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新ドメイン名の登場は悪いこと?

2000/11/24

 今年から来年にかけて,インターネットの世界ではドメイン名として利用できるアドレスが飛躍的に増加する。

 まずは日本語ドメイン名が使えるようになる。現時点でも,com,net,orgなどのTLD(トップ・レベル・ドメイン:ドメイン名の右端に書かれる文字列のこと)で日本語ドメイン名の登録が始まっている。来年には“日本語.jp”も加わる予定だ。

 もう一つは新TLDの登場。現在,biz,info,name,pro,aero,coop,museumの七つが候補に挙がっている。これらのTLDは別々の管理組織によって割り当てルールが決められる予定である。管理組織は独自の割り当て条件を設定し,その条件に合致した組織や個人にのみドメイン名を割り当てることになりそうだ。取得条件が実質的に存在しないcom,net,orgドメインとは少し違った意味合いを持つドメイン名になるかもしれない。

 日本語ドメイン名や新しいTLDを使った新ドメイン名は,来年中に利用できるようになるだろう。このようにTLDがどんどん増えれば,短くて覚えやすいドメイン名を取得しやすくなる。素直に歓迎したいところだが,かえってユーザーの負担が増えてしまうという声もある。「ドメイン名の先取り問題の火種が増えるだけのこと」という指摘である。

 確かにネット上のオークションをのぞくと,値札のついた“日本語.com”がずらりと並んでいる。自社の商標や社名を守るために,自らも先取り競争に加わりたくなる。もっとも,先取りされたとしてもその相手が転売を目的として取得・運用する「サイバー・スクワッティング」(不法占拠)の場合は対策を立てやすい。例えば,紛争処理機関や裁判所に不正を訴えるという道がある。

 厄介なのは,相手にもそのドメイン名を取得する“正当な権利”があるケース。同じ名称の会社や商品は世の中にいくらでもある。一つのドメイン名について正当な権利を主張できる個人や組織は,世界を見回せば,いや国内だけでもいくつもある。このような場合,ドメイン名を取り返すのは難しい。となると,新しいドメイン名空間を作ることは,単に防衛目的の先取りドメイン名の数を増やすこととなり,ドメイン名取得者の負担増を招くことになりかねない。

 ドメイン名の先取り問題はインターネットが商用利用できるようになった頃からの宿題である。実はこの問題について,インターネットの創始者の一人であり,IANA代表としてドメイン名割り当ての中心的役割を果たしていた故Jon Postel氏に尋ねたことがある。Postel氏にインタビューしたのは,2年前の初夏。ちょうど新しいTLDをどう作っていくかについて,世界中のインターネット関係者が熱い議論を交わしていたときだった。

 当時私は,ドメイン名の先取り問題が解決できない限り,新しいTLDを作っても意味がないのではと考えていた。これに対してPostel氏の回答は,「ドメイン名(URL)を入力してWWWページにアクセスするのは過渡的な現象だろう。次第に検索サイトやディレクトリ・サービスなどを使うようになるので,問題は沈静化するのではないか」というものだった。

 つい最近まで,私はこのPostel氏の見解に疑問を抱いていた。ドメイン名を取得しようという動きが衰えるどころか,過熱してきたように感じていたからだ。状況はどんどん悪くなっているように思えた。だが,今は違う。Postel氏の予測が正しいのではないかと思い始めている。

 主な理由は二つある。

 一つは,会社名や商標から目的のホームページのURLを推測することに価値を見いだせなくなったこと。単にアクセスできないだけなら我慢できるが,URLの入力を誤ったり,ne.jpと入力するところをco.jpと打ち込んでしまうと意図しないアダルト・ページが表示されることもある。ここに新ドメイン名がどんどん追加されるのだから,状況がより悪化することは間違いない。URLを推測するより,検索サイトで探す方が簡単で確実だ。

 もう一つは,小学4年生の長女や年長組の長男と一緒にインターネットを楽しむ機会が増えたこと。アダルト・ページを表示したくないのはもちろんだが,検索サイトやリンク集を利用すればキーボードに慣れていない子供でもストレスなく操作できる。検索サイトを使えば,予想もしていなかった楽しいページに出会えることもある。

 これからしばらく,企業の多くは会社名や商標とドメイン名との関係に頭を痛めることになるだろう。ただ,ごく当たり前のことではあるが,いくら覚えやすいドメイン名を取得したとしても,そこで公開するWWWページの内容がつまらなければアクセスしてきたユーザーにとってのありがたみはない。

 WWWページの価値は,URLの覚えやすさではなく,“ブックマーク”や“お気に入り”に登録してもらえるかどうかにあるはずなのだから。

(林 哲史=日経NETWORK副編集長)

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