「最近,システム開発に従事している人のスキルの低さに驚くことが多い。もちろん情報処理技術者試験の2種の資格は持っている。しかし簡単な仕様のプログラムを作れないし,それでスケジュールが遅れても,自分が悪いのではないと平気な顔だ。それも一人や二人ではない」。数カ月前,日経コンピュータ編集部に届いた読者からの意見に,こんなコメントがあった。

 それ以降,ユーザー企業やシステム・インテグレータの方と雑談しているときに,どう思うかを聞くようにしたところ,「確かにその通りだ」と話してくれる人が想像以上に多いことが分かった。プロの情報技術者,エンジニアとしての責任感が欠如しているとしか思えない人が,増えているというのだ。上司あるいは先輩として文句を言おうものなら,「言われたことをやっただけ」「仕事ができないのは指示する側が悪い」「そんなに言われるなら辞める。仕事はほかにもあるから」といった答えが返ってくるという。

 ことは人(個人)に留まらない。また聞きで恐縮だが,あるインテグレータの知人は,取引先企業でこんなケースがあったと話してくれた。

 「予定していたシステムの納期直前に,外注先が“間に合わないので稼働を1カ月先送りして欲しい”とその企業に言ってきた。よくよく事情を聞いてみると,他社の仕事が長引き,その企業の仕事は未着手に近い状況だったという。その企業の担当者は,“あきれるのを通り越して絶句したよ”と言っていた」。ちなみに外注先はネット関連のベンチャーだったという。

 ほかにも発注元企業がインテグレータの仕事にクレームをつけようとしたら,「うちのやった仕事に何の問題があるというのだ。言いがかりをつけるのはやめてくれ」と話し合いに応じようとしなかったケースや,プロジェクトがにっちもさっちもいかなくなり,担当者が辞めてしまったうえに,後任が来ないケースもあると聞く。

 もちろんシステム開発を巡る発注元と受注先のトラブルは今に始まったことではない。エンジニアのなかにも,いい加減な仕事をする人はいた。だが最近は,そうしたトラブルが以前にもまして増えているようだ。

 「開発トラブルが,多くなっている感じがする。プロジェクト・マネジメント上の問題だといえばそれまでだが,発注者と受注者のそれぞれに素人が増え,相手に依存することが多くなっているのではないか」(あるインテグレータの部長クラス)。最近,明らかになった大和総研とエイチ・アイエス協立証券のトラブルは,その一例だろう。