1年ほど前,約900社の日本企業を対象にインターネットの利用状況を調査した。Y2K対策のめどがたち,2000年はいよいよインターネットのビジネス利用が本格化する。日ごろ誌面で取り上げているインターネット技術,サービスが実際にどの程度利用されていくのか,それを調べるためである。

 ところが,調査結果を見てショックを受けた。1年前のことではあるが,例えば「ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)」や「XML(拡張可能マークアップ言語)」を利用する計画があると答えた企業は5%程度という状況だった(この調査結果は日経インターネット テクノロジーの2000年2月号とWebサイトに掲載)。新しい技術・サービスが実際に活用されるまでには時間がかかることを痛感させられた。

 それでは,21世紀がスタートする来年はどうなるのか。今年も同様の調査を実施したので,そのさわりを紹介したい。回収した850通の調査票から集計前に1割の85通を無作為に選び,ざっと傾向を調べてみた。その結果である。全調査票の集計結果を載せた記事は日経インターネット テクノロジーの2001年2月号(1月22日発行)に掲載する。正確な分析はもうしばらくお待ちいただきたい。

 今年の調査票には40項目にわたる質問を並べたが,ここではその中から,インターネットへの接続速度とWeb/EC(電子商取引)への取り組みに関する結果の一部を紹介しよう。

 日本企業のインターネット接続速度はここ1年でどう変化したか。まず,「64k以下」の低速な接続サービスを利用している企業は約12%(99年:約27%)に減った。「64k超-128k以下」は約39%(同:約38%),「128k超-1M以下」は約18%(同:約18%)と変わらず,「1M超-1.5M以下」が約24%(同:約11%)に増えた。

 ただし,「1.5M超」は5%(同:約4%)の微増である(99年,2000年とも数%は無回答)。安価なインターネット接続サービスが登場したことを受け,1.5Mbps(ビット/秒)の専用線を使う企業が増えた,というのが今年の結論だ。

 Web/ECへの取り組みは,今年追加した質問である。Webサイトを公開しているかどうかについては,「公開している」が89%,「公開していない」が11%だった。9割の企業が公開用のWebサイトを運営していることが分かる。

 ただし,Webサイトのアクセス数はまだまだ少ない。1日のページビューの平均は,「100以下」が約34%,「1000以下」が約28%と,これだけで全体の6割以上を占めてしまう。100万ページビュー/日を超えるようなサイトを取材させていただくことも多いが,現実はこんなものかもしれない。「1万以下」が約9%,「10万以下」が約6%,「100万以下」が約6%,「1000万以下」が1%というように,集客力のあるWebサイトも出てきてはいるようだ。

 実際に売上のあるECサービスを提供しているかという問いに対しては,「提供中」が約20%,「予定がある」が約4%,「検討中」が約22%だった。ECを前向きに捉えている企業が全体の半数程度を占めていることになる。

 先頭グループに,検討中の企業がいつ頃加わるのか楽しみだ。ただし,サービス提供中の企業にECサービスの月商を聞いたところ,「100万円以下」が約30%,「1000万円以下」が35%と,まだ大きなビジネスには至っていないことが分かる。月商数億円のECサービスが増えてくるには,どれくら待てばいいのだろう。

 こうした結果を見てやや暗い気分になっていたら,セキュリティに関する回答で追い討ちをかけられた。まず,「不正アクセスを受けたことがある」と回答した企業が約25%(99年:約20%)に増加した。コンピュータ・ウイルスに感染したことがある企業も増えた。「感染したことがある」が75%,「検出はしたが感染はない」が18%と,93%がウイルスに遭遇している(99年:約90%)。

 来年のこの時期には,「インターネットの危険が減り,ECサービスの売上が増える」--そんな調査報告ができるといいのだが。

(稲葉 則夫=日経インターネット テクノロジー編集長)