世紀末を沖縄で過ごした。那覇市の奥武山陸上競技場で開かれたインターネット博覧会(インパク)の開会式に参加するためである。

 堺屋太一内閣特別顧問が経済企画庁長官時代に提唱したこの行事は,世間の評判が芳しくない。しかし筆者は,日本のコンテンツ・クリエータ分野に刺激を与え,可能性に挑戦する機会を与える格好のイベントだと考えたからだ。

 例年のことだが,年末の沖縄は大雨。突風も吹き,最悪の条件だったが,そのなかで沖縄の踊りが披露され,沖縄を象徴する各ジャンルの芸能家がその才能を精一杯,競技場の空間にみなぎらせた。もちろんインターネットを通じて,沖縄の文化が世界に伝わる良い機会になった,と,沖縄の血を受け継ぐ筆者は涙を流した。

 しかし,東京に帰ってからは憂鬱の連続である。

 堺屋前企画庁長官とともに始めたインパク・政府パビリオンの企画(http://www.inpaku.go.jp)は,なかなか軌道に乗らない。「20世紀を記録し,後世に電子アーカイブとして残す」というのが,政府パビリオンを引き受けた筆者とジャーナリストの嶌信彦氏の任務だった。

 しかし,あまりに制約が多すぎるのだ。たとえば世間では当たり前になっている動画ソフトを使ってはならないという示唆を最近になって受けて,企画は大幅に修正せざるを得なくなった。

 こんにゃく問答のような打ち合わせなので,動画ソフト禁止の理由は定かではないが,要するにこういうことのようだ。

 「その動画ソフトを使うと,再生ソフトをダウンロードをするボタンを用意する必要がある。そうすると政府パビリオンの画面が,一部の企業の広告に当たるような形態になる。これは望ましくない」。

 というわけで,最新のソフトが利用できないばかりか,すでに市場にたっぷりと流通しているソフトも使えないのである。筆者の考えるところ,文字と若干の静止画だけではいかにも寂しい。これでは,「日本のコンテンツ・クリエータ分野に刺激を与える」という筆者の期待はかなえられそうにない。