今年前半で,JPドメインを取り巻く状況が大きく変わろうとしている。2000年末に決まった汎用JPドメイン名(たとえばnikkeibp.jpや日経BP.jpなど),割り当てポリシーの変更,ドメイン名の登録管理業務(レジストリ)を行う新会社設立が現実のものになるからだ。ただ筆者のみるところ,こうした改革が成功するかは微妙なところである。

 まずはドメイン名。これまで,1組織1ドメイン名,co.jpやor.jpは会社登記簿が必要,譲渡はできないと,JPドメイン名を取得するための条件は非常に厳しいものだった。こうした割り当てポリシーで不正取得などを防ぐ効果があったかもしれないが,厳しい条件のために日本はインターネットの爆発的な普及に乗り遅れたと,感じる人が多いのではないだろうか。

 それは,“ドットコム”や“ドットネット”という言葉がちまたにあふれているのに,“シーオージェイピー”という言葉が聞かれないことでもわかる。そこで,日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)はCOMドメイン名にならい,従来の制限を撤廃し,基本的にだれでも複数のJPドメイン名の取得を可能にする。

 また汎用JPドメイン名では,日本語文字も使えるようになるが,ここでもCOMドメイン名が先行してしまっている。たとえば,2000年11月10日に日本語COMドメイン名の登録受付を開始したインターキューは,3日間で1万件を受け付けた。このように,もはやJPドメイン名でしか日本語が利用できないわけでもない。それどころか,日本語JPドメイン名の受付開始日がいつかを知っているユーザーがどれほどいるだろうか(一般受付は5月7日)。

 さらに社団法人であるJPNICは,迅速なドメイン名登録管理作業や効果的な広報活動を目的に株式会社を設立し,そこがJPドメイン名の登録管理作業を行うことを決めたが,これもCOMドメイン名の後追い。COMドメインは,米VeriSignの一部門であるVeriSign Global Registry Servicesが登録管理業務を一手に引き受け,多数の企業が申請窓口業務を担っている。

 ここまで見てくると,JPドメインに関する一連の改革はJPドメインがCOMドメインのようになろうとしているのではないか,と思えてしまう。しかし世界規模で見れば,JPドメインがCOMドメインに太刀打ちできるとは到底思えない。

 それならば,もっと独自の改革手法もあったのではないだろうか。

 例えば申請時には,これまでのように登記簿や実印を必須にして,ドメイン名取得者の名前や住所をJPNICが保証する方法などはどうだろう。これがうまくいけば,「JPドメインのWebサイトは安心」といった,これまでにはないブランド・イメージをユーザーに植え付けられるかもしれない。

(三輪 芳久=日経NETWORK副編集長兼編集委員)