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記者の眼

ネットビジネスの鉄則!?

国米敏弘 2000/10/27 ITpro

 とある夕刻,ある総合商社に勤める友人Sくんと久方ぶりに一杯飲みながら旧交を温めていた。かくいう私Tは,『日経ネットビジネス』という雑誌を編集する仕事をしている-----。

S:ネットビジネスの市場って日本でもすごい勢いで伸びてんだろ。うらやましいな。総合商社は今,“中抜き”って話で大変な騒ぎなんだよ。

T:そりゃそうだろうな。品物を右から左に動かすことでマージンをどんどん稼げた時代はもう終わりじゃないの。付加価値の付かない中間流通はどんどん縮小していく一方だね。

S:全く偉そうに・・・やな感じだな。確か数年前に会ったとき,ネットビジネスも普通のビジネスも根本は変わらない,“ビジネスの常識”を働かせることが重要だとか偉そうなことを言っていたな。そのとき日用品を例に引いてなかったけ?

 近所のスーパーやコンビニで買えるような品物をわざわざネットで通信代までかけて買うような“お人好し”はいないってな。そのときは,なるほどそんなもんかと感心したんだけどな。確かオマエの雑誌にもそんなこと書いていただろ。でも西友がネットスーパーを始めて,利用者には好評だっていうじゃないか。他にも同じような日用品の宅配サービスを始めているところがいくつもある。価格だって特別に安いってわけじゃないのに人気だっていうぜ。それもオマエの雑誌に載ってたよな。ウチでもその手の案件が検討されているぐらいだぞ。

T:それは・・・。そのころはそれがネットビジネスの鉄則だったんだよ。

S:鉄則だと,ほら何かごまかしてんじゃないか。

T:・・・だから当時のインターネットは,今から考えるととてつもなく敷居が高かったんだよ。電話代だってバカにならないしね。それに,そのころの日本のインターネット・ユーザーはせいぜい数百万人しかいなかったんだよ。しかも,その多くは大学関係者や企業の技術者。そのうえ9割が男性ユーザーだった。家庭からインターネットを使っている人なんて,そんなにいなかったんだ。それがさっきの鉄則の前提条件だったんだよ。

S:よく言うよ。じゃーオマエの鉄則が間違ってたことを認めるんだな。

T:前提がくずれちゃったんだから,仕方がないじゃないか。今や,日本のインターネット・ユーザーは3000万に届こうってんだぜ。世帯普及率だって20%とかいう数字になっているんだ。

 インターネット・サービス・プロバイダーに払う料金はこの1年で劇的に安くなったし,無料のところだってある。通信費だって,せいぜい市内の電話料金だけで済むようになった。定額のサービスだって出てきたから,1日中つなげていたって,月額1万円でお釣りがくる。電子メールを使っている主婦だってちっとも珍しくない。これだけ条件が変わってきたから,日用品や生鮮食料品だってネットで売れるようになったんだよ。

S:つまり間違ってたってことだな。

T:だから昔言っていた“カタログ通販はネット化しても成功しない”とか,“家や車などの高額商品はネットでは売れない”などのネットビジネスの鉄則も,過去のものなんだ。今じゃ女性ユーザーが少なくとも全体の1/3ぐらいはいる。女性が主なターゲットのカタログ通販のインターネット版も成功するようになった。家や車だって,今はネットがきっかけになって購入につながるケースが少なくない。

 実はこうした高額商品こそ,顧客はじっくり時間をかけてリサーチに励むんだ。インターネットはそれこそ情報の宝庫だから,事前のリサーチにはもってこいってわけさ。前提条件が変われば鉄則も変わる。そりゃドッグイヤーって言われる世界なんだからな。だから雑誌には以前言ったことと仮に違っていても,最新の情報と最新の鉄則を載せていくようにしているんだよ。

S:おう,そうかい。うまく言い逃れる気だな。それじゃ確か以前はネットビジネスは参入コストが低いから,いち早くやってみることが肝要とも言っていたな。失敗しても傷が浅い,修正はいくらでもできるとも聞いた覚えがあるぞ。でもウチでやろうとしているネットビジネスの案件では,プロモーションだのなんだの,えらくコストがかかるようなことを言っているぞ! ものによっては数十億円の単位だ。失敗したら取り返しのつかない額だぞ。

 だいたい,ちょっと前までは,“ネットのことはネットで”とか言って,バナー広告や電子メール広告なんかの効果をウンヌンしてなかったか。それが何だ。テレビを付けてみろよ。ドットコム企業やURLを載せたコマーシャルがあふれてるじゃないか。

T:・・・それもネットビジネスの鉄則だったんだよ。

S:“だった”とは何だ。また違うってのか?

T:落ち着けよ。ケンカ売ったって仕方ないだろう。今だってネットビジネスの参入コストは決して大きくないよ。例えば消費者向けの電子商店を開くだけなら,現実の商店街の目抜き通りに店を構えるのより,はるかに安くつく。ただしネットビジネスで成功しようと思ったら,それなりの知恵と工夫がいるね。

S:なに言ってんだよ。お金の話だぜ。“知恵と工夫”って,すかしてんじゃないよ。

T:いいかい。日本だけでも商品を取引しているようなサイトがインターネット上に4万ぐらいはあると言われているんだぜ。しかも毎日数百とか千とか結構な勢いで増えているんだ。もちろんやめて行くところもあるから,毎日参入してきた分だけ増えるわけじゃないけど,加速度的に増えているのは確かなんだ。

S:“競争”だって言いたいんだろうけど,4万ぽっちじゃねえか。本物の店舗が日本にどのくらいあるって思ってんだ。

T:話は最後まで聞けよ。じゃあ,4万もの店舗が軒を連ねている商店街があったらどうだよ。Sならどの店に行って買う?

S:そんなにたくさんの店を見て回れるわけはないだろ。面倒だから,手近なところで買い物を済ませちゃうね。

T:そう,まずはその手近なお店になるのに知恵と工夫がいるのさ。なにせインターネットは,ベターっとつながった超巨大な商店街みたいなもんで,どの店に行くとしても手間もコストもほとんど変わらない。だから,手っ取り早いのはなんと言っても消費者に覚えてもらうこと。そこでテレビ・コマーシャルの出番って話になるんだよ。これも3000万のネット・ユーザーがいるってことが前提だから,テレビだって使えるようになったんだ。日本中で数百万しかユーザーがいないときに,テレビで大々的に宣伝しても意味がないだろう。

 しかもインターネットのユーザーって今もどんどん増えている。こんなペースで増えてるってことは,ユーザーの多くはまだネットを始めたばっかりの初心者ってことだぜ。インターネットの有名店って言っても,普通の人はなかなか知らないよ。ネットの広告だって特定のセグメントを狙った費用対効果は決して悪くないけど,マスに無差別に告知する力はテレビが一番だからね。

S:それが新しい鉄則ってわけか。それじゃ,とてつもないお金がかかるってことじゃないか。もうお金がないところはネットビジネスでは成功できないって言うつもりか。

T:だから知恵と工夫って言っているだろう。お金はあった方が手は打ちやすいけど,今度はその投資を取り戻す必要だってある。そう簡単にはいかないよ。逆に頭を使って色んな意味で特徴を出したり,話題にしてもらえたりすれば,注目度はグンと高まる。

 ネットでは簡単にメッセージをやり取りできるから,“口コミ”の威力は結構すごいんだ。一度買ってもらって,いい印象を持たれればリピート客になってくれる確率も高い。だってネットではどの店に行くのも同じ手間とコストだから,印象の良い店ほどリピーターが多くなるって理屈だよ。これは確かずいぶん前から言っていた鉄則だと思うけど・・・。

S:そりゃ顧客満足度を上げて既存のお客さんを大事にしろって話だな。新規顧客の獲得コストよりも,既存顧客の維持コストの方が費用対効果が高いってことだろう。そんなのはビジネスの基本中の基本じゃないか。よくその程度のことで雑誌を編集しているな。

T:だから前から言ってるじゃないか,ネットビジネスでも“ビジネスの常識”が大切だって・・・。

(国米 敏弘=日経ネットビジネス編集長)

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