世はまさにインターネット・データセンター設立ブームである。儲(もう)かっている業者はほとんどいないようだが,インターネットのさらなる広がりを考えれば,いつかは儲かるだろうというので参入は後を絶たない。
儲かるかどうかについては多くの人が議論しているのでそちらに譲るが,ここではデータセンターの別の重大な問題を指摘したい。それはデータセンター同士のパケット交換の問題である。具体的にはあるデータセンターが競合するデータセンターから来るパケットを拒否するという問題である。
「そんなばかなことがあるはずがない」と思う方も多いだろうが現実に起きている。
例えば,世界的にも有名なある大手のデータセンターA社は,競合する別のデータセンターB社から来るパケットの受け取りを拒否し,来たパケットを海外の別のところ(どうやら南米らしい)に送りつけているのだ。
言ってみれば「インターネット上の嫌がらせ」である。そのデータセンターは基本的に,「データセンターからのパケットを受け取らない」ことを企業ポリシーにしているそうだ。やっている当事者にすれば「小さな嫌がらせ」かもしれないが,データセンターという存在を考えると事は重大になる。
この結果何が起きているか。個人ユーザーにはレスポンスが遅くなるという問題が起きる。あるデータセンターでホスティングされているサイトから,物理的には近くにある別のデータセンターのサイトにアクセスする場合を考えてみよう。本来ならコンマ数秒程度しかかからないはずのアクセスが,データセンターで拒否にあい地球を1周してから来るため,レスポンスに数秒かかっているのだ。
これはインターネット全体の負荷にも影響する。大きなデータセンターからは当然大量のパケットが送られてくる。それをいちいち拒否していたのでは無駄なパケットがインターネットを流れることになり,インターネット全体のレスポンスに大きな影響を与えかねない。これが世界中で起きていること,そしてこの先データセンターの巨大化を考えれば,ますます問題は深刻になる。
最悪の場合,本来ネットの安定性と速度を高めるはずのデータセンターの存在そのものが,ネット全体のレスポンスを落とすボトルネックになる可能性すらある。そうなれば笑い話では済まされない。
とはいえ,現実にはそれを指導・調整する機関はないし,もちろんルールや法律もない。企業の「ポリシー」と言われればそれまでである。今回,データセンター間のパケット拒否が発覚したのも,いつもレスポンスが遅いのでパケットを追いかけたところ初めて分かった次第だ。
「今日はやたらレスポンスが遅いなぁ」と思うとき,その原因にデータセンターがあるとすれば由々しき問題である。場合によってはデータセンターの監視機関の設立が必要となるかもしれない。
(渡辺 洋之=日経パソコン副編集長)