Webサービスが現実的になった背景には,他のシステムがそれを利用するためのインタフェースが標準として固まったことがある。その代表が,「XML(拡張可能マークアップ言語)」と「SOAP(簡易オブジェクト・アクセス・プロトコル)」。SOAPは2000年に登場した新しいプロトコルだが,あっという間に業界標準の地位を確立してしまった。

Webサイトと同じように爆発的に普及する

 WebサービスはWebサイトと比較すると,今後の普及の度合いを測りやすい。Webサイトは,「HTML(ハイパーテキスト・マークアップ言語:データ形式)」と「HTTP(ハイパーテキスト転送プロトコル:通信プロトコル)」という標準が94年に固まると,瞬く間に普及した。「XML(データ形式)」と「SOAP(通信プロトコル)」という業界標準の後ろ盾を得たWebサービスも,Webサイトと同じ道をたどる可能性が高い。

 Webサイトの登場によって,インターネット上には,数限りないドットコム・ビジネスが生まれた。ポータル・サイトの米Yahoo!や書籍販売の米Amazon.comが誕生し,既存の企業も続々とECビスネスに参入した。同じことが,Webサービスの世界でも起きる。人に見てもらうWebサイトと同じように,システムに呼び出し使ってもらうWebサービスが,インターネット・ビジネスの新しいタネとなる。

 情報システムも変化する。Webの登場で,企業内にある多くのシステムはWebブラウザをクライアントとするWebアプリケーションに移行した。同様に,今後の情報システムは,他のシステムと連携可能なWebサービスへと変わっていく。社内の別システムや取引先のシステムとつながることが当たり前になるからである。

 こうしたWebサービスの時代は,実は,もう目の前に迫っている。

(安東 一真=日経インターネット テクノロジー)

■Webサービスのインパクトや実例,構築のポイントなどを,日経インターネット テクノロジー2001年5月号に特集としてまとめた。Webサービス時代に備えるための一助となれば幸いである。