昨年後半ぐらいから,BtoB(インターネット技術を使った企業間電子商取引)をキーワードにしたニュースが目に付くようになってきた。アクセンチュアが,経済産業省,電子商取引推進協議会(ECOM)と共同で実施した調査結果の予測によれば「BtoBによる取引金額は,2000年は21.6兆円,2005年には約110兆円」という景気のいい話も出ている。

 こうしたお祭り騒ぎに疑問を感じたこともあり,新たな製品・サービスを提供し始めているベンダーやユーザー企業のシステム構築現場に,BtoBの実態を聞いて回った(記事は2001年3月15日発行の日経オープンシステム3月号に掲載予定)。

 結果として分かったのは,インターネットを使った企業間での情報共有や受発注,取引先との購買プロセスをWWWサーバーを使って効率化する電子調達システム,WWWサイトに調達品を提示して入札する公開調達といったシステムは増えてきており,すでにBtoBで効果を出している企業も少なくないことだ。

 一方で,様々な企業が参加して商品を売買するWWWサイト,いわゆる“e-マーケットプレイス(インターネット取引所)”は数多く出てきたものの,評価はこれからといったところ。RosettaNetのようなサーバー間で連携するシステムは試行の段階である。

 つまり現状のBtoBシステムとは,これまでファクスや電話によって行われていた取引をインターネットに移して,作業効率を高めたものなのである。BtoBによって扱われる取引金額は急速に伸びても,実は取引の伝達方法が変わっただけで,サプライヤ(売り手)の売り上げが増えているわけではない。

 しかもBtoBは主に,資材を調達するバイヤー(買い手)側のシステムである。この点で,アクセンチュアが予測する「2005年には市場規模が約110兆円」という言い方にはやや違和感がある。“市場規模”という表現だと,あたかもBtoBでモノが売れるような印象を与えかねない。

 市場規模という測り方は,e-マーケットプレイスには適切と思われるかもしれない。しかし現実には,e-マーケットプレイスでも,取引先が固定的になっていることが多い。であれば,オープンなマーケットとしての意味合いよりも,企業の購買プロセスを効率化するWWWシステムをアウトソースしていると見た方が適切だろう。

目的ごとのBtoBタイプを見極める

 こうした目で以上のBtoBシステムを見れば,情報システム担当者には,購買あるいは調達のためのシステムとしてどう構築すべきかという視点が必要となる。そこで,まずシステム構築の第一歩として,BtoBシステムのタイプによる目的の違い,メリットとコストの関連を明確にしておきたい。

 BtoBシステムを目的で大別すると,(1)購買コストを下げる,(2)企業間のプロセスを効率化する,といった形に分けられる。

 前者には,前述したe-マーケットプレイス,電子調達システム,公開調達がある。e-マーケットプレイスは,廉価購買に対するメリットは少ないものの,初期コストやランニング・コストが低い。主に中小企業向けのソリューションと言える。

 公開調達や電子調達システムがe-マーケットプレイスと違う点は,一時的な取引ではなく,継続的な取引であり大量購買を前提としていることだ。つまり,大企業向けのソリューションとなる。

 公開調達と電子調達システムとでは,安く買う手段が異なる。公開調達は,比較的オープンな場による競争によって安い価格を引き出すが,電子調達システムでは大量購買を前提にネゴシエーションで購買価格を引き下げる。どちらのメリットが大きいかは企業ごとに違ってくるだろう。

 後者では,WWWを使った情報共有や受発注である“Web-EDI”が現在主流である。しかしWeb-EDIでは,WWWブラウザで手入力する処理が必要で,取引量が多くなるとその作業負荷が増大するといった問題が指摘されている。

 これに対しては,サーバー間連携によるBtoBシステムが一つの解となる。サーバー間でデータ処理を自動化し,社内システムと連携して,企業間取引に関するプロセス全体をより効率化しようというねらいだ。ただし,構築には非常にコストがかかるため,大企業に向けたソリューションといえる。

 こうしたシステムの構築作業には,相手先企業に参加してもらうための工夫や,社内のビジネス・プロセスの変更など,通常のシステム構築に比べて苦労する点が多い。市場規模に釣られて,目的がはっきりしないままシステム化を目指すと,失敗しかねない。

 こんな話から,5年前にERP(Enterprise Resource Planning)パッケージの導入時に,自社のプロセスに合わせるためのカスタマイズに苦労したという人の話を思い出した。あのころも確か,ERPパッケージはお祭り騒ぎだった。

(森側 真一=日経オープンシステム)