家は一生で一番の大きな買い物などと言われているが,あなたはどのような基準で住まいを選びますか?

 通勤時間はドア・ツー・ドアで1時間以内,周囲の環境が良くて,買い物にも便利,そこそこの間取りがあって,南向きで日当たりは良くて,駐車スペースは確保したいし,ちょっとした庭がついていて,できればペットも一緒に住まわせたい・・・。

 でもこれからは,こうした条件に加えて,インターネット対応とか,EC(電子商取引)対応など,“IT度”が家選びの基準になるかもしれない。

 DSLやCATVインターネット,無線LAN,先日発表になったNTT東西地域会社が提供するFTTH(fiber to the home)によって一気にブロードバンドの波が押し寄せてきた。またマンション・デベロッパも,インターネット対応マンションを積極的に導入する構えを見せている。なかには自らがインターネット・サービス・プロバイダになって,格安のサービスを提供するところも出てきた。

 今年10月に大京とNTTエムイー(NTT-ME)が共同で,マンションに対して高速インターネットの常時接続環境を提供する新会社「ファミリーネット・ジャパン」を設立した。新会社のサービスは,マンションまでは光ファイバ,各家庭までの構内回線は電話回線を使うことで,1戸当たり最大1Mビット/秒という高速インターネット環境を提供するというもの。料金は月額2980円というから,NTT東西地域会社が3800円で提供するFTTHよりも割安だ。

 さらにマンション周辺の400m以内の地域に対しては,マンション敷地内に設置したアンテナから無線を飛ばして,インターネット・サービスを提供するという。同じマンション・デベロッパの長谷工コーポレーションも11月にNTT-MEと提携して,同様のサービスを始めた。

 マンション・デベロッパのなかには,自社のマンション居住者向けの会員制ホームページを立ち上げて,そこで生活雑貨を販売するサービスを提供する会社も出てきた。スーパーと提携して,ホームページから食料品を注文して宅配してもらえる「ネットスーパー」サービスを始めるところも登場した。まさにITが家選びの新基準として急浮上してきた訳だ。

 ただ,ある大手デベロッパの社長は,「インターネット対応は,いずれ水洗トイレが付いたマンションと同じくらい当たり前になる」と語っている。現にファミリーネット・ジャパンの構想では,3年後にマンションだけで350万世帯,周辺の無線で届くエリアの住宅などを合わせると1350万世帯にブロードバンド・サービスを提供するとのこと。IT度によるた家選びの新基準が有効なのも,いましばらくのうちなのかもしれない。

 となると,住まいを選ぶ基準は,通勤時間が短くて,日当たりが良くて,そこそこの間取りがあって・・・,そして私の場合は「ペットも飼える家」ということになりそうだ。

(中田 靖=日経ネットビジネス副編集長)