経済面を見れば景気の悪い話,社会面を見れば殺伐とした事件ばかり。それでもどうにか21世紀が始まりました。たいへん遅ればせながら,あけましておめでとうございます。

 「ドッグ・イヤー」だか「ラット・イヤー」だか知りませんが,企業も情報も技術も戦略もビジネス・モデルも方法論も,およそあらゆるものの寿命がどんどん短くなっているようです。そんな中で当「IT Pro」は,2000年9月18日の開設以来,幸いにしてまだ生き残っております。読者のみなさまに改めて,厚くお礼申し上げます。

 さて,読者のみなさまは,当「IT Pro」,あるいはWeb上のIT関連情報というものに,どんな期待をお持ちでしょうか。

 当「IT Pro」の中でも,この【記者の眼】コーナーに掲載された記事は常にアクセス数が多く,俗な言い方をすれば「人気コーナー」であります。今回この【記者の眼】コーナーで掲載した記事への,「IT Pro」の開設以来の累積アクセス数のベスト10を出してみました。

1位 NTTドコモの「危険な賭け」
2位 マイクロソフトが失った2年間
3位 IT業界に“モラルハザード”は起きているか
4位 Linuxブームが残したもの
5位 Windowsにもっと互換性を
6位 IPネットが苦手なもの
7位 行き過ぎたバッシングで「未来」をつぶすな
8位 急がば回れ? 新人教育は“コンピュータの動く仕組み”から
9位 高速インターネット接続,巨大事業者の計画的な全国展開だけが解なのか?
10位 オブジェクト指向はなぜ浸透しない?

 いかがでしょうか。これは「IT Pro」という場に来て頂いたみなさんの,関心の方向性を示す指標の1つにすぎません。しかし,私どもがこの「IT Pro」をどう変革していくかを考える上で,重視せざるをえない指標の1つです。

 私どもは「IT Pro」を,IT関連の業務に携わる「プロ」の方々の情報ニーズに適したサイトにしたいと考え,日々の編集を行っています。「インターネット時代のメディアとして恥じない速度」と「専門出版社日経BPへの期待に恥じない正確さ,ち密さを持ちつつ,厳選した専門情報」,「実務的・実践的ソリューション情報」の提供をミッションとして設定してきました。

 社会・経済がIT,特に情報ネットワークの影響を強く受けるようになった今日,あらゆるニュースの表面あるいは背景に,ITが関係しています。この【記者の眼】アクセス・ランキングにも,「IT業務のプロとしての問題意識」と拮抗して,「ITと社会基盤の関わり方への問題意識」についての高い関心が現れています。
 奔流のようなニュースのどれもが,ITと無縁ではありません。その中でどれが「厳選したIT関連の専門情報」に価するのか,判断は容易ではありません。

 一方で,読者のみなさんの「IT業務のプロとしての問題意識」は,「技術の基本に立ち返る」ことを非常に重視しておられることが,このランキングや,その他のコーナーの記事でのアクセス数の統計に出ています。
 時には私どもが「『IT Pro』なのに,こんなに基本的なレベルの技術解説の記事が必要なのか?」と自問自答するような記事にも,多くの読者のみなさんが「こういうのを読みたい」という意思を示されています。

 インターネット上のサイトという情報メディアは,ビジネスとして継続していく場合その収益モデルからも,マス指向,ニュース指向になりがちです。
 その一方で私どもに寄せられる,「ITのプロの情報ニーズ」は多岐にわたります。基本的な事実の速報にも,背景情報にも,私どもSITE-ANCHORの分析/予測にも,時には“世論を誘導するようなアジテーション”にも,どれにもご要望があります。

 また,私どもが提供できる「実務的・実践的ソリューション情報」は,読者のみなさんにとってどれだけ有用か。ますます細分化する業務/業種セグメントから少しでもずれた読者の方からは,関心を持って頂けないのではないかとの危惧もあります。「ユーザー事例記事は,その事例自身の戦略的重要性や先進性よりも,その企業が有名企業かどうかで“読まれた”率が決まる」というのが,つい最近まで弊社の活字媒体ではよく見られる現象でした。「記事そのものの質が低いから,知名度でしか選ばれないのだ」と自らを叱咤してはいましたけれど。

 読者のみなさんの1本1本の記事への「評価」や,「会員の広場」でのコメントで勇気づけて頂きながら,「IT Pro」は試行錯誤を繰り返しています。まだまだネット上のメディアとして,「IT Pro」はシステムもスタッフもポリシーも発展途上です。
 あらためまして今世紀(!)も,「IT Pro」へのご指導,ご鞭撻をよろしくお願いします。

(千田 淳=IT Pro編集)