我が家にもADSL(非対称ディジタル加入者回線)がやってきた。昨年10月中旬に申し込み,12月上旬に開通した。申し込みから開通まで2カ月近くかかっているが,自宅がサービス・エリアに入ったのが11月末だったので,それから回線の試験をして工事をすることを考えれば,ほとんど渋滞なく開通したということのようだ。

 開通したらあれもしよう,これもしようと夢を膨らませていたが,いざ開通してみると,結局のところ使うのはメール・クライアントとWebブラウザで代わり映えしない。速くなったからといって何Mバイトもあるようなメールを送るわけではなし,ブラウザを使う時間が大幅に増えたというわけでもない。

 「だからブロードバンド・サービスを広めるにはメールやWebに代わるキラー・アプリケーションが必要なのだ」という話はよく聞く。私もそう思っていた。しかし,実際に使ってみて考えが変わった。これまで使っていたアプリケーションも高速接続/常時接続になるだけで,使い勝手が変わる。

 たとえばメール・クライアントの着信監視機能を常駐させるようになった。パソコンをつけっぱなしにするまでにはなっていないが,少なくともパソコンに向かっているときはほぼリアルタイムでメールを受け取れる。

 出がけに天気を知りたいというようなときも,パソコンさえ起動していれば即座に調べることができる。新聞はまだやめていないが,トップ・ニュースは新聞をポストに取りに行く前にWebサイトで見てしまっていることが多い。

 この辺までは,いずれも「常時接続」であることによるメリットなので,NTT東日本/NTT西日本の「フレッツ・ISDN」などを利用すれば近いメリットは得られる。しかしブロードバンド・サービスにはもう1つ,「高速接続」であるというブロードバンド本来のメリットがある。

 たとえばアンチウイルス・ソフトのパターン・ファイルやその他ソフトのアップデートが苦にならないこと,少々サイズの大きなメールが送られてきてもあまり腹が立たないこと,少々重いWebページも全部見るようになったこと,などである。いずれも些末な話なのだが,こういったイライラを感じないで済むメリットは案外大きい。

 こういったメリットを考えてみると,ブロードバンド・サービスの快適さとは企業内LANの快適さに通じるものがあるように思える。キラー・アプリケーションなどなくても,ブロードバンド・サービスはブロードバンドであるだけで十分に魅力的である。

(斉藤 国博=日経インターネット テクノロジー)