ついに,個人宅で100Mbps回線を独り占めできる光ファイバ・ブロードバンド・サービスが始まる。有線ブロードネットワークスが3月1日から,東京都渋谷区と世田谷区の一部からサービスを始める。

 いくら光ファイバとはいえ,「最初は10Mbps程度から,しかも複数のユーザーでシェアする形態で約5000円程度からかな?」と思っていたら,一気に100Mbpsで4900円ときた。しかもその帯域を独り占めできる。

 「サービスは共有(シェア)ではなく,ユーザーごとに100Mbpsをフルに使ってもらう。そのために必要な上流の増強は状況を見ながら随時行う」(加茂正治副社長)。

天国と地獄の開き広がる

 いやはやすごい。

 ブロードバンドを一般のパソコン・ユーザーが手にできる日を心待ちにしてきた私としては,大きな拍手を送りたい。実際にサービスが受けられる家庭は,サービス提供エリア内でも限られる。しかもサービス地域の拡大は,2002年4月ごろに30万都市・県庁所在地,2003年4月ごろに全国主要都市といったペース。少々時間がかかる。

 例えば筆者の住まいで利用可能になるのは2003年以降のいつの日か,という気の長い話となる。当分は“天国”の環境を横目でみながら,我慢を重ねる日々を過ごすことになる。しかし今回の動きで重要なのは,引き込み線を引ける準備さえできていれば,これだけの速度のサービスが,こんなに低価格で手に入れられるということを世に示したことだ。

 NTT東西日本が試験サービスしている「光・IP通信網サービス」では,他人との帯域共有に制限を加えた「高スループットメニュー」で10Mbpsが3万2000円だから,今回のインパクトは極めて大きい。NOC(Network Operation Center)からユーザー宅の近くまでは1~10Gbpsの光で運び,そこからハブを介してギガビットEthernetでスター状に末端まで届ける。こうした形態をとれるところ,例えば大規模集合住宅などでは「この値段で,このスピード!」という格好の実証例となる。地域の電話会社を揺り動かす大きな力になりうる。

私はデジタルからアナログに

 そんな夢のような世界を横目でみながら,私の方はといえば,5年間使ってきたISDN回線をアナログ回線に変更しようとしている。我が家の近くにも3月末頃からNTTのADSLサービスが始まるから,その準備に入ったのだ。

 アナログ回線にすることでデメリットはない。それどころか,逆に電話代が下がるというメリットが生まれた。通信基本料金が約半分になるうえに,パルス・ダイヤル契約にしたから,こちらの利用料金390円も削減できた。これまでの6年間私は何をしてきたのか,と悲しくなってくる。

 ISDNサービス開始後しばらくはDSU装置の売り切りはなかったから,ずいぶんなレンタル使用料を払い続けた。2000年7月になってようやくたどり着いた先が,64kbpsの常時接続だった。

 実は,私のような時代に逆行しているかに見えるISDN解約ユーザーが増えている。NTTがさっさと光ファイバのサービスを始めてくれないから,ユーザーは中途半端なサービスから撤退し始めているのだ。せっかく電話局に設備投資したISDN接続機器は投資回収できないまま捨て去られていくことになる。でも考えれば,NTTが苦杯をなめさせられるハメに陥ったのは,自らまいた種のせいだ。

 「100Mbpsで4900円」のサービスが現実のものとなった今,それを指標に“帯域渇望症候群”のユーザーを十分に満足させられる事業展開に突き進んでほしいと思うのは筆者だけではないだろう。

(林 伸夫=パソコン局主席編集委員)